ネット系は10業種(業務)に細分化
株式を公開している決算期が3月のネット系企業は101社。このうち2018年2月時点で2018年度通期業績見通しを公表しているのは96社だった。96社の業種(業務分類)別内訳は、
〔1〕業務サービス ①「データセンター/サーバー運用」14社、②「ASP」(ソフトウェア・サービス)14社
〔2〕アプリケーション ③「総合ポータル」3社、④「マーケティング/営業支援」16社、⑤「アミューズメント/ネットゲーム」4社
〔3〕コンテンツ ⑥「ネット広告/アフリエイト」6社、⑦「コンテンツ配信」13社、⑧「電子出版/Webメディア」9社
〔4〕サイト運営 ⑨「求人・求職サイト」8社、⑩「通信販売」8社
となっている。
ネット系が細分化されるのは、既存の多様な業種(業務)がITを利活用したサービスに移行しているため。旧来型のITサービスに属するのは「ASP」(アプリケーション・サービス)と「データセンター/サーバー運用」であって、残る8業種(業務)はITの利用形態と理解していい。
確認のためにネット系96社の2018年度(2019年3月末)通期業績見通し(カッコ内は就業者1人当たり)は、
●売上高 3兆6,705億21百万円/6.2%増(4,035.8万円/2.3%増)
●営業利益 5,072億98百万円/3.4%減(557.8万円/6.9%減)
●経常利益 5,168億66百万円/4.1%減(568.3万円/7.6%減)
●純利益 3,359億77百万円/5.9%減(369.4万円/9.3%減)
となっている。企業ベースでは増収減益だが、就業者総数が3,271人増加したため、1人当たりでは減収減益となった。
業務サービス
データセンター/サーバー運用14社
売上高は3,068億91百万円で2018年3月実績比5.6%増だった。営業利益は209億40百万円で35.4%増、経常利益は206億35百万円で24.9増、純利益は142億07百万円で18.7%増だった。
就業者1人当たりに換算すると、売上高は3,731.3万円で1.9%減、営業利益は258.1万円で25.8%増、経常利益は254.3万円で16.1%増、純利益は175.1万円で10.3%増となる。
経営指標を見ると、営業利益率は6.9%で2018年実績より1.5ポイント上昇、純利益率は4.7%で0.5ポイント上昇する。
ASP(アプリケーション・サービス)14社
売上高は1,035億18百万円で2018年3月実績比40.3%増だった。営業利益は178億13百万円で82.4%増、経常利益は177億57百万円で83.3増、純利益は117億16百万円で77.1%増だった。リミックスポイント【3825】の業績拡大が全体を引き上げている。
就業者1人当たりに換算すると、売上高は3,006.6万円で30.3%増、営業利益は517.4万円で69.5%増、経常利益は515.7万円で70.2%増、純利益は340.3万円で64.5%増となる。
経営指標を見ると、営業利益率は17.2%で2018年実績より4.0ポイント増加、純利益率は11.3%で2.3ポイント増加する。
アプリケーション
総合ポータル3社
売上高の99.0%を占めるヤフー【4689】が通期業績見通しを公表していないので、公表3社の集計は行わない。
マーケティング/営業支援16社
売上高は2,813億63百万円で2018年3月実績比42.3%増だった。営業利益は669億45百万円で13.3%増、経常利益は667億80百万円で13.0増、純利益は458億25百万円で13.7%増だった。
就業者1人当たりに換算すると、売上高は2,427.8万円で23.9%増、営業利益は577.7万円で1.4%減、経常利益は576.2万円で1.6%減、純利益は395.4万円で1.1%減となる。
経営指標を見ると、営業利益率は23.8%で2018年実績より1.1ポイント低下、純利益率は16.3%で4.1ポイント低下する。
アミューズメント(ネットゲーム)4社
売上高は9919億35百万円で2018年3月実績比1.6%減だった。営業利益は1304億35百万円で25.3%減、経常利益は1314億36百万円で26.3減、純利益は913億33百万円で23.0%減だった。
就業者1人当たりに換算すると、売上高は4553.5万円で2.8%減、営業利益は598.8万円で26.2%減、経常利益は603.4万円で27.2%減、純利益は419.3万円で24.0%減となる。
