IT記者会Report

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東日本大震災5回目の秋(5)放射能汚染地帯を行く

携行した空間放射線量計測器
 「東日本大震災5回目の秋〜6国と放射能汚染地帯を行く〜」ツアー見たまま・聞いたままレポートの第3回目。今回は空間放射線量計測器を携行し、行く先々で放射線量を測ってみた。地表面から1m高の空間を測ることになっているが、「幼い子はしゃがみこんで遊ぶこともあるよね」と草むらに置いてみたり、「さぞかしすごい数字が出るんじゃないか」と除染土(汚染土)が入った袋の上に置いてみたり。しかし実を言うと、根本的かつ初源的な問題があった。計測値はどこまで信用できるか、だ。


どこまで信用できるか

 「どこまで信用できるか」というタイトルには、主に2つの意味がある。1つは筆者らが今回のツアーに持参した放射線量計測器がどこまで正しいか。もう1つは、放射能汚染地帯の市町村役場の前や公共施設に設置されているモニタリングポストである。
 なぜそのようなことを言うかといえば、筆者をはじめツアー参加者全員が、放射線量計測器というものに不慣れだからである。さらにいえば、放射能を意識しながら日常の生活を送っているわけではないからである。それはフクシマから遠くに住む多くの人たちも同じであるに違いない。シーベルトとベクレルの違いをネットで調べて、どうにかこうにか理解したつもりでいる「圧倒的多数」の素人にほかならない。
 ついでなので開き直ると、放射線としてアルファ線ベータ線ガンマ線、エックス線といった名前は知っている。しかしバリウムカリウムヨウ素放射性物質だよ、と聞けば「え〜」と驚くほかない。キューリ夫人の伝記でラジウムを、中学校の社会科か理科でウランゲルマニウムを知った。「ラドン温泉」には行ったことがある。しかしセシウムストロンチウム、キセノンといった名前はフクイチ事故で初めて知った。
 そのようなわけなので、放射線測定器が何に反応しているのか、専門的・科学的なことはさっぱり分からない。政権与党派つまり原発推進派ないし科学万能主義的な立場を取る人々は、面と向かってではないにせよ、得てして「素人は黙っていろ」に近いことを口にするものだ。なるほど当方には専門的・科学的な評価はできないが、しかし「目安」として数値を測ることはできる。
 ところが、その計測器の操作に慣れていない。ツアー出発前に自宅周辺や東京都内を測ってみたけれど、どこで測っても0.05μSv/h前後なので、どうも心もとない。メーカーは当然ながら、「当社の製品は正確に動作しています」と主張するだろう。そう、正確に動いているのだろう。だが、計測値は正確なのか?
シンチレータ方式でガンマ線を測定

 持参した空間放射線量計測器は日本精密測器社製の「RADCOUNTER DC-100」。
 ?シンチレータ方式でガンマ線を測定。
 ?30秒で測定結果表示開始、リアルタイムで連続測定。
 ?999時間(約41日間)まで放射線量を積算可能。
 ?0.01μSv/h単位で測定。
 ーーというのがメーカーの謳い文句だ。
 ネットの評価によると「シンチレーション式(PINフォトダイオ−ド併用)のサーベイメーターですので、低線量地域でも正確な測定数値が期待できます」とあって、値段相応の性能であるらしい。
 測定値が正しい(ないし正しく測定している)らしいことを確認できたのは、南相馬市役所の駐車場に設置されていたモニタリングポストと同じ数値(モニタリングポストの0.148μSv/hに対してDC-100は0.15μSv/h)を示したときだった。
 ところが、そこから1.5mほど離れた草地の上を測ると0.97μSv/hという数値が示されたので、また不安になった。空間放射線量の測定において、1.5mという距離がどれほど結果に影響するのか。たった1.5m離れただけで6.5倍の違いというのは、やはりDC-100の動作が不安定だからだろうか。
 このときもう1つ脳裏を過ぎったのは、
 「数値が低めに出る装置がある」
 ということと、
 「公のモニタリングポストは、数値が実際より3割から5割ほど低く表示されるように細工されている」
 という噂だった。フォルクスワーゲンの不適正な排ガス制御ソフトとよく似た話で、作為の有無にかかわらず公設モニタリングポストが実際より低めの数値を表示するのであれば、DC-100がそれに合致しているのはある意味で困ったものなのである。