公務員リモートワークの現状調査と今後の展望

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デロイト トーマツ グループ(本社:東京都千代田区 CEO:永田高士 以下、デロイト トーマツ)は「行政組織における在宅勤務実施状況・業務効率化に関する調査2020」の結果を発表します。本調査は、コロナ禍での行政組織の在宅勤務の現状や課題、職場環境改善への意識を明らかにし、今後のあるべき非接触型経済社会における行政組織の在り方の検討に資するために実施しました。2020年7月に国、都道府県、市区町村の行政職職員を対象に実施し、1,000名から回答を得たものです(調査概要は文末参照)。

日本において新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大防止への対策が迫られる中で、在宅勤務制度を積極的に採用する民間企業が現れ、オフィスへの出社を前提とした働き方が大きく見直される兆しがあります。このような状況下で、行政組織においても職員の安全を守るための感染対策や、人材確保にも影響する柔軟な働き方の実現が必要とされています。しかし、行政組織では住民の個人情報を守るための独自のネットワーク環境やセキュリティ対策、住民向けの窓口対応の必要性など、在宅勤務等の実施が難しい状況もあります。こういった背景等から、本調査において行政組織の在宅勤務実施状況が低調であることが明らかになるものの、今回示された職員の意向や、現在の政府のセキュリティ対策のあり方検討の状況、行政組織におけるオンライン化の機運を踏まえると変化が加速する可能性を秘めています。

詳細な調査結果はこちら

 

在宅勤務の実施率は15.9%、制度があっても実施していない人は67.4%にのぼる

本調査における公務員の在宅勤務実施率は15.9%となり、低調な状況が示されました。在宅勤務制度が「ない」と回答した人が46.7%、また、在宅勤務制度が「ある」(48.7%)と回答した人であっても、その67.4% が在宅勤務を「していない」と回答しており、単なる制度の導入だけでは解決されない状況があることが伺われます。

 

在宅勤務制度が「ある」と回答した者は半数に満たず、制度がある場合でも67.4% が在宅勤務を「していない」。制度がない場合を含めると未実施の割合は79.5%になる。クリックまたはタップすると拡大版をご覧になれます
 行政組織において、在宅勤務が進まない要因の一つに自宅からPCで社内ネットワーク※、にアクセスできないことがあります。自宅に業務用PCを持ち帰り、社内ネットワークにアクセスできるのは全体で16.3%であり、国では29.3%、市区町村では8.6%に留まり、自宅で通常業務ができる職員は限定されています。在宅勤務を実施する上での課題に関する回答では、「IT・ネットワーク環境」が最多で62.9%、次に「業務内容」59.7%、続いて「セキュリティ」46.5%となっています。「制度・ルール」(43.6%)、「職場の雰囲気」(13.7% )という運用の課題もあるものの、それ以前に在宅勤務を実現するための環境の整備に課題があることがうかがえます。

※行政組織における庁内ネットワークを指す、以下同様

業務用PCを自宅に持ち帰り、社内ネットワークにアクセスできる割合は国が約3割であるのに対し、市区町村は約1割に留まる。

 

職員のコロナ感染への不安は7割、在宅勤務への希望も8割と高い

このように現状、行政組織には在宅勤務が実施しにくい環境がある一方、全体の7割の職員がコロナ感染への不安を感じており、業務内容別に見ると、住民と接する「住民関連」、「税務」部門では不安を感じる人の割合が8割と高くなっています。本調査ではこの2部門は自宅から社内ネットワークにアクセスできる割合が最も低くなっており、在宅勤務の実施率も低く示されています。また、職員の意向では、在宅勤務の希望日数を聞いた設問において8割以上が在宅勤務を希望しており、希望日数は「週2日」が最多で29.3%であり、週5日を希望する職員も17.7%いました。団体ごとの内訳では、在宅勤務が進む国の職員の方が、希望日数が多くなっており、在宅勤務を実施することで希望日数が増える可能性があります。

 

住民との対面でのやり取りをする部門の中でも「住民関連」「税務」部門は感染への不安が高い。クリックまたはタップすると拡大版をご覧になれます

 

「自由な働き方」「労働時間」といったより広範な働き方や職場環境の改善を求める意見が多数

新型コロナウィルス(COVID-19)感染対策に伴う勤務環境の変化に関わらず、広く改善されたら良いと思う点を聞いた設問では、「自由な働き方」が最多で41.7%、次に「労働時間」39.5%、続いて「職場環境」38.4%となりました。「人事評価・異動」(29.0%)や「給与」(27.8%)といった処遇よりも、働き方・職場環境の改善を求める意見が多数となりました。また、AI・RPAによる業務効率化については「できる」、「難しい」が共に約3割、「分からない」も同様に約3割となり、この傾向は国、都道府県、市区町村で大きな違いがありませんでした。これらの改善は行政組織における人材確保にも重要な影響を与える要素になると考えられ、非接触型経済社会において民間企業が在宅勤務をはじめとする自由な働き方、また業務効率化を進める中では、尚一層、行政組織の労働環境の改善が課題として浮かび上がってきています。

 

勤務における改善希望は「自由な働き方」が最多で41.7%、次に「労働時間」39.5%、「職場環境」38.4%と続いており、働き方の改善を求める意見が多数となっている。クリックまたはタップすると拡大版をご覧になれます

今回調査では、行政組織における在宅勤務の実施率の低さが明らかとなり、特に、市区町村においては在宅勤務を実施していない職員の割合が88.9%(在宅勤務制度がない回答も含む)と顕著であることが判明しています。在宅勤務が実施できない要因としては、ネットワーク環境や業務内容によるものが大きく、これらは、自治体の情報セキュリティ対策強化のためにとられた、ネットワークの分離、いわゆる「三層の対策」の結果によるものが多分にあると推察されます。在宅勤務のための環境が整備されていないことを安易に批判する状況ではない一方で、国でも自治体セキュリティ対策の見直しの検討が進んでおり、その結果を受けて今後状況が変わることも期待されます。この他にも、個人情報に関係する事務とそうでない事務を区別したうえで、自治体が主体的に窓口申請のオンライン化などを進める方法の検討等、行政は住民サービスの向上と職員の働き方の改善の両立を目指すことが求められています。

 

 

調査概要

調査方法:WEB調査
調査期間:2020年7月17日(金)~2020年7月19日(日)
調査対象:国、都道府県、市区町村の行政職職員
サンプル数:1000件