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3月期/ポータルサービス64社 5年ぶり2けた増の背景に巣ごもり需要と非接触指向

 個人向けポータルサービス64社の2022年3月期通期業績は、売上高が前年同期比△15.6%と5年ぶりの2けた増となった。新型コロナ対策に伴う巣ごもり需要と非接触指向が業績を押し上げた。それに連動して営業利益、純利益も大幅に増加している。ブロックチェーンビッグデータ人工知能(AI)などを駆使した複雑なデータ処理が視野に入ってきた現在、情報の検索・表示に代表される単純なポータルサービスからWebアプリに移行し、最終的にB―B―C型Webサービスに向かうことが予想される。

アジャイル経営? 境界が溶け始めた

 2022年3月末現在、株式を公開している「ポータルサービス」の3月期企業は64社で、2021年3月末と比べ1社(イーブックイニシアティブジャパン)減だった。このため経営指標4情報(売上高、営業利益、経常利益、純利益)の前年同月比および、売上高に対する営業利益、純利益の割合)営業利益率、純利益率)は、2021/2022年連続比較可能な企業で行う。

 前もって断っておかなければならないのは、この「ポータルサービス」は旧来のITサービス業の定義に従えば、「ITのユーザー」ということになる。ITを使ってビジネスを運営しているという点で、既存の金融業、運輸業などと少しも変わらない。サイバー性が強いために世の中一般が「ITサービス」と勘違いしているのに違いない。

 64社の主業務別内訳は以下のようになっている。

  • アミューズメント     15社
  • 電子メディア       11社
  • 情報配信          7社
  • 物品販売(ネット通販)  10社
  • 求人・求職        10社
  • 情報提供         11社

 ポータルサイトを通じてサービスを提供する点で、「Webサービス」とよく似ている。「Webサービス」が法人顧客と定期契約を結んで業務アプリケーションやBPOをサービスとして提供するのに対して、「ポータルサービス」はB―B―C型でジャスト・イン・タイム・サービスという相違がある。

 大きく分けて、

 1)サービス主体が消費者とダイレクトに結びつくケース

 2)取引先(法人・個人)との契約に基づき、消費者(個人)のニーズを取次ぐ

 の2パターンがあり、前者は「アミューズメント」(主にオンラインゲーム)、「プッシュ型情報配信」「電子メディア」、後者は「物品販売(ネット通販)」「求人・求職」がそれに当たる。「プッシュ型情報配信」と「情報提供」は、消費者から対価を取得せず、バックにいる法人・コンからスポンサー料を徴収する広告モデルという特徴がある。

 「ポータルサービス」6業種のビジネスモデルは異なるが、消費者(個人)のキックオフで起動するということが共通している。消費者がブラウザの検索窓に検索語を入力することでシステムが起動し、座席の予約や商品の購入、対価の支払い(決済)といった経済活動につながっていく。

 ここに来て目につくのは、主業務の境界がかなりの割合で重複し、セグメントが難しくなっていることだ。個人向けブログサービスでスタートしたミクシィの主な収益源が、いつのまにかスマホゲームになっていたり、法人向けソフトウェア受託開発に分類していたインフォコムが電子メディアに軸足を移しているというようなケースが少なくない。

 また、情報検索・提供サービスを基盤に物品販売や求人・求職サービスを加えたり、法人向け業務アプリケーションの提供(ASP/SaaS)を基盤としつつ、個人向け検索・予約サービス、さらにBPOサービスまで業務を拡大することもある。

 激しく変化する消費者のニーズに対応するためにシステムを日に何回も微調整するように、経営もアジャイル型/データ・ドリブン型という特性がある。まさに「境界が溶け始めた:という感じがする。

アミューズメントとネット通販が軸

 ポータルサービスの2022年3月期業績は以下のようだった(前年同期比の△はプラス、▼はマイナス、Pはポイント)。  

◆全体(64社)

  • 総売上高:5兆2710億28百万円 △15.6%
  • 営業利益:  8424億37百万円 △31.7%
  • 営業利益率: 16.0%(+2.0P)
  • 経常利益:  8763億95百万円 △35.5%
  • 純  利  益:  5960億80百万円 △51.0%
  • 純利益率:  11.3%(+2.6P)

