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ICT関連ハードメーカー68社 2016年は利益が25%落込む

株式公開553社の2016年業績調査 第2回



 ICT関連ハードウェア製造業で2016年1~12月の間に12か月業績を発表した株式公開企業68社の就業者総数は前年同期比▲0.6%の283万6,892人、平均年齢は0.2歳増の42.6歳、平均年収は128.9千円増の7,945千円、売上高は 1.4%減の73兆2,160億37百万円だった。営業利益率は4.31%(前年同期比▲1.37P)、純利益率は2.25%(同▲0.77P)と業績は低迷傾向にある。これに伴い553社に占める構成比は、連結就業者数が2015年の76.0%から75.0%に、売上高は67.9%から66.9%、純利益は47.6%から38.1%に、それぞれ低減した。(カッコ内は前年同期比、△はプラス、▲はマイナス、Pはポイント)

■ ICT産業でのウエイトは継続的に低下 ■

 確認のためにICT関連ハードウェアメーカーの株式公開企業68社の就業者数と2016年業績を再掲しておく(カッコ内は前年同期比、Pはポイント)。

〔1〕就業者数
 連結:283万6,892人(▲0.6%) 
  正 規:265万0,891人(▲0.1%)
  非正規:18万6,001人(▲6.7%)
 単独:44万7,400人(△1.6%)
  正 規:42万7,075人(△1.4%)
  非正規:2万0,325人(△4.1%)
 平均年齢:42.6歳(△0.2歳)
 平均年収:7,945千円(△128.9千円)
〔業績〕
 売上高:73兆2,183億36百万円(▲ 1.4%)
 営業利益:3兆1,508億60百万円(▲25.3%)
 経常利益:3兆0,141億32百万円(▲25.2%)
 純利益:1兆6,495億92百万円(▲26.2%)
〔1人当たり〕
 売上高:2,580.9万円(▲0.8%)
 営業利益:111.1万円(▲24.7%)
 経常利益:106.2万円(▲24.8%)
 純利益:58.1万円(▲25.8%)
〔業績指標〕
 営業利益率:4.30%(▲1.38P)
 経常利益率:4.12%(▲1.31P)
 純利益率:2.25%(▲0.76P)

 ICT関連株式公開企業554社に占める構成比は2015年から以下のように変化した。
〔1〕就業者数
 連結:76.0%→75.0((▲1.0P) 
  正 規:79.8%→79.0%(▲0.8P)
  非正規:46.6%→43.1%(▲3.5P)
 単独:56.5%→55.9%(▲0.6P)
  正 規:61.0%→60.5%(▲0.5P)
  非正規:21.9%→21.6%(▲0.3P) 
〔業績〕
 売上高:67.9%→66.9%(▲1.0P)
 営業利益:51.3%→41.6%(▲9.7P)
 経常利益:48.0%→40.5%(▲7.5P)
 純利益:47.6→38.1%(▲9.5P)

 ICT関連産業におけるハードウェアメーカーのウエイトが継続的に低減している。その背景には、電子機器・部品のダウンサイジング(小型・軽量化)があり、オフショア生産や海外製品との競合が低廉化に拍車をかけていると指摘されている。大手企業を中心とするIT投資額の上昇(Y2K:西暦2000年問題クリア後に構築したシステムの更新・再構築やIoT対応)を受けて売上高は前年同期比▲0.3%となったものの、本業の利益を示す営業利益は▲25.6%、純利益は▲26.4%と大きく落ち込んでいる。
 本調査では、ICT関連ハードウェアメーカーを「情報処理装置、周辺機器」「アミューズメント機器」「電子部品」の3業態に整理している。それぞれの数値を紹介する。

■ 情報処理装置・周辺機器の利益半減 ■

 情報処理装置・周辺機器27社には、代表的な情報処理装置、家電系電子機器、事務機器および、パソコン用周辺機器のメーカーが含まれる。ここでは27社全体の業績を紹介するが、参考として旧メインフレーマー3社(日立製作所富士通NEC)に限定した業績をまとめる。

〔1〕就業者数
 連結:191万0,681人(▲ 1.8%) 
  正 規:181万6,821人(▲1.3%)
  非正規:9万3,860人(▲ 11.0%)
 単独:31万4,609人(△1.4%)
  正 規:30万4,444人(△1.5%)
  非正規:1万0,165人(▲0.3%)
 平均年齢:43.0歳(△0.2歳)
 平均年収:8,044千円(△125.6千円)
〔業績〕
 売上高:56兆2,366億94百万円(▲2.6%)
 営業利益:1兆5,179億19百万円(▲41.4%)
 経常利益:1兆3,094億51百万円(▲40.7%)
 純利益:4,826億57百万円(▲51.7%)
〔1人当たり〕
 売上高:2,943.3万円(▲0.9%)
 営業利益:79.4万円(▲40.4%)
 経常利益:68.5万円(▲39.6%)
 純利益:25.3万円(▲50.8%)
〔業績指標〕
 営業利益率:2.70%(▲1.79P)
 経常利益率:2.33%(▲1.50P)
 純利益率:0.86%(▲0.87P)

 3業態のうち、最終製品(情報処理装置、周辺機器)27社の落ち込みが最も大きい。売上高は▲2.6%の微減だが、営業利益と経常利益が4割減、純利益がほぼ半減となった。その要因を探ると、東芝とシャープの業績不振が浮上する。
 この2社を除いた25社で2015年と2016年の業績を比較すると、売上高は▲0.4%、営業利益は▲2.8%、経常利益は▲1.1%、純利益は▲2.9%に補正される。見出し風にいえば「激減」から「中長期的な減少傾向」ということになりそうだ。

