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ICT関連受託サービス202社 2016年の売上高は△7.2%に

株式公開553社の2016年業績調査 第4回
 ICT関連受託サービス業で2016年1~12月の間に12か月業績を発表した株式公開企業は202社で、その就業者総数は前年同期比△6.0%の50万7,374人、平均年齢は△0.3歳の38.2歳、平均年収は△72.7千円の6,154千円だった。、売上高は △7.2%の8兆3,283億円、営業利益は△12.2%の6,161億円だった。営業利益率は7.40%(前年同期比△0.35P)、純利益率は4.60%(同△0.70P)で、中長期の低落傾向に歯止めがかかった。企業数が最大の「ソフトウェア開発」業は売上高が△8.9%と上向いたが、営業利益率は依然6%台にとどまっている。(カッコ内は前年同期比、△はプラス、▲はマイナス、Pはポイント)

■ 営業利益率が△0.35P上昇 ■

 株式を公開しているICT関連受託サービス企業202社の構成は、「BPO/業務代行」63社(うち「FMS(Facility Management Service)/システム運用管理」16社)、「ソフトウェア開発」103社、「複合/情報処理サービス」28社、「登録型IT要員派遣」8社となっている。
 確認のために、受託サービス202社の就業者数と2016年業績を再掲しておく。
〔1〕就業者数
 連結:50万7,374人(△6.0%) 
  正 規:37万3,951人(△5.4%)
  非正規:13万3,436人(△8.0%)
 単独:20万8,771人(△5.5%)
  正 規:16万2,232人(△4.2%)
  非正規:4万6,539人(△10.4%)
 平均年齢:38.2歳(△0.3歳)
 平均年収:6,154千円(△72.7千円)
〔業績〕
 売上高:8兆3,283億95百万円(△7.2%)
 営業利益:6,161億31百万円(△12.2%)
 経常利益:6,227億07百万円(△12.1%)
 純利益:3,834億71百万円(△25.5%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,641.5万円(△1.0%)
 営業利益:121.4万円(△6.0%)
 経常利益:122.7万円(△6.0%)
 純利益:75.6万円(△19.2%)
〔業績指標〕
 営業利益率:7.40%(△0.35P)
 経常利益率:7.48%(△0.35P)
 純利益率:4.60%(△0.70P)
 連結就業者数が前年同期比△6.0%と増加したが、業績がそれ以上に伸びたので、就業者1人当たり業績、業績指標が好転した。リーマンショック(2008年秋)を境に、ICT関連受託サービス業が、営業利益率が年0.3P前後のペースで減少していたが、2014年を底に反転している。201
6年も営業利益率が△0.35Pとなっており、この流れはマンパワー依存から脱皮を図るチャンスとなる。
BPO 非正規率ほぼ5割に ■

 「BPO/業務代行」63社にはITを利活用した市場調査、コールセンター、教育研修など様ざまな業務および、セキュリティサポート、サーバーホスティングソフトウェアテストといったICT関連業務のアウトソーシング受託を含んでいる。ネット系の「ASP」と重複する部分があって、どちらに分類するか微妙なケースもある。本稿では受託した業務に対するマンパワー依存度、アウトプットまでのプロセスを評価した。

 「BPO/業務代行」63社の2016年業績は次のようだった。
〔1〕就業者数
 連結:17万0,121人(△6.1%) 
  正 規:8万6,542人(△5.5%)
  非正規:8万3,579人(△8.0%)
 単独:7万9,551人(△5.5%)
  正 規:4万2,018人(△4.3%)
  非正規:3万7,533人(△10.3%)
 平均年齢:37.7歳(△0.3歳)
 平均年収:5,199千円(△14.3千円)
〔業績〕
 売上高:2兆0,921億68百万円(△4.8%)
 営業利益:1,511億55百万円(▲3.9%)
 経常利益:1,491億79百万円(▲5.7%)
 純利益:886億94百万円(▲7.1%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,229.8万円(△1.6%)
 営業利益:88.9万円(▲6.9%)
 経常利益:87.7万円(▲8.6%)
 純利益:52.1万円(▲9.9%)
〔業績指標〕
 営業利益率:7.22%(▲0.66P)
 経常利益率:7.13%(▲0.80P)
 純利益率:4.24%(▲0.54P)

 「BPO/業務代行」業は連結ベースでも単独ベースでも、正規雇用者数と非正規雇用者数がほぼ半々というのが特徴となっている。景況の影響を受けやすい(非正規雇用者が景況調整弁になっている)というより、就業者1人当たりの収益が低い=平均年収が低く設定されていることによっている。
 この内数である「FMS/システム運用管理」は16社で、一つの集団を形成している。FMSは自社施設で顧客の情報システムを預かって運用管理する形態、システム運用管理は顧客の施設にオペレータやアドミニストレータを派遣して運用管理を請負う形態を指す。

【FMS/システム運用管理】16社
〔1〕就業者数
 連結:1万8,827人(△3.3%) 
  正 規:1万7,013人(△3.3%)
  非正規:1,814人(△4.2%)
 単独:1万4,408人(△4.1%)
  正 規:1万3,586人(△3.9%)
  非正規:822人(△11.7%)
 平均年齢:37.1歳(△0.3歳)
 平均年収:5,654千円(△72.2千円)
〔業績〕
 売上高:2,312億70百万円(△8.1%)
 営業利益:181億78百万円(△21.3%)
 経常利益:178億82百万円(△18.0%)
 純利益:120億66百万円(△149.5%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,228.4万円(△4.0%)
 営業利益:87.9万円(△16.7%)
 経常利益:86.8万円(△13.5%)
 純利益:64.1万円(△140.1%)
〔業績指標〕
 営業利益率:7.86%(△0.85P)
 経常利益率:7.73%(△0.65P)
 純利益率:5.22%(△2.96P)

