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東京・清瀬第3小サマースクールに見る「小学校でのプログラミング教育」とは

「小学生でプログラミング教育」の必須化まで2年を切った7月26日、東京・清瀬市の市立第3小学校(大谷憲司校長)で「小学生のためのプログラミング教室」が行われた。「教えるのはプログラム言語でなくプログラミング的思考」と言われるが、教育用の小道具に目を奪われると、喜ぶのは教材販社と学習塾ということになりかねない。清瀬3小でのプログラミング教室は昨年に続く2回目で、今回はScratchによるゲーム作りが加わった。保護者の参加も前回から倍増と、関心は高いようだ。

第一義は「夏休みの思い出づくり」でいい

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 清瀬第3小学校の「小学生のためのプログラミング教室」は、夏休みを利用して25・26の2日間行われたサマースクールの一環。むろん「夏休みの思い出づくり」が第一義であって構わない。その道のプロと保護者が連携し、正規の授業では学べない体験を通じて新しい気づきや発想を習得する。文部科学省が推進するアクティブラーニング(能動的学習)に結びつく。

 内容は初日がペーパークラフト、和太鼓、リコーダー、2日目が木工、プログラミング、科学の計6講座。その道のプロの指導のもとで、学童と一緒に教職員や保護者が楽しみながら学んでいく。あるいは学年が違う児童が協調して作業に取り組んだり、お互いに教えあうことも隠れたテーマだ。同小におけるサマースクールは今回が3回目、プログラミング教室は昨年に続く2回目となる。

 2020年度から「小学校でプログラミング教育」が必須化されることが決まっているものの、現場の教職員は何を・どのように教えたらいいのか、困惑が広がっている。清瀬市で率先して取り組んでいるのが第3小学校ということから、市教育長の坂田篤氏も視察に訪れ、児童たち感想を熱心に聞いていた。

昨年の授業からバージョンアップ

 昨年のプログラミング教室は、低学年が数消しゲーム、中学年が数式ゲーム、高学年が数式プログラム作成という内容だった。

 数消しゲームは画面に表示されている数カードを消し終わるまでにかかった時間を競う。数式ゲームは1から10、20、40、100になる足し算・引き算の数式を見つける。数式プログラム作りには高松市のDynax Tが無料で提供している「Math Pub」というネット型のシステムを利用する。プログラムの要件を理解して加減乗除の問題を作る。

 今回はさらに低学年向けに昨年の数字ゲームをバージョンアップした「チューリップ」というゲーム、中学年向けにMath Pubをベースにした人工知能(的なゲーム)が加わった。また高学年向けの授業は、Scratch(米マサチューセッツ工科大学MITメディアラボが開発したビジュアルプログラミングツール)でゲームを作る内容に変えている。昨年も参加した生徒が1年進級しているので、全体をレベルアップしたわけだった。

 カメラを構えていると、保護者とおぼしき男性が

 「実は私の息子も参加したいと言っていたんです」

 と声をかけてきた。

 息子さんは今年の春、第3小学校を卒業して現在は市内の中学校に通っている。プログラミング教室の準備や指導の補助員として参加するつもりだったのだが、中学のクラブ活動の予定と重なった、という。声をかけてくれた男性は、昨年は保護者として、今回はボランティアとして、だ。参加者もバージョンアップというわけだった。

生徒と生徒、生徒と先生の距離を縮める

 当日朝8時前に起こった停電・電車普通によるバタバタはとりあえず措くとして、高橋氏曰く「2回目ですから、私が遅れても先生が授業を進めてくれてるでしょう」の言葉通り、教室に入ったとき生徒たちは、昨年の授業用に高橋氏が作成した数消しゲームで遊んでいるところだった。 今回使ったのはそのバージョンアップ版だ。

 平仮名が書かれた赤、白、黄色のカード計43枚がバラバラに配置されていて、最初は意味が分からない(トップ掲載の写真)。ゲームのタイトル「チューリップ」とカードの色から、

 ♫ 咲いた咲いた……

 の歌詞と気付くかどうか。

 「じゃ、みんな前に集まって」 の言葉で全員がプロジェクター画面の前に集合する。前もってPCデスクを移動させ、生徒たちが体育座りで集まれる空間ができていた。

 「これ、何かな? 全部で1つの文になるんだけど」という問いかけに、しばらくすると生徒たちから、「色が3つ?」(翻訳すると「色ごとに1つのまとまりがあるんじゃないか」)の声が出る。

 「3つの文じゃなくて、全体で1つ」

 ???

