IT記者会Report

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発足した「情報法制研究所」は何を目指すか まずは個人情報保護法制の整理に照準

 5月14日(土)、東京・本郷の東京大学・伊藤国際学術研究センター地下ホールを会場に、「一般財団法人情報法制研究所」設立記念シンポジウムが開かれた。日本データ通信協会内に昨年1月に設置された情報法制研究会を母体にしたもので、対象を学術研究者や行政関係者ばかりでなく、民間事業者、一般市民にまで拡大する。当面は個人情報保護法マイナンバー制度を中心に、IT関連法制度のあり方や課題解決の方策について、現場の実情を見据えた政策提言を行っていくという。


東京大学・伊藤国際学術研究センターが会場となった


伊藤国際学術研究センターの地下ホールはほぼ満席だった

4つのメディアが「発足」伝える

情報法制研究所の骨子に関する記事には下記のようなものがある。
◯【LINE】LINE、一般財団法人 情報法制研究所の設立を支援(5.13)
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2016/1355
◯【WirelessWireNEWS】一般財団法人情報法制研究所設立、学際的な専門家の集積による政策提言目指す(5.16)
https://wirelesswire.jp/2016/05/53083/
◯【INTERNET WATCH】「一般財団法人情報法制研究所」設立、理事に鈴木正朝教授、高木浩光氏らが就任、LINEも支援(5.16)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20160516_757534.html
◯【日経コンピュータ】「もう役所任せにしない」、情報法制の民間研究団体を企業や学者らが設立へ(5.17)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/051600529/?n_cid=nbpitp_twcm

 情報法制研究会設立の趣旨:設立発起人代表 新潟大学教授・鈴木正朝
 情報法制研究所発足の趣旨は、日本データ通信協会に設置された情報法制研究会の延長線上にあると思われる。同研究会の代表世話人で、情報法制研究所の理事長に就任した鈴木正朝・新潟大学教授のコメントを、そのまま引用する。

 個人情報保護を取り巻く諸課題、とりわけ個人情報保護法の改正、パーソナルデータの利活用、諸外国との制度の整合性など、我が国の個人情報保護制度に関する議論の場が必須となっている。また、インターネットを利用する多様な技術やサービス等の普及やグローバル化により、情報通信を取り巻く環境は大きく変化しており、将来を見据えた法的課題の検討が必要となっている。 
 このような背景から、有識者を中心として、大学院生などの若手研究者、一般企業等の参加者を広く募集し、当初はシンポジウムや講演会を中心に活動を行い、将来的には国内外における情報法制に関する法的課題の調査及び研究を通じて、広く一般に議論、提言ができる研究会を発足させたいと考えている。ついては、この趣旨にご賛同いただける方々の積極的なご参加をお願いしたい。

設立の趣旨と運営方針は下記のスライド



マイナンバー制度における個人情報保護と情報開示の関係

 研究会が当面の目標とするのは、個人情報保護に関わる法体系や制度の整理にあるようだ。ITサービス業界で馴染みがあるのは1998年にスタートした「プライバシーマーク(Pマーク)制度」だが、これはインターネットの普及を背景にした「民間部門における個人情報の取扱い」に関する自主規制。個人情報がネットワーク上でやり取りされ、コンピュータで大量に処理されている状況を踏まえている。
 公的機関が保有する個人情報の取扱いについては、2005年4月に施行された個人情報保護法が規定している。併せて5000件以上の個人情報をデータベース化して保有する民間事業者も、規定の対象となったのは周知の通り。ところが199年5月施行の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)があるので、話がややこしい。前者は秘匿、後者は公開と相反する命題を示している。
 壇上に立った高木浩光氏(産業技術総合研究所研究戦略部連携主幹)が指摘したのは、「散在情報」の取扱いだ。SNSWikipedia、論文や記事などに引用される個人情報は、どこまで保護(秘匿)されるべきか、議論はほとんど行われていないという。
 また「プライバシー」と「個人情報」の混同もしくは認識の混乱が生じている。プライバシーは当然保護される(というか故意に侵したり暴いたりするのは良識の範囲で罰せられるべき)だが、「個人情報」を拡大解釈してしまうと社会活動がギスギスすることがある。学校の連絡網が機能しなかったり、情報共有ができないというケースが多発している。
 法制度で保護の対象するのは、1988年制定の「「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」に規定されているように、「電子計算機処理に係る」が基本となるべきという考え方がある。それを前提として、マイナンバー制度における個人情報保護と情報公開のあり方を再検討する必要がありそうだ。