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長崎県が4月から県内公立学校に「給食アレルギー管理システム」の提供を開始

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全国初のクラウド型で市町村の負荷軽減ねらう

 長崎県は今年4月から、県内の公立教育機関を対象に、全国初となるクラウド型サービス「給食アレルギー管理システム」の提供を始めると発表した。当面は県立の特別支援学校10、夜間定時制高校3の計13校でスタートし、県内市町村の公立小中学校にも順次、適用を拡大していく。クラウド型サービスであるためシステム管理が一元化され、独自導入・運用と比べ、運用と保守にかかる費用や人材など、市町村の負荷が大幅に軽減される。

 県立虹の原特別支援学校(大村市)で実施したプロトタイプの運用検証と実務体制づくりの研究を経て、昨年4月の一般競争入札で落札したNBC情報システム(中部省三社長、長崎市)がシステム構築を担当した。

他府県にも有償で設計書とソースコード

 システムの主な機能は、①栄養教諭などが食材のアレルゲン情報と児童生徒のアレルギー情報をマッチングして献立を確認するパソコン用管理機能、②教室や給食施設の現場職員がタブレット端末で給食搬入時の受取や配膳、喫食までを確認するチェック機能、③保護者がスマートフォンで利用する確認機能 ーーで構成されている。

 プロジェクトを統括する県教育庁政策監(教育情報化担当)の島村秀世氏によると、「県がクラウドで市町村にシステムを提供する形態もそうだが、タブレット端末やスマートフォンに対応したのは全国で初めて」という。

 クラウド型サービスの特性を活かして、県内だけでなく県外の市町村にも、要望があれば有償でサービスを提供する(食材情報を取得するため献立作成システムが必須)。またデータベースMySQLプログラミング言語PHP、React.jsなどオープンソース・ソフトウェア(OSS)をベースとしていることから、システムを要望する他府県には設計書とソースコードを有償で頒布する考えだ。ただし現時点で外部に提供する料金等、詳細は未定となっている。

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文科省の指針に沿った対応策が喫緊の課題に

 長崎県の公立小・中学校の児童生徒におけるアレルギー有症率は4.2%。10年前は2.0%だったので、10年で倍以上に増えている。摂取する食品ばかりでなく、生活環境の変化がヒトの免疫を弱めているとする「衛生仮説」もあるが、詳細な原因は解明されていない。

 学校給食のアレルギー対策が求められたのは、2012年12月、東京・調布市の市立小学校で食物アレルギーを持つ児童がアナフィラキシーショックの疑いで死亡したのがきっかけ。文部科学省は翌年5月、「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置して対応策の策定に着手した。2015年3月の「学校給食における食物アレルギー対応指針」がそれで、都道府県・市区町村の教育委員会と教育機関、給食施設に対策の実施を求めている。

「学校給食における食物アレルギー対応指針」http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/26/1355518_1.pdf

 具体的には、未然防止のために食材のアレルゲン情報と児童生徒のアレルギー情報をマッチングするほか、栄養教諭など管理者と教室・給食運営の現場担当者、保護者の連絡を密にして情報を共有すること、緊急時に対応できるようアナフィラキシー補助治療剤「エピペン」の保管場所やかかりつけ医療機関の情報を共有すること、インシデントが発生した場合のレポートなどとなっている。

 市区町村にとっては、文科省の指針に沿った対応策の実施が喫緊の課題だが、市区町村が個別にシステムを構築・運用するのはコストと手間および、情報管理の負荷が高い。このため全国1741市町村:2016年10月現在)で独自のシステムを運用しているのは西宮市(兵庫県、Webアプリケーション「アレルゲン管理システム」)や輪之内町岐阜県、市販パッケージを採用)などに限られる。

地場IT関連企業の育成も視野

 長崎県はパッケージ型食物アレルギー管理システムの採用も検討したが、県内21市町村が個別にシステムを保有・運用するより、県が標準システムを開発して市町村にクラウド型サービスを提供するほうが総合的にメリットが大きいと判断した。地場IT関連企業の育成も視野に入れている。

 同県はこれまでも同様の考え方で開発した電子申請システム、WEBアンケート・申込みシステム、公共施設予約システムを、クラウドサービス型で他府県の市町村にも提供している。今回の給食アレルギー管理システムもその一環となる。

http://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2015/09/1442275681.pdf http://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2015/04/1429494690.pdf