IT記者会Report

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モノを作る、とは 吉田茂樹氏(情報科学芸術大学院大学学長)

※この記事は現時点では「書きかけ」です。あとで全文を再掲します。

 関東以西に梅雨明けが発表された7月7日の日曜日、岐阜市は最高気温34.4度と猛暑日の一歩手前。その最中、午後1時から長良川国際会議場で、「幸運な発見」と銘打ったソフトウェア・シンポジウム2013(SS2013)のプレイベントが行われた。模造紙を地面に見立て、厚紙や発泡スチロールのブロックで街と道路を作り、コンピュータ・プログラムでコントロールする模型の自動車を走らせる。それが何を意味しているのか――情報科学芸術大学院大学学長の吉田茂樹氏が「モノを作る、とは」の視点で基調講演を行った。

 筆者が会場に着いたのは当日の正午過ぎ。すでに20人ほど、顔見知りの参加者が集まっていた。勝手に取材席を用意したり周りの景色を撮影したりしているうちに、マイクの声が開会を告げた。

司会(杉田義明氏) 皆さん、ご歓談中のところですが、時間ですのでプレイベントを始めたいと思います。最初に、このイベントを企画され、実行委員長でもある伊藤昌夫さんに、ねらいとか、どんなことを目指しているかとかをですね、お話ししていただきます。

―□□1□□― 〔幸運な発見〕のねらい

伊藤 え〜、ソフトウェア・シンポジウム――SSの併設イベントというのは、去年の福井に続いて今回が2回目となります。主旨はSSを開催する地元の方々と交流すること。もう一つは、SSになるとどういうわけか暗い話題に、内に閉じこもることが少なくないようなので(笑)、その前に楽しい気分になって、その気分のままSSに入っていければいいな、ということです。
 ご講演いただく吉田先生は、情報科学大学院大学の学長先生ですが、われわれと同じソフトウェア技術者のご出身とうかがっています。きっと興味深いお話が聞かれるのではないかと思います。先生のお話を聞いて、皆さんで模型を動かして、何か、なんでもいいんで発見してほしいんですね。
 あとで“ふりかえり”のワークショップをするとき、皆さんに感想をうかがいます。でも、企画を担当した私としては、「分からない」とか、「ない」っていうネガティブな感想は聞きたくないんですね(笑)。どのようなことでもいいので、何か発見していただければ、と思います。
杉田 伊藤さん、イベントのタイトル〔幸運な発見〕の意味というかねらいというか、イベントの進め方とか、それを話していただかないと。
伊藤 あ、それを忘れてましたね(笑)。今回のタイトルは〔幸運な発見〕です。ほとんどアドリブで、2チームに分かれて街と道路を作っていただいて、そこに無線で動く模型の車、これもアドリブでパソコンのプログラムを設定して前後左右を制御して走らせる。そういう企画です。今日お集まりの方のなかには、SEAのイベントとしてたぶん初めてじゃないかと思いますが、お子さんが何人かいらっしゃいます。ずいぶん昔の方もいらっしゃるみたいですが・・・・・・(笑)。どうぞ皆さん、子どもに戻って、4時間という短い時間ですが、一緒に楽しんでいただければ、と思います。(拍手)

