経産省が「自治体DX行動プラン」 当たり前ができていない現実

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「DX Days 2019」 仕掛け人は経産省

 1月16~18の3日間、東京都内で「DX Days 2019」というイベントが開かれた。初日は千代田区永田町で「Govtech Conference2019」、2日目は霞が関経済産業省で「DX寺子屋」、最終日は港区青山で「自治体DX推進会議」という構成だった。運営事務局はGovtechがNTTデータ経営研究所、DX寺子屋経産省、DX推進会議が日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)で、一見するとそれぞれ個別のイベントのようだが、“仕掛け人”は経産省だ。

 いや、それは内密とか極秘裡にではなくて、経産省のホームページに「お知らせ」が載っていたし、関係者がfacebookで案内をアップしていた。ただ、その情報が限られた人にしか届かなかった、ないし、届いたとしても「DX=デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で制度や手続きを改革すること」と理解できなければ、興味も沸かなかっただろう。筆者が参加できたのは、初日と最終日の第2部に「メディア枠」が用意されていたためだ。

 最初に概要をまとめておくと(2日目はメディア枠がなかったので分からない)、参加者は市町村職員50人のほか、行政関連システムにかかわる事業者や非営利法人の関係者などだ。「Govtech Conference2019」ではライトトークとパネルディスカッション(サービスデザイン、開発手法、チーム・コミュニティ、新しいテクノロジーと利便性の4テーマ)について、事例や考え方が紹介された。

 また3日目の「自治体DX推進会議」は午前中が自治体関係者によるワーキンググループ、午後は一般参加OKのシンポジウムだ。JIPDECが昨年実施した「オープンデータ事業」の報告会なので、テーマは行政機関が保有する統計や施設などの情報を、地域の市民団体や大学、企業が活用できるようにする「オープンデータ」が中心だった。

 個々のテーマについての説明は割愛するとして、全体を通して共通していたのは「DXを推進するにはどのようなことに留意しなければならないか」「DXを推進する手法には何があるか」だ。「自治体」と銘打ってはいるが、それを「行政」と置き換えてもいいし、広義の「パブリックセクター」と考えてもいい。留意点や手法は民間企業の業務改革にも通じるので、首長向け、議員向け、教職員向け、経営者向け、管理職向け、エンジニア向け、市民向けetcのセミナーがあっていい。

すわ経産vs総務の正面衝突か

 実をいうと、筆者が「DX Days 2019」に注目したのは、イベントのどこかで「自治体DX宣言」が示される、という情報があったためだ。それは経産省主導による行政手続デジタル改革の号砲ーーとなると、気になるのは総務省との関係だ。経産省はIoT(Internet of Things)推進コンソーシアムで旧郵政省と連携しつつ、旧自治省の所管に手を突っ込んでいくのだろうか。

 1980年代、コンピュータ/通信ネットワーク融合の第一歩となったVAN(Value-Added Network :付加価値通信網)ないし電気通信事業法の制定をめぐる通産・郵政の激突ないし犬猿の仲を実地見聞している筆者は、ひそかに「すわ自治体をめぐって再燃か」と色めき立ったものだった。ところが「自治体DX推進会議」の冒頭、筆者の“期待”はあっけなく消えてしまった。

 「自治体DX推進会議」の冒頭、挨拶に立ったのは総務省で事業政策課長を務めていた吉田博史審議官(IT戦略担当)だったのだ。なるほど、総務省も了解済みということだ。であればこそ自治体職員が何かを懸念することなく「DX Days 2019」に参加できたのだし、宣言の代わりに示された「DX行動プラン」は、無用の刺激を避けるために緩い表現を心がけているわけだった。

 後日、総務省バチバチやるのか? と直撃すると、「ちゃんと説明はしてありますと」とあっさりかわされてしまった。仁義はきってある、という。「マイナンバーとかLG-WANとか、総務省が所管する案件に立ち入ることはありません。あくまでもDXの必要性、進め方の環境を整えていくのがねらいです」という。見込み違いは認めざるを得ない。

公印をQRコードにするアイデア

 「自治体DX行動プラン」8か条について、筆者に寄せられた感想は「当たり前すぎる」「頼むから海外に紹介しないで(恥ずかしいから)」「やらないよりまし」等々だった。第一条の「常識を疑おう」はDXに限らず何かと指摘されることだし、第二条「あなろぐ時代の制度に縛られない」もDXを志向する以上、当然のこと。しかし第三条「デジタルを妄想しよう」はなかなか難しいかもしれない。

 DXについては様々な定義(らしきもの)があるようだが、重要なポイントは「なくす」ことだ。まずは紙やハンコなど「モノ」(モノに伴う行為)をなくすことだ。次にプロセスをなくす。モノとプロセスがなくなると、それを管理する組織が要らなくなる。

 第四条「ユーザー目線で考えよう」は自治体に限ったことではなく、第五条「やれるところからやってみよう」はスモールスタートとトライアル&エラーの考え方。第六条「自慢しよう、そして褒めよう」、第七条「良いところはどんどんマネしよう」はボトムアップ型の普及策だが、第八条「みんなでシェアしよう」を踏まえれば、

 ①有用なアプリやアイデアを「アプリバンク」に登録

 ②そのアプリを開発したエンジニアにボーナスを支給

 ③類似のアプリの新規開発に制限をかける

 といった施策も必要ではないか。実際、韓国はこの制度でうまく行った。

 もう一つ、画像が小さいので気が付いた人が少なかったのは、文末の公印に見える朱肉印だ。実は中央に「METI DX]の文字があって、全体はQRコードになっている。

 「DX Days 2019」で中心的な役割を担った内閣官房政府CIO上席補佐官兼経産省CIO補佐官・平本健二氏は、「これは、もし公印がQRコードだったら、という遊びですけれど、スマホで読み取るだけでネットのサイトに飛んでいって、情報を確認したり手続ができるようになるかもしれない。ちょっとしたアイデアがデジタル改革につながるヒントになれば」という。

 そうなのだ。当人たちが「面白がる」ことも、重要なのである。