経営指標を見ると、営業利益率は13.1%で2018年実績より4.2ポイント低下、純利益率は9.2%で2.6ポイント低下となる。
通期見通しを公表していないアカツキ【3932】、ガーラ【4777】の売上高は両社合算しても全体の2.5%に届かないので、2019年3月期業績は減収減益となる公算が強まった。
コンテンツ
ネット広告6社
売上高は1,137億16百万円で前年同期比は21.0%増だった。営業利益は127億37百万円で3.38倍(237.9%)増、経常利益は127億66百万円で3.23倍(223.2%)増、純利益は16億07百万円で22.1%減の予想となっている。
就業者1人当たり売上高は5,454.0万円で20.4%増、営業利益は610.9万円で3.36倍(236.4%)増、経常利益は612.3万円で3.22倍(221.8%)増、純利益は77.1万円で22.4%減となる。
営業利益率は11.2%で2018年実績比7.2ポイント上昇(2.8倍)、経常利益率は11.2%で7.0ポイント上昇(2.7倍)、純利益率は1.4%で0.8ポイント低下した。売上高が大きいこと、その割に純利益が低いことが目につく。
コンテンツ配信13社
売上高は980億87百万円で前年同期比は1.1%減だった。営業利益は89億80百万円で20.0%減、経常利益は76億29百万円で31.8%減、純利益は16億46百万円で75.5%減の予想となっている。
就業者1人当たり売上高は3,060.4万円で2.4%減、営業利益は280.2万円で21.1%減、経常利益は238.0万円で32.7%減、純利益は51.4万円で75.9%減となる。
営業利益率は9.2%で2018年実績比2.1ポイント低下、経常利益率は7.8%で3.5ポイント低下、純利益率は1.7%で5.1ポイント低下した。
電子出版/Webメディア9社
売上高は3,432億23百万円で2018年3月実績比2.2%増だった。営業利益は116億32百万円で7.3%増、経常利益は118.2億13百万円で11.8増、純利益は19億98百万円で58.6%減だった。
就業者1人当たりに換算すると、売上高は3,140.8万円で6.1%減、営業利益は105.6万円で7.3%増、経常利益は183.6万円で11.8%増、純利益は18.3万円で58.6%減となる。カドカワ【9468】の減益(43億00百万円の欠損)が影響した。
経営指標を見ると、営業利益率は3.4%で2018年実績より0.2ポイント上昇、純利益率は0.6%で0.8ポイント低下となる。
(注)本調査でカドカワ【9468】をネットサービス業に入れているのは、コンテンツ配信サービスのドワンゴ【3715】を吸収合併したことによる。カドカワの現時点の売上高の業務別構成比はWebサービス14%、デジタルコンテンツ23%、出版54%、その他10%。
カドカワを除いた8社で集計すると、売上高は5.6%増の1,362億23百万円(1人当たりは5.7%増の2,992.6万円)、営業利益は26.4%増の97億38百万円(26.5%増の213.9万円)、経常利益は27.8%増の100億13百万円(27.9%増の220.0万円)、純利益は66.0%増の62億98百万円(66.2%増の138.4万円)に補正される。
サイト運営
求人・求職サイト8社
売上高は964億57百万円で前年同期比は19.3%増だった。営業利益は189億25百万円で18.0%増、経常利益は200億41百万円で16.2%増、純利益は135億61百万円で23.1%増の予想となっている。
就業者1人当たり売上高は1617.0万円で6.1%増、営業利益は317.3万円で4.9%増、経常利益は336.0万円で3.3%増、純利益は227.3万円で9.4%増となる。
営業利益率は19.6%で2018年実績比2.1ポイント低下、経常利益率は20.8%で0.5ポイント低下、純利益率は14.1%で0.5ポイント上昇した。
ネット通販8社
売上高は4,330億32百万円で前年同期比は15.0%増だった。営業利益は322億78百万円で14.8%減、経常利益は329億36百万円で12.8%減、純利益は223億72百万円で4.3%減の予想となっている。
就業者1人当たり売上高は7,343.3万円で11.3%増、営業利益は547.4万円で17.4%減、経常利益は558.5万円で15.8%減、純利益は379.4万円で7.3%減となる。
営業利益率は7.5%で2018年実績比2.6ポイント低下、経常利益率は7.6%で2.5ポイント低下、純利益率は5.2%で0.7ポイント低下した。