2020年9月に発足した菅義偉新政権が目玉政策の一つに掲げる「デジタル庁」。2021年9月の設置に向け、基本方針がまとまった。残念なことに中身をチェックすると、”デジタル関連施策”の権限を同庁に集め、過去20年かけてできなかった”IT政策”の実現を目指すというもの。言葉は悪いが、IT政策をデジタルと呼び変えただけにさえ見える。”デジタル”という概念に見合う、グランドデザイン(全体設計)が欲しいところだ。
デジタル庁、期待の一方で強い違和感
「デジタル庁にはデジタル社会の司令塔となることを期待している」。2020年12月16日の記者会見で、電子情報技術産業協会(JEITA)の石塚茂樹会長(ソニー代表執行役副会長)はこう語った。この言葉に象徴されるように、2021年9月にスタートするデジタル庁への期待が高まっている。コロナ禍で露わになった日本の遅れを取り戻し、その上でデジタル先進国の仲間入りをする。そんな期待である。
背景には、2001年にe-Japan戦略を打ち出して以降の過去20年間、政府や行政のIT化やデジタル化が遅々として進まなかった事実がある(図1)。2010年の「新たな情報通信技術戦略」、2012年の政府CIOの設置、2013年の「世界最先端IT国家創造宣言」、さらには2017年の「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」などを打ち出してきたが、実現したのはブロードバンド・インフラくらい。国際連合の電子政府ランキングでは、2020年は14位(前回の2018年は10位)に留まった。言ってみれば「電子政府の失われた20年」だ。
そんな停滞を打開し、日本を「世界最先端IT国家」=「デジタル国家」にするべく新設される官庁なのだから、期待が高まるのも当然である。何よりも管政権の看板政策の1つであり、2021年9月に予定される発足に向けて議論が急ピッチで進んでいる。
だが議論の中を覗いてみると気になることがあり、そして強い違和感を感じる。①古びた仕組みをそのままに目に見える課題を解決しようとしている、②デジタル庁の議論なのに効率・便利を旨とするITの発想から抜け出せていない、③デジタル時代の国のあり方に関するグランドデザイン(全体構想)が不在でビジョンが見えない、といった点がそれだ。以下、これらを紐解いてみたい。
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