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スキルベースのデジタル人材育成策(2) 採用する側もマインドシフトしなきゃ

  DEGIDENを読むと、新社会人・現役社会人の上に「デジタル推進人材」が位置しています。エンジニアではなく、実務でIT/デジタルを活用できる人という位置付けです。「IT/デジタルに詳しい素人」が言い過ぎだとすれば、「データ・セントリックな視点からデジタル技術で事業改革を推進する人」と言えばいいかもしれません。

 これに対して経産省報告書の「デジタル人材」はハイスペックなエンジニアで、「士業」に近い位置付けです。弁護士、医師、公認会計士、税理士、司法書士弁理士など「資格」を取得して開業が認可される個人事業者に近いイメージでしょう。

じゃぁ「スキル」って何なんだ?

 士業が一人前に仕事をこなせるようになるには、「資格」は必須ですが「それだけじゃダメ」に決まっています。「知識」だけでもダメ、「技術」だけでもダメです。経産省もそれが分かっているので「スキルベース」と言っています。

 DEGIDENサイトに情報を載せている霞ヶ関省庁の個別サイトにも「スキル」という言葉が散見されます。チコちゃんではありませんが、「スキルって何?」と尋ねられたら、簡潔・端的に答えることができるでしょうか。

 Wikipediaを調べると

 スキル(英語skill)とは、通常、教養訓練を通して獲得した能力のことである。日本語では技能と呼ばれることもある。生まれ持った才能に技術をプラスして磨きあげたもの、たとえば音楽家作曲能力なども含む。

 とあります。

 「スキル」とは物事を行うための能力のことである。技術的な能力を意味する「技能」と同義であるが、近年は技術的な能力だけではなく、交渉力などの仕事を潤滑に進めるために必要な能力や、技術を証明するための資格、運動を行うための肉体的能力についてもスキルと呼ばれることが増え、コミュニケーションスキル、ビジネススキル、運動スキル、言語スキルといった言葉が使用されている。

 端的に言うと「能力」のことで、「技能」と同義である、とWikipediaは言っています。では「能力」とは、「技能」とは……と深掘りしたくなるのは仕事柄でしょうか。何かをするのに何が必要かを考えると、答えが見えてきます。

 するど、どうやら「スキル」とは、知識、技術、経験値の3つに分けることができそうです。経験値は業務歴(キャリア)と成功/失敗体験に培われた知恵、コツ、要領、勘所の集合です。さらにいえば目配り・気配り、気力・体力・集中力、興味・趣向、沈着・陽気といった天賦の気質も含まれます。

業務を細かなプロセスに分解する

 それはエンジニアに対してだけではありません。採用・雇用・管理する立場にある人たちにもスキルベースの採用、契約、配置、チーム編成、人事、処遇etcが求められます。聞きなれない言葉ですが、それを「スキルタクソノミー」(図3)というそうです。

図3 スキルタクソノミーの要件

 ちなみに「タクソノミー」は英語単語「taxonomy」で、翻訳すると「分類学」「分類法」のこと。商品の分類を指すこともあれば、データエンジニアリングにおけるデータの階層化、データ構造の整理手法を意味することもあります。これは覚えておいた方がよさそうです。

 採用・雇用・管理する立場にある人は、終身雇用型のメンバーシップないしキャリア/資格を重視するジョブ型を前提とするマインドをスキルベースに変えていかなければなりません。そのような人たちは比較的年齢が高く、「これで長年やってきて特段の問題は起こっていない」と自信を持っています。マインドをスキルベースにシフトさせるのはそこそこの困難を伴いそうです。

 では、どうすればスキルベース・マインドにシフトすることができるでしょうか。それこそ資格の話では解決しません。実践に裏打ちされた知識と技術と経験値、なかでも成功/失敗体験から学んだコツ、勘所、要領を再確認する必要があるようです。そのうえで業務をエンジニアリングしなければなりません。

 業務をエンジニアリングする、とはどういうことかというと、業務を細かなプロセスに分解し、そのプロセスごとに当てられるべき能力(知識、技術、キャリア、性格など)をマッピングして行けばいいのです。業務に人を当てるのでなく能力を当てて行く。

 能力は人に帰属している場合もあれば、事務機器やITシステム(業務アプリケーション)に置き換えることができるかもしれません。就業者のチーム編成ばかりでなく、業務プロセスを見直すことにつながって行きます。スキルベースの採用・雇用・管理はDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩でもあるようです。

 

(IT記者会 佃均)

 

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