 「最初は”さ”だよ」 のヒントが出たとたんだった。20人の生徒が一斉に

 ♫ さいたさいた チューリップの花が……

 と、元気いっぱいに歌い始めた。

 どういうことなのだろう。1人2人が「分かった!」なら理解できるのだが、全員が一斉に歌い出したのには驚いた。小学1・2年生ならでは、机から離れ、仲間との距離が縮まったことで思考回路が同期したのに違いない。

 授業は「チューリップ」の歌詞に沿って、表示されている文字カードを消していくゲームだ。目の前のPCの画面をクリックするのでなく、プロジェクターで壁に表示されたカードをブルートゥースポインティングデバイスで押していく。

 見ていた生徒たちが「あっち、あっち!」「うえ、うえ!」と指示を出す。

 「あっち、こっちじゃ分からないよ。右とか左とか言わないと」

 そのとたんに指示する声が「右、みぎ!」「左、ひだり!」

 に変わる。

 そうか、あっち・こっち、そこ・ここではなく、右・左、上・下で示すことが論理的思考につながるわけだ。しかも歌詞の順番に押していかないと、カードは消えてくれない。

 最後はソースコードを見せ、一部に手を入れるだけで、背景の色が水色からピンクに、「チューリップ」の文字が「バラ」に変えることができる。ただ「これがプログラムというもの」の意味を生徒たちに理解するには、もうちょっと時間が必要だったようだ。しかし休憩を挟んであと1時間の授業を設定したとして、児童たちの集中力が続かなかったどうか。そのあたり、配分が難しいところだ。

数式と答えで育てる「うん工知能」が登場

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 中学年の授業でも、まず生徒たちを前の空間に集めて、「チューリップ」の文字消しゲームが行われた。生徒と生徒、生徒と先生の距離を縮める効果は、生徒たちが自由に思いついたことを発言するところに現れた。 「これは何かな?」の問いに何人かは答が分かったようだったが、低学年のように全員の思考が同期することはない。自我の形成度合いが影響しているのだろうか。

 次に高橋氏が出してきたのは「ロボ・パル」という名のロボットだった。1981年、バンダイが売り出したもので、NECの8ビットパソコン「PC8801」や「MSX」規格のパソコンに接続して動かすことができた。生徒たちばかりか、参加している教職員も保護者も初めて見るものだ(実は筆者も初めて見た)。

 「いまはもっとすごいロボットが登場しているけれど、40年前もいまも、それを動かすのはコンピュータのプログラムなんだよね」

 授業のハイライトは「うん工知能」だった。 「うん、こうだよね」を縮めた「うんこドリル」を文字ったネーミングだ。Math Pubで作った数式プログラムと、そのプログラムに従ってコンピュータが返してくる回答が合っているかどうか、それを生徒が判断して「うん工知能」を育てていく。間違った答えを出すプログラムが入っていて、その都度、生徒たちの「合っている」「違う」の繰り返しがプログラムを修正していく仕掛けだ。

 数字2けた×数字2けた-数字2けたの数式を作ったはいいけれど、答が合っているかどうかは自分で計算して確認しなければならない。生徒たちはノートを開いて夢中で筆算し、パソコンの答えを判定する。今回は初期バージョンだが、高橋氏は「RPGゲームのように呪文を唱えると自分のうん工知能が開いて、一緒に勉強していくシステムに育てていきたい」という。

Scratchで「3時のおやつをゲットせよ!」

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石井モルナ氏によるゲーム作りではキャラ設定に生徒の個性が発揮された

 最後の授業は高学年の生徒が対象。実際のプログラム作りを体験しよう、ということで、Scratchを使ったゲーム作りだ。講師の石井モルナ氏はfacebook「石井モルナ かわいい電子工作」(https://www.facebook.com/KAWAII.electronics/)をはじめ、Raspberry Piラズベリー・パイ)やmicro:bit(マイクロ・ビット)などの解説書、入門書を何冊も出版している「その世界の著名人」だ。

 Scratchについての説明は省略するとして、生徒たちが取り組んだのは「3時のおやつをゲットせよ!」というゲーム作りだった。自分の分身、ゴールとなるおやつ(ケーキでもクッキーでも)、行手を邪魔するお邪魔虫を設定し、モジュールを組み合わせて機能と動きをプログラミングしていく。

 「通常は2時間のコース。それを1時間でということなので、駆け足になりました。でも生徒さんたち、しっかりついてきてくれて、全員がゴールできました」

 と石井氏。

 興味深かったのは、キャラクターの動きを、X軸からの数字:プラス(前進)/マイナス(後進)で指定することを通じて、小学生が「負の数」の概念を、一部でも理解したことだ。それとキャラクターの動きはトリガー、アクションの制御、音や文字の表示、イベントなどに分解され、それぞれをプログラムで指定すればいい、ということも理解できただろう。

 もちろん抽象化・体系化した知識として獲得するには繰り返しの体験が必要だし、そのためには失敗と振り返りが重要になる。授業が終わるたびに、同校では「じゃ、感想を書きましょう」というになっているらしい。それもまた感心したことの一つだった。

 

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