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「COG2018に向けて」に行ってきた 「官」と「民」をつなぐ「パブリック」の考え方(2)

6月17日(日)の「COG2018に向けて」では、2017年度の受賞チームのプレゼンテーションが行われた。京都市宇部市仙台市会津若松市の4チームで、うち仙台市Skypeでのリモート参加だった。市民の「困っている」を行政がすくいあげ、地域のオープンデータを利活用して市民や学生の協働チームが解決策を示す。具体的にはどのようなプロジェクトだったのか。

 

 プレゼンテーションが行われたCOG2017受賞チームは次の4件だった。

 ◆総合賞 京都市:京の歴史と街並みを伝え隊

 オープンデータと自転車をはじめとした観光資源の融合による持続可能な観光・交通を目指して(アイデア名:自転車でつながる人・街・自然・文化!~chariP naViと共創コミュニティデザイン~)

 ◆アイデア 山口県宇部市:多目的トイレ一発検索作成協議会

 地域計画の推進につながるアイデア(アイデア名:協働による多目的トイレ一発検索アプリ開発

 ◆連携体制賞 宮城県仙台市:DATECAREER

 学生の地元定着の推進(アイデア名:DATECAREERが学生と企業の“架け橋”となり、学生のキャリア形成における新たなプラットホームをつくる)

 Accenture Citizen First Youth賞 福島県会津若松市:STEM Leaders with Hanyu

 車輌走行データの活用(アイデア名:地域と「つながる」、除雪プロジェクト)

京都市:観光の幅広げる駐輪場アプリ

f:id:itkisyakai:20180619144159j:plain京都市は観光客に自転車を上手に使ってもらいたい、という希望を持っていた。それに対して市民グループの「京の歴史と街並みを伝え隊」は、市が保有している駐輪場の情報を可視化し、利用者(観光客)が最も近くにある駐輪場をスマホで検索できるアプリ(「chariP naVi」)を提案した。これを受けて、市は市営駐輪場の情報を公開するだけでなく、民間の駐輪場にも話をし、必要な情報を収集した。

 アイデアを形にしていく段階では、ITのサポートやプロジェクトの進め方などで「コード・フォー京都」が大きな役割を果たした。意見を交換するなかで、現実に動くアプリにすることが重要という認識が形成されていった。これによって、地図システムでルート案内と駐輪場の検索ができるアプリが完成した。

 「データ分析は地味な作業だったが、やってみると大切な作業だということが分かった」という。また、「自分たちは社会人なので、なかなか会う時間がない。そこでネットで協調型の開発ができるツールを使うことにした」という。

 自分たちの活動をオープンにして、関連するテーマに取り組んでいる市民グループと情報交換をしたのが視野を広げるきっかけとなった。自転車で走りやすいロードマップを作っているグループ、自動ブレーキを開発している人たちなどだ。「駐輪場アプリの可能性を感じました」という。

 街並みを伝え隊は京都市の「まちづくり・お宝バンク」に登録したほか、今後とも京都市役所の市民協働セクションなどとも連携していく考えだ。また京都市が実施している補助金制度などを使って、アプリの完成度を高めていく。

 現在は駐輪場を検索する機能だが、「駐輪場の空き状況を表示できるようにしていきたい」という。さらにアプリをオープンソース化することで、他市町村への横展開も想定している。

(注)京都市「まちづくり・お宝バンク」 自転⾞でつながる人・街・自然・文化! 〜 chariP naVi と共創コミュニティデザイン 〜 - みんなでつくる京都

code4kyoto.connpass.com

宇部市:多目的トイレを一発検索

 宇部市が取り組んだのは、街中のトイレを検索できるアプリだ。トイレの場所、和式か洋式か、オシメの交換ができるかetc。発案した大濱尚氏は小児麻痺の後遺症で車椅子のため、いつも外出したとき、トイレに困っていた。その話を宇部市が耳し、市の呼びかけで発足したのが産学協働の「多目的トイレ一発検索作成協議会」だった。

 当初はどこから、何から手をつけたらいいかわからない状態だったが、活動しているうちに、同じニーズを持っている身障者や高齢者が少なくないことが分かってきた。それがアプリ開発の原動力となった。

 市民グループは実際に多目的トイレに行って必要な情報を収集した。また国土交通省のデータなどを参照し、不具合の度合いや体調によって利用できないトイレがあることも分かってきた。そこでさらに詳細な情報を集める必要性に迫られた。

