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JUAS「企業IT動向調査2020」速報値(第3弾) データ活用、DX推進にはほど遠い実態

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2020」速報値は、2月17日付で公表された第3弾「8割の企業がデータ活用への取組みを実施」が最新。表題の通りデータ活用の環境整備や課題への取り組みを調査している。

売上高規模別の統計もほしかった

デジタルトランスフォーメーション(DX)/データ駆動型経営の基礎となるのは個人や組織のデータ活用能力(リテラシー)だ。JUASは「組織におけるデータ活用の環境がどうなっているか」を調べている。

結果は円グラフのようだった。

「データ活用ができている」と回答しているのは「組織的に」「一部で」を合わせ約6割、「取り組んでいない」(未着手)と「準備中」が4割だった。

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データ活用への取組み状況 有効回答959社

これを業種別に見たのが下のグラフ

「組織的に活用できる」状況にあるのは「金融」がトップで39.5%だった。以下、「照射・流通」31.8%、「建設・土木」21.7%、「機械器具製造」19.9%、僅差で「素材製造」19.8%が続いている。

「一部の組織で活用できる」まで加えると、トップは「金融」の86.0%だが、2位「機械器具製造業」65.1%、3位「照射・流通」60.6%と逆転する。「建設・土木」が57.9%で4位なのは、背景に建築設計におけるBIM(Building Information Modeling)の活用がある。

反面、「組織的に活用できる」で「社会インフラ」が最下位、「サービス」が「一部で……」を合わせて最下位というのが目につく。ただ「社会インフラ」は「準備中」が27.5%あるので、次回(企業IT動向調査2021)で他業種をかなり追い上げることが予想される。

「未着手」が25.0%(4社に1社)の「サービス」は、事業規模が比較的小さいうえ、人手に依存するフェース・ツー・フェースのウエイトが高いことが、データ活用の遅れにつながっている。この領域のデータ活用は、手続きで業務が進むプロセス型業種とは別のかたちで進展するのかもしれない。

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業種別のデータ活用状況 有効回答956社

まぁいちゃもんをつけるのが仕事のようなもの——という側面もあるので遠慮なく言うのだが、第1弾「IT予算」は売上高規模と業種別、第2弾「デジタル化の状況」は売上高規模での集計だったので、第3弾でも売上高規模別の集計がほしかった。あるいは一貫して売上高規模別と業種別の比較ができるようにして欲しかった、とは思う。

これで「データを活用している」とはいえない

データを活用することでどのような効果を期待するかを調べたのが下図。第2弾「デジタル化の状況」では、①商品・サービスのデジタル化、②業務プロセスのデジタル化について調べている。商品・サービスのデジタル化は「価値の高度化」、業務プロセスのデジタル化は「コスト削減」と考えていい。

ここではさらに「新サービスの創出・売上げの向上」「期待する効果はない」が加わった。前者は「価値の高度化」を突き抜けて「新しい価値の創出」につなげる、後者は「着手しない」という選択肢だ。

ただ、さすがにデータ活用期待値ゼロを選択する企業は、「商社・流通」2.2%、「社会インフラ」1.5%、「機械器具製造」1.1%、「サービス」0.7%とほとんどなかった。

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データ活用による効果の期待 有効回答766社

価値の高度化・創出への期待が大きい順に並べると、「建設・土木」が78.2%でトップだった。以下、「サービス」73.8%、「機械器具製造」73.1%、「素材製造」69.2%と続く。データ活用が最も進んでいる「金融」が価値騒動期待値で最下位、コスト削減期待値がトップなのは、20世紀のATMに足を縛られFinTechに踏み込めない実情を反映しているとも言える。

活用しているデータを調べると(下グラフ)、「基幹系」が69.7%でトップだった。以下、「管理業務系」59.6%、「業務支援系・情報系」54.6%、「Web・フロントシステム系」29.1%の順。業務データに偏重しており、システムそのものが20世紀型(レガシー)システムが圧倒的多数を占めていることをうかがわせる。「データを活用している」というより、日常的に管理業務にデータを使っているだけのことではないか。

興味深いのは「予定なし」の回答。36.3%の企業が「Web・フロントシステム系」データを、6割近く(単純平均57.5%)が非構造化データ・外部データについて、それぞれ「活用する予定がない」と回答している。DX推進にはほど遠い実態が浮き彫りになっている。

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活用しているデータ

総合的にデータ正規化が最大の課題

データ活用の課題を尋ねたのが下のグラフ。1番、2番、3番の回答を集計している。

1番の課題は「データ統合環境の整備」21.3%だった。以下、「体制/組織の整備」14.4%、「技術習得」12.3%、「経営層または事業部門の理解・参画」11.5%の順。

総合的には「体制/組織の整備」が44.8%でトップだった。次いで「データ統合環境の整備」42.5%、「人材の育成」31.8%、「データマネジメントの体制整備」31.1%と続いている。体制が整っていない、人材がいないは「やらない」の言い訳に過ぎない

「データ統合環境の整備」がいうところの「データ統合」の意味が不明だが、「体制/組織の整備」と併せて、部門間、本・支社間、事務系・現場系のデータ正規化を指しているとすれば、それが最大の課題というのはよく分かる。コードの統一/共有化はエンタープライズ・データハブ(EDH)で解消できるかもしれないが、問題はデータモデルだ。

データモデルを標準化するには、「経営層や事業部門の理解・参画」が欠かせない。本気でDXを推進するなら、まずはデータモデルの標準化、データの正規化から、ということになる。

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データ活用の課題 有効回答757社