IT記者会Report

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NTT R&Dフォーラム2015に行ってきた〜技術篇〜

新コンセプト『NetroSphere」(ネトロスフィア)構想』登場!

 毎年恒例のNTT R&Dフォーラム、今年は80件の展示が行われた。その全体像をR&Dへの基本姿勢とともに聞けるのがR&D陣営の総帥、代表取締役副社長、研究企画部門長、篠原弘道氏の基調講演「NTT R&Dの目指す方向」だ。文字通り爆速で進化してゆくこの領域、この先いったいどうやって進めて行く気なのだろう、と日頃から漠然と抱いて来た問いに対して、とても新鮮で、そしてクリアな方向性が示された。


ポイントは2つ。

 一つはR&Dへのアプローチ。今や研究開発が対象とする領域は産業社会のありとあらゆる分野に広がり、その中で、日本の抱える沢山の社会的な難しい課題に立ちむかわねばならない。さらに加えて、トラフィック爆発、セキュリティ脅威、そして地方創生、東京オリンピック開催と容易でない課題が積み重なる。
 こうした中、古典的な自前技術だけに頼る対応では全く無理である。現在NTTはグループあげて「ICT を活用したパートナとの課題解決」を進めている。ビジネスの様々なプレーヤが「技」を持ち寄るオープンイノベーションの考え方も積極的に取り入れている。この中には競合のある同質のパートナだけでなく、異質のパートナも含め、特に異質のパートナを増やす中から、新たな価値創造を狙っている。
 もうひとつは、ネットワークへの考え方である。まさに「そろそろ新しいネットワークについて考えるとき」になった。「現在のようにキャリアに依存したネットワークから脱皮して、自由な、ダイナミックな事業環境の変化に柔軟に対応してゆけるネットワークを考えて行くべきだ。」
 今回こうした考えに応える新コンセプトとして『NetroSphere(ネトロスフィア)構想』が発表された。(注:本件について当日プレスリリースがあった)
 NetroSphereとは、Netro(インターネットの過去を知り、未来へ生かす意)とAtmosphere(大気)を組み合わせた造語ということである。1970年代を牽引したコピー、コンピュータパワーを電気ガス水道のように使用するという意味の「コンピュータ・ユーティリティ」を彷彿とさせる。インターネットのこれまでと未来を大気のごとく生かしてゆこう、というNTTの心意気が伝わって来るようなコピーだ。
 そのための基本的な考え方は、ネットワークを、徹底的に汎用化した粒度の細かい部品で組み立て、その構成要素の分離と組み立てを柔軟に行うことを可能にしよう、とするものだ。シンプルな汎用構成要素でネットワークを柔軟に構成してゆく、これこそ肥大化し、たこつぼ型に高度化し、その構築と運用の困難さの壁にたじろいでいる現代への明確な解決策を示しているように見える。NTTではそのコンセプトを実現するいくつかの開発計画を発表し、広く研究パートナを求めている。
 目の前に積み重なった課題を前に、いよいよ次のR&Dの時代が始まった。筆者の視点では、全体にソフトウェアの比重がますます高まるなー、という印象だ。もちろん正しい方向である。

5つにグルーピング

 研究開発の展示は全体で5つにグルーピングされていた。
 1)2020に向けたチャレンジ
 これは楽しい。東京オリンピック向けICT技術総動員である。「遠隔高臨場観戦」「スタジアム観戦」「おもてなし」と並ぶ。「おもてなし」には、快適な移動、快適な体験のためのシステムが含まれる。もちろん4K、8Kは家庭まで、だ。
 東京オリンピックをレガシーに、あとに残る、あとに続く技術開発を、という姿勢がうかがえる。
 2)バリューパートナと拓く未来 
 いわゆるオープンイノベーションの成果例である。この領域では昨年のフォーラムからInnovative R&D by NTTという活動の共通のロゴを制定し、様々な業種の企業と協業を進めてきた。展示では、ビッグデータ、センシング、音声領域の成果が示されていた。 
 東レとの共同研究による着るだけで生体情報を測定できる下着は実用化まできていた。
 3)グローバルクラウドの未来
 「世界が一番必要とするもの」というNTTのCMに応えようとする研究・開発、という紹介だった。
 要するにグローバル企業へのワンストップサービスを実現するための研究開発。ソフトウェア開発技術もこの領域に位置づけられていた。
 4)ネットワークサービスの未来
 ネットワーク系研究テーマとして最大の30項目を展示していた。この領域がNTT R&Dの中枢といった感じである。筆者には少々難しすぎるが、ネットワークを5層に分けて捉え、それぞれで将来を見据えた研究を進めていた。スマートオペレーション、サービス共創ネットワーク、といった項目が並ぶ。
 5)基礎技術、物性の極限追求からスポーツ科学まで
 尖った基礎研究が並ぶ。世界初、フォノン伝搬の電気的制御に成功、とか、100ビット超の光RAMチップ、など。
 
 個々の内容の理解は難しいが、自信に満ち、元気のある気持ちのよい展示イベントだった。取材してふと思った。R&Dだけでこれだから、NTTの事業の全貌はどうなっているのだろう、と。はたしてその全貌を把握しフォローしているジャーナリストはいるのだろうか、メディアはあるのだろうか。電電公社民営化30年、今NTTグループはメディアが伝えきれないままに、グローバル・メジャープレーヤへ向けて驀進中である。

注:『NetroSphere(ネトロスフィア)構想』のプレスリリースはこちらhttp://www.ntt.co.jp/news2015/1502/150219a.html

(注:本件、主催者の許諾を得て取材しています)