行政電子化 デジタル庁が真っ先にすべきこと

 

 □京都先端科学大・旭川客員教授 増山壽一

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 およそ8年の間、安倍政権を内閣官房長官として支えた菅義偉氏が、第99代内閣総理大臣に選出された。菅氏は、2世議員でもなく、息子たちを世襲させる意思もなく、ふるさとである秋田から単身横浜に来て、市会議員から総理大臣になった。現在では数少ないたたき上げであり、現代の成功物語の主人公である。この新総理の政策一丁目一番地は、「デジタル庁」であるという。

 ぜひ、なんの例外もなく強力に進めていただきたい。今回のコロナ禍で、政府や地方自治体、各種行政窓口における対応のまずさは目を覆うばかりであった。いくら各種アプリやシステム構築を大企業に依頼しても、行政の最前線におけるIT環境の貧弱さ、ITリテラシーの低さが、その効果を完全に打ち消して、行政の非効率性と行政窓口の長時間労働が露呈した。その意味で「デジタル庁」構想は大変時宜を得た政策だ。

 ただし、その中身は、行政の内部自らがデジタル化することに最大限注力すべきである。地方や民間、中小企業などをデジタル化するためと称して、補助金などのばらまきの役所に決してなってはいけない。役所自らがデジタル化する、そのためにはまず、パソコンの購入やアプリの導入、役人へのIT教育の徹底などを行う役所にならないと、日本全体での社会変革は不可能である。

 明治の初期、役所が真っ先に文明開化の模範を人々に示した。まず洋服を着て、日曜日を休み、暦も新暦を用いた。この明治政府を見習うべきである。役所のシステムが効率化しない日本では、地方も民間も成長することができない。昔、最も電子化が遅れていた法務局や裁判所の担当者の弁明は、「世の中には字の読めない人、パソコンを使えない人もいる。そのような人のためにも公的サービスを等しくしないといけない。だから一律的な電子化はできない」というものであった。

 ややもすると、このような理屈が再びぞろぞろと出てきそうな日本である。さすがに字の読めない人はいないとは思うが、このような人に対する対応は、社会政策として実施すべきで、行政手続き全てを何の例外もなく電子化することを、まず明確に目指すべきだ。結果、日本の地方や中小企業に必ず裨益(ひえき)するのである。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。58歳。