IT記者会Report

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東日本大震災・6度目の秋(5)〜放射能線量は大きく減少〜

国道6号線 除染作業は“賽の河原”状態

 国道6号線は、福島県富岡町から浪江町にかけて、右左折も駐停車もできず、時速40kmで通過するだけという規制が続いている。言うまでもなく、福島第一原子力発電所による放射能汚染が原因だ。放射線量が高いのは周知だが、3.11以後、それがどう変化しているのか、マスメディアは続報していないように見える。筆者が携行した測定器が示した最高は室内で毎時2.74マイクロシーベルト(μSv/h)。昨年の約半分とはいえ危険レベルにあることは間違いない。

■ 自然放射能は0.16〜0.27μSv ■

 市販の簡易な測定器の多くは、測定値がμSv/hで示される。日常生活で浴びる自然放射能の線量は、年間2.4mmSvとされる。ただしこれは世界全体の平均値で、日本の平均値は1.4mmSvとする説もある。そこで2.4を365日×24時間(8,760)で割った0.000274mmSv=0.274μSv、ないし1.4mmSvを8,760で割った0.160μSvが1時間当たりの自然放射線量ということになる。
 日本政府は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を受け、自然界や医療での被ばくを除いて年間被ばく量の上限を1mmSv(8,760で割ると0.114μSv/h )に定めている。健康診断などでレントゲン写真を撮影したときの被ばく量は1回当たり100μSv/h前後と高線量だが、撮影的な被曝なので健康に影響はないとされている。
 筆者が携行した放射線量測定器(RADCOUNTER DC-100)で東京駅周辺を測ると0.05〜0.10μSv/hだ。東京・神保町のIT記者会事務所周辺も大きく変わらない。自然放射能 0.114μSv/hより低いのが誤差の範疇なのか、あるいは地域性、もしくはRADCOUNTER DC-100の特性、ないし装置の個体差なのか判然としない。計測値がどこまで正確かという問いはひとまず措くとして、同じ装置での計測値なので、とりあえず1年前との比較はできるだろう。

楢葉町 帰還は全世帯の13.7%/全人口の9.5% ■

 以上を前提として、昨年と同じようにいわき市豊間のコンビニ店前を起点に、楢葉町役場までは昼食や休憩を兼ねてほぼ30分おきに降車した地点で放射線量を計測した。楢葉町役場から南相馬市役所まで通行規制区間を含む45kmは、周辺の景色を観察しながら車中で計測した。通過した行政区は富岡町大熊町双葉町浪江町だった。
 いわき市豊間コンビニ前から南相馬市役所駐車場のモニタリングポストまで、測定器の電源はずっとONN状態。地点ごとの最高値を記すと表のようになった。
 いわき市豊間のコンビニ(セブンイレブン豊間店)は仮設店舗が約100m手前に移動し、嵩上げ工事で地形が大きく変貌した。またそれに伴って、以前は店舗の前に道路をはさんで広がっていた傾斜地に立ち入ることができなかった。今回はコンビニ店脇の駐車場で測ったところ、線量は0.07μSv/hと、昨年の3分の1以下だった。
 今回は同市薄磯の塩屋浜駐車場には立ち寄らなかった。前回より行程が1時間以上遅れており、その先のスケジュールを優先したため。代わりにその北方約10km、昼食を取った和食店にほど近い道の駅「よつくら港」(同市四倉)の駐車場で計測したところ、計測値は豊間とほぼ同じ0.08μSv/hで、特段の異常は示されなかった。
 昨年10月26日に訪れたとき、楢葉町役場前に並んでいたフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ:放射能汚染土壌を詰めた黒い袋)は、今回はきれいになくなっていた。そのせいか役場前は0.15μSv/h(前回0.21μSv/h)、役場前の草むらは0.35μSv/h(同0.84μSv/h)と大幅に下がった。
 楢葉町は昨年9月に避難指示が全面解除されているが、今年10月4日現在の帰還者は385世帯/696人で、帰還率は全世帯の13.7%、人口の9.5%(2016年11月1日時点の世帯数2,819戸 / 登録人口7,313人)に過ぎない。復興庁によると、今年3月の調査で「過半数(50.7%)の人が帰還に前向きな意向を示している」としているが、放射能線量が下がっても医療や介護施設、水道水への不安、買い物や仕事など生活基盤が整わない等、地域再建の道のりは遠い。

■ 帰還困難区域=高線量区間を行く ■

 楢葉町役場前をスタートして15分、富岡町消防署付近から「帰還困難区域」に入る。道路脇に立てられた告知板には、カッコ書きで「高線量区間を含む」とある。「帰還困難区域」と「高線量区間」は、国道6号線に限っていえば事実上同義といっていい。
 放射線量が非常に高いため、通行が規制されている。通過するのみで、時速40kmで走行することが求められる。だけでなく、国道6号線に面した家屋や商業施設の出入り口、クロスする道路などはバリケードや折りたたみ可能なゲートなどで塞がれている。また、通行証を持たない部外者が内側に入らないよう、厳しい規制と監視が行われている。
 車両を監視する警察官や除染作業員は防塵マスクこそ着用しているけれど、高線量に素肌を晒している。ローテーションを組んで入れ替えているのだろうにしても、健康被害があっても隠蔽されているのではないかと疑ってしまう。
 原発事故から1年後、帰還困難区域の平均値は14.5μSv/hだった(原子力安全基盤機構「警戒区域内の国道6号等の通過に伴う車両への放射性物質による影響及び運転手の被ばく評価に関する調査報告書」2012年5月)。2014年9月15日に3年半ぶりの全面開通となったが、途中に17.3μSv/hの高線量地帯があって、政府は「通過する車両は窓を閉めて」と訴えた。
 一説に建物の中で線量は外より4割ほど低減するという。そうであれば、昨年の視察で計測した富岡町走行中の車内における2.10μSv/hは、外気に換算して3.50μSv/h、大熊町走行中の車内で計測した4.70μSv/hは外気換算で7.83μSv/hだったことになる。今回も走行中に計測したが、前回と同じ地点ではない。富岡町(富岡消防署付近)は1.55μSv/h、大熊町(大熊中学校付近)は2.74μSv/h、南相馬市(原町付近)は0.37μSv/hだった。2.74μSv/hは今回の国道6号線視察での最高値となる。


 

■ 通過する車に公設MPで数値表示 ■

 今回の“発見”は、道路上5mほどのところに放射線量を表示する電光掲示板のモニタリングポスト(MP)が設置されていたこと。ドライバーが一目で線量を知ることができる。それによると、富岡町が2.658μSv/h、大熊町が3.106μSv/h、双葉町が1.209μSv/hだった。年間に直すと10.58mm〜27.24mmSvで、国が定めた年間許容量1mmSvを大幅に上回っている。
 原子力安全基盤機構が2012年3月に調査した帰還困難区域の平均線量14.5μSv/hと比べると4分の1〜10分の1以下に下がっているのは、半減期が2年のセシウム134が大幅に減少したこと、毎日往来する1万台以上の大型トラックが放射性物質を路上から巻き飛ばし拡散させたことに依っている。福島第一原発は現在も放射性物質を放出していることからすれば、除染した側から放射性物質が降り積もる“賽の河原”状態と考えるのが常識的だ。
 南相馬市に入ると、放射線量は極端に低くなる。南相馬市役所駐車場に設置されたMPは0.110μSv/hを示していた。3.106と0.110——この差が地域分断につながるのではあるまいか。