派生開発カンファレンスに行ってきた

システム・エンジニアリングを志向

 5月22日(金)、横浜市中区の横浜市開港記念会館で、派生開発推進協議会(代表、略称:AFFORDD)主催の「派生開発カンファレンス2015」が開かれた。参加者は約230人と昨年をやや下回ったものの、本会場(講堂)では7件の論文発表と基調講演、隣りの第1会議室ではチュートリアルと3件のポスター展示が行われた。記事を掲載するのは、「PRESS」の特権で5千円の参加費を免除してもらった恩義があるからでも、関係者からせっつかれたからでもない。来年のいまごろは「ああ、ちゃんと記事にしてたね」と納得してもらえるに違いないと開き直りつつ……。


普及期から発展期へ

 今回のカンファレンスの最大のトピックは、清水吉男氏(カンファレンス主催者である派生開発推進協議会の代表)がクロージングの挨拶で「派生開発アプローチをシステム・エンジニアリングに位置づける」と決意表明したことではあるまいか。 
 2010年の初回から数えて6回目ともなると、このカンファレンスはIT業界の恒例行事となった感がある。だけでなく、何度目かの参加で勝手知ったる講堂1階と2階を自由に行き来し、気がつけば受付前のロビーが意見交換の場になっているなど、参加者の動きがこなれてきたように見える。
 考えてみれば、母体は清水吉男氏が自身の経験をもとに提唱した方法論「XDDP(eXtreme Derivative Development Process)」の私的研究会だ。それが公的な機関の支援もなく、自主運営でここまで継続・発展してきたのは、開発と保守・改造を並行して進めていくアプローチの妥当性が、エンベデッド系システム領域を中心に幅広く支持されている証左に違いない。
 「超高速開発」を名乗るプログラム・ジェネレータ群は30年前の亡霊が蘇った感があって感心しないのだが、派生開発という手法は現実的で理に適っている。ゆえにちょっと遅くなっても概要だけは記事にしておく意味があるだろう(詳細は協議会の開催報告:http://affordd.jp/を参照されたい)。 

発表論文は7編

 発表された論文は次の7編だった。
 1 XDDPの組織的導入へのアプローチとノウハウ〜2012年カンファレンス報告から「その後」〜
       富士ゼロックス(株)斎藤芳明
 2 その制御の心は? 先行開発プロジェクトにおける“制御意図”を可視化する試み 
      (株)エクスモーション 庄司順和
 3 手戻りのない開発を目指して 〜USDMとの出会い〜
      (株)ホンダロック 有村文宏
 4 派生開発技術・ノウハウの修得に役立つ体験型教材の開発 〜PBLが派生開発技術の知識の腹落ちを助ける!〜
      三菱電機(株)/派生開発推進協議会関西部会 白川智也
      (株)島津ビジネスシステムズ 赤羽根州晴
 5 派生開発におけるスペックアウト手法の提案
      (株)島津製作所/派生開発推進協議会関西部会 山添秀樹
 6 オーディオビジュアルシステム開発におけるXDDP 導入に向けた取り組み
      三菱電機(株) 柴崎登紀子
 7 全天球カメラRICHO THETAの開発におけるUSDMの適用事例
      リコーITソリューションズ(株) 参納由実
 論文発表はいずれも実践の事例で、1件当たり40分。午前中に3件、午後は15分の休憩をはさんで2件ずつという時間配分だ。2010年の6件から8件(2011年)→6件(2012年)→8件(2013年)→6件(2014年)と推移していたのだが、今回はその中間に落ち着いた。いずれにせよ本会議で発表論文に採択されるのは、実践の成果が評価されたことになる。

 「ベストプレゼンテーション」賞(これまでの「最優秀論文」賞が今回から名称を変更)は富士ゼロックスの斎藤芳明氏だった。2012年のカンファレンスで発表した「XDDP導入に向けた組織的アプローチの紹介〜モデルベース(CMM)から問題解決型へ、そしてXDDP〜」の”その後”をまとめた。
 何ごともそうだが、最初は緊張感をもって取り組み、PDCAを回そうとするものだが、慣れてくるとおざなりになることがある。審査委員は他の発表者や聴講者に、初期の実践をフォローアップするのも重要という意味を伝えたかったのかもしれない。

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