「派遣法改正」が生む、IT産業への歪んだ作用
多重下請け構造の中で懸念されるのは?
「専門26業務」も3年が上限に
現行の派遣法はソフトウエア開発や秘書、財務処理、書籍等の制作・編集などの特殊な技術や知識が必須となる「専門26業務」の派遣労働者を除いて、派遣期間を最長3年と定めてきた。今回の改正案が成立するとこの期間上限が事実上撤廃。一方、これまで期間の制限がなかった専門26業務は、最長3年と定められる。
安倍晋三首相は19日の衆院厚生労働委員会で、改正派遣法について「派遣を選ぶ人の待遇改善を進め、正社員を希望する人には支援する」という趣旨の発言をして、改正に理解を求めた。これについて野党や労働団体などから、「派遣就労の固定化が進む」「技術やノウハウの蓄積・継承を難しくする」「社会のセーフティネットを弱体化させる」「勤労若年層のモラルダウンや貧富の格差拡大を招く」などの批判が渦巻いている。法施行後に首相のいうような「改善」となるか、反対派の主張する「改悪」となるかは予断を許さない。
現行の派遣法は専門26業務について、派遣元企業が常時雇用(正社員)の技術者を派遣する場合は、厚生労働省への届出をしていれば事業を営めていた。これが特定労働者派遣だ。対して改正案が成立すると、特定労働者派遣は廃止。厚労省の許認可を得ることが必要で、登録型の技術者を派遣する形態である 「一般労働者派遣」に統合される。
これをIT業界に絞って検証してみたい。指定が解除される特定26業務のなかで、最大の就労者数を抱えているのはITサービス業だからだ。特定業務指定を外される受託型ITサービス事業者は、改正派遣法の施行から3年以内に「派遣業」の許認可を得なければならなくなる。許認可には純資産2000万円(うち1事業所当たり事業資金として1500万円の現預金)、事務所20㎡以上の要件が必須で、何ごともなければ申請後2~3カ月で許認可が下りる。