 売上高の前年同期比は、2017年3月期の△13.0%(1社当り換算では△11.2%)以来、5年ぶりの2けた増だった。コロナ禍による巣ごもり需要、非接触指向が指摘されているものの、3月決算企業に限ればその影響は2021年業績より2022年業績に現れている。

 主業務別の業績は以下のようだった。

アミューズメント 15社

  • 売  上  高:2兆3779億51百万円 △12.5%
  • 営業利益:  4108億56百万円 △33.3%
  • 営業利益率: 17.3%(+2.7P)
  • 経常利益:  4769億51百万円 △41.1%
  • 純  利  益:  3549億46百万円 △59.5%
  • 純利益率:  14.9%(+4.4P)

 売上高2兆円超は5期連続、前年同期比2けた増は2016年以来6期ぶりとなる。また売上高、営業利益、純利益は本調査開始以来の最高値だった。

◆電子メディア 11社

  • 売  上  高:3679億49百万円 △3.8%
  • 営業利益: 361億57百万円 △27.0%
  • 営業利益率:9.8%(+1.8P)
  • 経常利益: 383億20百万円 △30.4%
  • 純  利  益: 278億17百万円 △35.5%
  • 純利益率:7.6%(+1.8P)

◆情報配信 7社

  • 売  上  高:1189億31百万円 ▼5.8%
  • 営業利益: 140億17百万円 ▼3.7%
  • 営業利益率:11.8%(+0.3P)
  • 経常利益: 146億86百万円 ▼2.4%
  • 純  利  益:  97億29百万円 △24.1%
  • 純利益率:  8.2%(+2.0P)

◆物品販売(ネット通販) 10社

  • 売  上  高:1兆9643億23百万円 △20.8%
  • 営業利益:  2462億06百万円 △16.9%
  • 営業利益率: 12.5%(-0.4P)
  • 経常利益:  2153億69百万円 △12.2%
  • 純  利  益:  1143億97百万円 △13.4%
  • 純利益率:  5.8%(-0.4P)

◆求人・求職 10社

  • 売  上  高:1239億28百万円 △23.1%
  • 営業利益: 198億31百万円 △33.8%
  • 営業利益率:16.0%(+1.3P)
  • 経常利益: 217億11百万円 △25.4%
  • 純  利  益: 138億29百万円 △54.7%
  • 純利益率: 11.1%(+2.3P)

◆情報提供 11社

  • 売  上  高: 3179億46百万円 △13.9%
  • 営業利益: 1153億70百万円 △66.1%
  • 営業利益率: 36.3%(+1.0P)
  • 経常利益: 1183億58百万円 △70.0%
  • 純  利  益:  753億62百万円 △95.8%
  • 純利益率:  23.7%(+2.0P)

 65社を機能別に「コンテンツ」(アミューズメント、電子メディア、情報配信)と「検索・マッチング」(物販、求人・求職、情報提供)で整理すると次のようになった。

◆コンテンツ 33社

  • 売  上  高:2兆8648億31百万円 △12.4%
  • 営業利益:  4610億30百万円 △34.2%
  • 営業利益率: 16.1%(+2.6P)
  • 経常利益:  5209億57百万円 △41.7%
  • 純  利  益:  3924億92百万円 △54.4%
  • 純利益率:  13.7%(+4.1P)

◆検索・マッチング 32社

  • 売  上  高:2兆4331億11百万円 △19.6%    
  • 営業利益:  3832億41百万円 △28.9%
  • 営業利益率: 15.8%(+1.1P)
  • 経常利益:  3572億54百万円 △27.4%
  • 純  利  益:  2084億36百万円 △36.9%
  • 純利益率:  8.4%(+1.1P)

 コンテンツ系では「アミューズメント」、検索・マッチング系では「物品販売(通販)」が、それぞれ大きなウエイトを占めている。「ポータルサービス」全体の売上高に占めるそれぞれの割合は、「アミューズメント」が44.9%(2021年は45.3%)、「物品販売(通販)」が37.1%(同34.9%)となっている。

 

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