 何をしたかというと、自分たちで車椅子に乗って、実際に多目的トイレを使ってみたのだ。体験したうえで、ワークショップを重ね、必要な情報の項目を整理していった。「自分ごと」としてとらえることが、アプリ開発に役立った。

 こうしてアプリは市内に4つある大学、工業高校の学生たちが授業の一環で開発することになった。市内のIT企業も協力した。現在はアンドロイド版のみだが、利用者を広げる意味でiOS版も開発する計画だ。

 今後の課題としてあげたのは、第一がトイレの情報更新。デパートやホテルなどをどこまでカバーしていくかも視野に入れている。また、アプリを開発した学生が卒業してしまうと、メンテナンスや機能の追加が出来ないのも懸案という。安定的に継続していく体制作りがテーマとなっている。

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www.ube-ind.co.jp

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仙台市:学生と地元企業の架け橋づくり

  受賞したDATECAREER(ダテキャリア)は仙台市と市内学生、地元企業が連携した「地元就職を促す」プロジェクトだ。学生と地元企業の架け橋となって、学生のキャリア形成を支援するのがねらいだ。

 地方にとって、学生の地元定着や地元へのUターン、Iターンは重要なテーマだが、多くの学生は大都市・大手企業志向だ。「それを嘆いてばかりはいられない。地元企業の情報が不足しているのではないかという反省があった」(同市経済局)という。

 そこで就活サイトや経済局保有のデータなどを照合したり、学生へのアンケートなどで学生のニーズや何が足りないのかを把握した。地元企業に参加してもらうため、ITコンサルタントや通信系の営業経験者などの力を借り、地元商店街と学生の協働を実施してきた。

 さらにこの6月、若者向け商品の企画やマーケティングを専門にしている株式会社epi(代表・松橋穂波氏、青葉区)の協力で、「就活ラウンジ」を開設した。ここに地元企業のコンテンツを集積し、若手社員や経営者にきてもらって学生と意見を交換したり、セミナーを開く。

 DATECAREERの運営メンバーは学生で、epiが事務局を兼ねている。仙台市としては、仙台市で働きたい人向けの情報発信のため、東北ナビ、就活ラウンジなどとコラボする。仙台市が関わっている企業をつなぐなどして、学生のキャリアアップにつなげていく。

 今後の課題は学生メンバーの確保。継続的な事業にするにはスポンサーからの信頼をもとに適正な収益を得ることだが、それを優先するのでなく活動の充実を図ることに力を入れる。地方創生事業との連携なども視野に入れ、当面は仙台市が支援する考えだ。

(注)epi 会社案内 | epi

会津若松市:城下町の除雪をもっと上手に

会津若松市の悩みは冬場の除雪。城下町のためカギ型に折れたりせまい道路が少なくない。これに道路の凸凹が加わるので、「会津若松は除雪が下手だ」などと揶揄されることがあるという。

 実際、2014年12月だけで道路維持課に寄せられた除雪のクレーム・要望は合計934件、昨年は2200件にのぼったという。アクセンチュアのデータサイエンティスト、市情報政策課職員のサポートを得て行ったヒアリング調査で、業者による除雪結果を評価するシステムがないこと、地域の特性や道路の形状が把握できる手段がないことが原因だと考えられた。またその背景には、市民が除雪を行政任せにしていることがあった。

 そこでSTEM Leaders with Hanyuは、道路の凸凹を検知するWebアプリを開発し、併せて「いつ・どこで・どの除雪業者が・どのような作業を」したかを確認できるシステムを構築した。これによって、現状の除雪の能力が可視化でき、除雪業者のスキルアップや改善につながる効果が出た。

 しかしWebアプリにはマンホールや縁石の位置を把握する機能がないため、アプリとは別に地域ごとの位置情報を集めたマニュアルやデータベースが必要になる。また除雪車が入れない狭い道路、小回りがきかない道路あるいは交通量の多い時間帯には除雪車の作業ができないこと、反対に夜間は路面が凍結するといった阻害要因があることも分かってきた。

 つまり除雪を隅々まで行うには行政任せではダメで、市民の協力が必要というわけだ。想定しているのは除雪でエクササイズしようと呼びかけている市民グループ「ジョセササイズ」、除雪に困っている人にボランティアを派遣するWebアプリ「さつけね!」(会津大学の学生と市川電産が開発)などとの連携だという。

(注)市川電産 市川電産 | 技術は人の為に

COG2017応募資料 http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/padit/cog2017/idea/18_Idea_COG2017_Fukushima_aizuwakamatsushi.pdf

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