2月4日、経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)加速シナリオの具体策となる2つの研究会を新たに立ち上げた。「デジタル時代の人材政策に関する研究会」と「デジタル産業の創出に向けた研究会」がそれ。
雇用形態やシニア人材の活用も
「デジタル時代の人材政策に関する研究会」はNTTデータ経営研究所エグゼクティブフェローの三谷慶一郎氏を座長に、ITサービス企業の代表など計8人で構成、オブザーバとして経産省のほか、内閣官房、厚生労働省、文部科学省および、情報処理技術者試験を運営する情報処理推進機構(IPA)が参加する。
- 人月単価と多重下請による従来型の受託システム・ソフトウェア開発、SIビジネス依存からの脱却
- 技術力を競争力の源泉とせず、投資(プロダクト・サービス開発、人材)リスクを取らない経営体質と低収益性
- ハイレベルな人材を活かすマネジメントの不在、年功序列型の雇用形態、流動性の低さ
- 魅力的な仕事と雇用環境を持つテックベンチャーや外資IT企業へのハイレベル人材が集中
- 企業におけるDX戦略の欠如、経営者のデジタルに関する知識の不足
——などを承前の共通認識として、
(1)雇用形態・雇用環境の充実(報酬、働き方など)
(2)構造的課題の解決
(3)組織内外におけるリスキリングとシニア人材の有効活用
(4)学習環境の整備と継続的なアップデート
(5)能力評価・見える化の方式
などが議題として想定されている。併せて受託型IT企業のビジネスモデル改革やIT企業における人材投資促進方策なども検討する考え。
デカップリングとリバンリング
もう一方の「デジタル産業の創出に向けた研究会」は昨年8月に設置した「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」の後継となるもので、昨年12月28日公表の『DXレポート2』を受け、DXが進展した企業によって構成される「デジタル産業」の姿を描き、その産業を創出する道筋および政策のあり方について議論するとしている。
ニュースリリースでは
「研究会は、グローバルな競争環境の変化に対応しつつ、企業間が相互につながり迅速に新たな価値を社会・顧客に提供しながら成長する「デジタル産業」の具体的な姿を明らかにするとともに、デジタルトランスフォーメーションを推進するユーザー企業・ベンダー企業双方が新しい価値の提供を提供する主体としてビジネスを変革するための方向性を提示します。さらに、地域・中小企業を含めた企業の変革を後押しする政策の在り方について検討を進めます」
としている。
ベースとなっているのは同省情報産業課が今年1月8日に公表したレポート『デジタル市場に関するディスカッションペーパー〜産業構造の転換による社会的問題の解決と経済成長に向けて〜』。同レポートは深化する少子高齢社会を視野に、既存の産業要素が「機能」と「情報」に分離(デカップリング)し、デジタル技術で再結合(リバンドリング)するところに「デジタル産業」が形成されると指摘している。
「DXの進展により、あらゆる企業が内製・アジャイル開発を中心として迅速に新たな価値を創出し、ユーザー企業やベンダー企業という区別はなくなる方向に産業が変革していく(デジタル産業の実現)」という仮説に立って、過渡期における「DXを支援する企業」(いわゆる受託型ITベンダー)の質的転換にも道筋をつけたい考えだ。
研究会は率直かつ自由な意見交換を確保するため非公開とし、議論の途中経過を公表する予定となっている。