 他の「BPO/業務代行」業と比べ、就業者数における正規・非正規の比率が全く異なっている点が注目される。「FMS/システム運用管理」業は客先常駐(要員派遣)型が主体であるため、守秘義務や情報セキュリティの観点から、正規就業者でチームを編成するケースが圧倒的に多いことを反映している。
 業績は増収増益で、営業利益率は他の「BPO/業務代行」業より0.64ポイント高い。ただ絶対額はほぼ横並びで、正規雇用者が主体という特性との関係は認められない。
■ 受託ソフト開発 生産性上がらず ■

 受託ソフトウェア開発業の集計企業数は103社で、単独業種では最多となっている。かねてから就業者を安易に増やさず、生産性を上げることで待遇(年収)改善に努めるべきと指摘されている。大手を中心に産業界のIT投資が増加したことを受けて、就業者数の伸びを売上高の増加が上回った。ただ就業者の平均年収の伸び(△71.9千円)や営業利益率(6.63%)を見る限り、生産性が向上したとは言い難い。

 受託ソフトウェア業103社の2016ねん業績は次のようだった。
〔1〕就業者数
 連結:10万1259人(△3.3%) 
  正 規:9万4,716人(△3.3%)
  非正規:6,543人(△4.1%)
 単独:6万4,628(△4.1%)
  正 規:6万2,694人(△3.9%)
  非正規:1,934人(△11.2%)
 平均年齢:37.7歳(△0.3歳)
 平均年収:5,807千円(△72.2千円)
〔業績〕
 売上高:1兆4,336億51百万円(△8.9%)
 営業利益:950億06百万円(△24.6%)
 経常利益:967億72百万円(△27.2%)
 純利益:524億67百万円(△63.8%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,415.8万円(△5.4%)
 営業利益:93.8万円(△20.2%)
 経常利益:95.6万円(△22.6%)
 純利益:51.8万円(△57.4%)
〔業績指標〕
 営業利益率:6.63%(△0.82P)
 経常利益率:6.75%(△0.95P)
 純利益率:3.66%(△1.21P)
 
■ 複合/情報処理 年24万円の昇給 ■

 「複合/情報処理」は28社で、旧メインフレム・メーカー3社と並んで受託型ICTサービス業界で取引上位に位置する企業が少なくない。その動向は受託型ICTサービス業の景況を端的に示すことになる。
 2016年の業績は次のようだった。
〔1〕就業者数
 連結:18万9,329人(△4.2%) 
  正 規:16万8,226人(△4.2%)
  非正規:2万1,103人(△4.5%)
 単独:5万8,975人(△2.2%)
  正 規:5万2,134人(△1.9%)
  非正規:6,841人(△4.5%)
 平均年齢:39.6歳(△0.5歳)
 平均年収:7,946千円(△247.5千円)
〔業績〕
 売上高:4兆2,401億43百万円(△5.8%)
 営業利益:3,403億52百万円(△17.1%)
 経常利益:3,459億96百万円(△17.0%)
 純利益:2,223億13百万円(△37.5%)
〔1人当たり〕
 売上高:2,239.6万円(△1.5%)
 営業利益:179.8万円(△12.3%)
 経常利益:182.7万円(△12.3%)
 純利益:117.4万円(△31.9%)
〔業績指標〕
 営業利益率:8.03%(△0.77P)
 経常利益率:8.16%(△0.79P)
 純利益率:5.24%(△1.21P)
■ 登録型人材派遣 正規雇用者が急増 ■

 現在は【参考】の扱いだが、労働者派遣事業法の改正で「FMS/システム運用管理」「受託ソフトウェア開発」との境界が曖昧になりつつある。正規雇用の就業者数が大幅に増加したのは、派遣法改正に対応したものと理解していい。

〔1〕就業者数
 連結:4万9,496人(△36.5%) 
  正 規:2万7,060人(△24.9%)
  非正規:2万2,436人(▲0.3%)
 単独:7,043人(△16.0%)
  正 規:6,690人(△15.4%)
  非正規:353人(△27.4%)
 平均年齢:35.9歳(△0.1歳)
 平均年収:5,006千円(△50.9千円)
〔業績〕
 売上高:6,333億97百万円(△24.0%)
 営業利益:359億40百万円(△18.8%)
 経常利益:359億48百万円(△18.9%)
 純利益:221億21百万円(△22.6%)
〔1人当たり〕
 売上高:1,279.7万円(▲4.6%)
 営業利益:72.6万円(▲13.0%)
 経常利益:72.6万円(▲12.9%)
 純利益:44.7万円(▲10.2%)
〔業績指標〕
 営業利益率:5.67%(▲0.25P)
 経常利益率:5.68%(▲0.24P)
 純利益率:3.49%(▲0.04P)

 就業者の平均年収が受託型4業種で最も低かった。平均年齢の差にもよるが、営業利益率の改善が就業者の待遇に繋がることに期待したい。