テレワークは進むが電子政府は一歩後退ーー新型コロナが浮き彫りにする日本のIT事情

ネットやテレビ、新聞のニュースは連日「新型コロナウイルス感染拡大」の話題で持ちきりだ。「SARS-CoV-2」(Severe Acute Respiratory Syndrome Corona Virus 2)または「2019-nCoV」(2019 novel Corona Virus)、それによる呼吸器疾患は「COVID-19」(Corona Virus Disease 2019)が国際的な正式名称だが、「新型コロナ」ないしは「コロナ」だけで通じるほど世界の関心は高く影響が大きい。そんな中でも見えてくるのが日本の企業や行政機関のIT事情だ。

目の前の危機が推し進めるもの

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本政府が感染症基本方針を発表した2020年2月26日、梶山弘志経産相加藤勝信厚労相赤羽一嘉国交相の3閣僚が、経団連日本商工会議所経済同友会、連合の4団体に時差通勤やテレワークの採用を要請した。東京・渋谷に本社を置くGMOインターネットが「新型コロナウイルスの感染拡大に備え、3拠点で2週間の一斉在宅勤務」を発表したのは1月26日だったから、政府はまるまる1カ月の後手を踏んでいる。

GMOインターネットのテレワーク対象者は約4000人、これに続いてメルカリや楽天が全社員に在宅勤務を指示した。以下、これまでの報道から拾うと、時差通勤とテレワークはNTTグループの約18万人が最多、NEC約6万人、ソフトバンク2万人、ヤフー6500人、電通5000人、KDDI資生堂各8000人、パナソニックユニ・チャーム各2000人など。LINEやアマゾン ジャパン、日本マイクロソフトなど国内のテレワーク先進企業からすれば“いまさら”だが、「働き方改革」の一環で毎年実施している「テレワーク・デイズ」がよい予行演習になっていたのかもしれない(関連記事「テレワーク・デイズ2020」の実施方針が決定、都内の企業には社員1割のテレワークを呼びかけ)。

テレワークの原義(由来)は「tele(離れた所で)+work(働く)」なので、必ずしも、常時ネットに接続しながらのPC/モバイル端末での業務を意味していない。もちろん、Web会議システムで対面の打ち合わせや会議、出張を減らせば、人と人の濃密接触を回避できる。在宅で資料を作ることはもちろんできるし、コミュニケーションを補うビジネスチャットも数多く出揃う。

しかし、自宅でできる仕事には限界がある。個人の技量に依存するウェイトが大きい文書作成やデザインなどはテレワークに向いているが、人と会って会話をすることが重要な営業提案やプレゼンテーションなどは難しい。さらに、財務、経理、請求、在庫、購買といったバックオフィスの業務処理をそのまま自宅でこなすことも難しいとされている。

事務系社員が日常的に活用しているデータは基幹系が69.7%、業務支援・情報系が54.6%、管理業務系が59.6%という統計がある(JUAS「企業IT動向調査2020」、図1)。これを在宅で行うには、従業員の私物のPCからダイレクトに、業務システムへのアクセスを可能にしなければならない。

仮にそれができたとしても、正規社員は管理するだけで、実務を手がけないことがある。非正規社員や外部企業から派遣されている要員の手助けなく、正規社員だけで業務がこなせるか、という問題もある。非正規・派遣就労が4割を超える雇用構造の歪みが、テレワークを直撃する。

図1:データ種類別の活用状況(出典:JUAS「企業IT動向調査2020」)
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