 ちなみにプリンターメーカー5社の2016年業績は、次のようだった。
 売上高:7兆9391.98万円(▲5.1%)
 営業利益:4910.57万円(▲14.2%)
 経常利益:4918.42万円(▲13.6%)
 純利益:2970.23万円(▲39.2%)

 またパソコン用周辺機器メーカー7社の業績は次のようだった。
 売上高:4422.57万円(△0.3%)
 営業利益:281.67万円(▲1.4%)
 経常利益:287.88万円(▲1.8%)
 純利益:187.86万円(△2.0%)

■ 旧メインフレーマーは増収減益 ■

 旧メインフレーマー3社(日立製作所富士通NEC)は、就業者数・売上高ともにハードウェアメーカー全体の2割超、情報処理装置・周辺機器製造業27社の3割超を占める。だけでなく、ICT産業界においては、NTTグループと並んでICT大型案件の主要な受注窓口でもあるため、その景況が与える影響は小さくない。
 その3社の2016年業績は次のようだった。

〔1〕就業者数
 連結:62万2,783人(▲0.6%) 
  正 規:59万0,465人(▲0.1%)
  非正規:6万2,318人(▲5.4%)
 単独:8万3,700人(△3.4%)
  正 規:8万3,700人(ー)
  非正規:0人(△4.2%)
 平均年齢:42.3歳(△0.0歳)
 平均年収:8,424千円(△243.83千円)
〔業績〕
 売上高:17兆5,947億80百万円(△0.8%)
 営業利益:7,784億45百万円(▲14.2%)
 経常利益:7,313億87百万円(▲13.6%)
 純利益:3,276億67百万円(▲25.3%)
〔1人当たり〕
 売上高:2,695.3万円(△1.4%)
 営業利益:119.3万円(▲13.7%)
 経常利益:112.0万円(▲13.1%)
 純利益:50.2万円(▲24.8%)
〔業績指標〕
 営業利益率:4.42%(▲0.77ポイント)
 経常利益率:4.16%(▲0.69ポイント)
 純利益率:1.86%(▲0.65ポイント)

 旧メインフレーマー3社の2016年業績は売上高が前年同期比△0.8%と微増ながら、利益は2けたの減少となった。NECは▲3.9%、富士通は▲0.3%の減収だったが、日立製作所の△2.8%の増収が支えた。純利益はNECが△20.0%の増益だったものの、日立、富士通の減益を支えきれなかった。

 

 
 

アミューズメント機器も減収減益に ■

 アミューズメント機器8社には、ホール型遊具(パチンコ/パチスロやコインゲーム機)、家庭用ゲーム機のメーカーが含まれる。しかしホール型アミューズメント機器にはエンターテインメント用のソフトや制御ソフトが組み込まれており、また任天堂のように、ゲーム機・遊具とエンターテインメント系ソフトウェア・ネットサービスの売上高構成比がほぼ拮抗しているケースもある。
 2016年業績は次のようだった。

〔1〕就業者数
 連結:3万6,356人(△0.2%) 
  正 規:2万2,595人(△0.5%)
  非正規:1万3,761人(▲0.3%)
 単独:6,193人(△3.3%)
  正 規:5,812人(△3.6%)
  非正規:381人(▲1.3%)
 平均年齢:38.5歳(△0.2歳)
 平均年収:7,608千円(△152.3千円)
〔業績〕
 売上高:1兆3,788億73百万円(▲ 4.4%)
 営業利益:1,329億26百万円(▲0.5%)
 経常利益:1,330億99百万円(▲26.5%)
 純利益:809億37百万円(▲ 4.3%)
〔1人当たり〕
 売上高:3,792.7万円(▲4.6%)
 営業利益:365.6万円(▲0.7%)
 経常利益:366.1万円(▲26.6%)
 純利益:222.6万円(▲4.5%)
〔業績指標〕
 営業利益率:9.64%(△0.38P)
 経常利益率:9.65%(▲2.89P)
 純利益率:5.87%(△0.01P)

 アミューズメント機器8社の2016年業績も情報処理装置・周辺機器と同様、減収減益だった。ただ営業利益率が9.64%、純利益率が5.87%と高水準にあルため、落ち込みはさほど深刻に受け取られているようには見えない(就業者数、平均年収が増えている)。とは言え、8社のうち6社が減収となっており、中高齢層の遊戯ホール離れと少子化への対応策が中長期的なテーマになるのではあるまいか。 

■ IoTの恩恵は業績にまだ反映せず ■

 電子部品メーカー33社は産業を陰で支える重要な役割を担っている。それだけに景況は堅実だが、2016年はどうだったか。

〔1〕就業者数
 連結:88万9,855人(△2.2%) 
  正 規:81万1,475人(△2.6%)
  非正規:7万8,380人(▲2.6%)
 単独:12万6,598人(△1.6%)
  正 規:11万6,819人(△1.4%)
  非正規:9,779人(△4.2%)
 平均年齢:42.0歳(△0.2歳)
 平均年収:7,716千円(△137.51千円)
〔業績〕
 売上高:15兆6,027億69百万円(△ 3.9%)
 営業利益:1兆5,000億15百万円(△ 0.3%)
 経常利益:1兆5,715億82百万円(▲4.2%)
 純利益:1兆0,859億98百万円(▲5.8%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,753.4万円(△1.7%)
 営業利益:168.6万円(▲1.6%)
 経常利益:176.6万円(▲6.3%)
 純利益:122.0万円(▲7.8%)
〔業績指標〕
 営業利益率:9.61%(▲0.32ポイント)
 経常利益率:10.07%(▲0.85ポイント)
 純利益率:6.96%(▲0.72ポイント)

 就業者数が増加、業績は△ 3.9%の増収、▲1.6%の減益となった。IoTブームながら、その恩恵は業績に現れていない。