―□□2□□―ダントツに小さな大学

杉田 ということで、吉田先生の基調講演に入ります。そのあと2時間ぐらい〔幸運な発見〕の本番、最後に“ふりかえり”のワークショップというプログラムです。
 吉田先生はずっと以前からSEAとお付き合いがありまして、1980年代に日本にオープンなネットワークというものが入ってき始めたときに、JUS――日本UNIXユーザー会などで企業や団体の枠を超えてご活躍になった方です。まさか学長さんになっていて、ここでお会いするとは思っていなかったんですね。ではよろしくお願いします。(拍手)
吉田 私に与えられた時間は45分とうかがっているんですが、話し始めるとあっという間に時間が経っていて、自分では10分ぐらいのつもりが30分ということが珍しくありません(笑)。1時間になるかもしれませんが・・・・・・。改めまして、ご紹介いただいた吉田です。
 情報科学芸術大学院大学、略称「IAMAS」という名前は、皆さんあまり聞いたことがないかもしれません。ここから15?ぐらい離れた大垣市にあります。岐阜県立でして、学部を持たないで修士課程のみ、メディア表現研究科メディア表現専攻の1研究科1専攻しかない大学院大学です。1学年の定員が20人、全体で50人ぐらいですので、過日、全国の公立大学関係者の集まりに行ったときのことですが、どんなに小さくても数百人ですから、IAMASはダントツに小さな大学でした。
 ご紹介いただいたように、なぜかこの4月から学長をやっております。もともとは大学で建築学を学びまして、社会人になってとき「これからはコンピュータだ」というんで、入った会社でたまたまUNIXの日本語化に取り組みました。その関係でJUS――日本UNIXユーザー会に参加して、それからほどなく慶応大学の村井先生(村井純氏)のWIDEプロジェクトにも参加しました。
 というようなわけで、現在は「ネットワークの専門家でござい」という顔をしていますが、最初の5年間は民間企業で働いていました。そのあと大学で研究をやりまして、岐阜に大学ができるというので移りまして18年、気がついたらそれなりにいい歳になっていた、というわけです。そんなことを言うと、岸田さんをはじめ杉田さんなど諸先輩に「まだまだ若僧じゃないか」と叱られそうですが。
ともあれ気がついたら50歳を超えていて、偉そうに話していますけれど、いわゆる「近ごろの若い人」の勉強するスピードやプログラミング技術には、正直いってついていけません。ただ昔取ったキネヅカ、と言うんでしょうか、何でモノを作るのか、プログラミングを含めてこれからのシステムや世の中はどういう風になっていくんだろうか、ということは日ごろから考えていますんで、そのお話ならできると思います。

―□□3□□― いまどきのモノづくり

吉田 で、今日のお話には、ソフトウェアとか情報システムにかかわる言葉は出てきません。わたしどもの学校が対象にしているデザイナーであれアーティストであれエンジニアであれ、ソフトウェアもそうですが、広い意味での「ものを作る」という観点で話したいと思います。「ものを作る」というと、社会的、産業的には製造業や建設業がすぐ思いつくんですが、今日は割と趣味に近い範囲で「自分で作る」ということを考えてみます。
 「自分で作る」ということは、ずっと昔からごく普通にやられています。私も自分で自転車を作ったりテーブルを作ったり、趣味としてのモノ作りを楽しんでいます。これまでかかわってきたネットワークとかソフトウェアではどうだろうと考えると、オープンソース・ソフトウェア、私的には「フリーソフトウェア」という言い方のほうが馴染みがあるんですが、そういう考え方が「自分で作る」に欠かせないと思います。
 グーグルで「自分で作る」を検索すると、趣味の世界を含めていろんなモノが作られていることが分かります。“ちょい足し”のカップラーメンを自慢してる人がいるかと思えば、手製の革製品を売っている人がいたり、醤油や太陽光発電を作っている人もいる。何か自分で作ろうとすると、20年ぐらい前までは本だとか、よく知っている人に聞いて、というのが一般的だったんですが、現在はネットで山ほど情報を手に入れることができる。それだけじゃなくて、コミュニティができていく。お母さんたちが自分で作った「キャラ弁」のコミュニティは、「キャラ弁」を共通語に情報と価値観を共有するサイトになっている。
 もう一つお見せするのは、ロゴ社のマインドストームです。マインドストームにはロボットとか工作機械、自動車など様ざまなかたちがあるんですが、これは機織りをするマシンです。組み立ててプログラムを組んで毛糸をセットすると、マフラーなんかを編むことができます。プロ用のマシンのような精緻な柄を織れるわけではありませんが、こういうマシン、というかキットを、誰でも手に入れることができる。
 それと同じように、パソコンも自分で作ることができます。スマホはどうか分かりませんが、ネットを探せばAndroidはフリーフォストなので手に入るでしょうから、タブレットぐらいなら自分で作れるかもしれません。そんなことは20年前までは、とても無理でした。
話題の3次元プリンターは価格がまだ百万円単位と高価なので、誰でもとはいきません。けれど、そう遠くない将来には数万円まで価格が下がるでしょう。そうすると「自分で作る」の世界がものすごく広がる。これもいまどきの「自分で作る」の様相です。
          
          
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