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PEZY詐欺疑惑は”藪の中” 「ベンチャーは民間が育てよ」の教訓(1)

まとめ記事として、どうぞ。

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 ITに軸足を置く者として、今年は「量子コンピュータが実用化に一歩近づいた」という、どちらかといえば明るい話題で終わると思っていた。その矢先、スーパーコンピュータのベンチャー、PEZY Computing(東京都千代田区)の社長・斉藤元章氏と元事業開発担当部長・鈴木大介氏が助成金詐欺容疑で東京地検特捜部に逮捕されたという。

 どういうことなのか、何があったのか、興味は尽きないのだが、斉藤・鈴木の両氏と面識はないし、相手が東京地検の特捜とあっては、まずこれ以上の情報は流れてこない。そうこうしているうちに、ベンチャー潰しの謀略説が流れてくるなど、IT関係者の関心は高い。

   

 上限5億円受領のために逆算か

 伝えられているところによると、逮捕容疑は次のようだ。

 助成金を拠出したのは、経済産業省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)。PEZY社は2013年、NEDOベンチャー企業向け技術革新支援助成事業(1案件当り上限は5億円)に「超広帯域Ultra Wide-IO 3次元積層メモリデバイスの実用化開発」を提案して採択され、まず約6800万円を受け取った。2014年2月、PEZY社は実際にかかった費用は7億7300万円だったとする実績報告書をNEDOに提出し、同年3月、5億円から約6800万円を差し引いた4億3100万円を受け取った。

 東京地検特捜部はPEZY社が助成金の上限5億円を受領できるよう虚偽の経費を報告し、4億3100万円を騙し取ったと見て、斉藤・鈴木両氏の逮捕に踏み切った——という。

 助成金は5億円を上限に、実経費の3分の2が支払われることになっていたから、申請した7億7300万円が「上限5億円を受領できるよう逆算した」と疑われてもやむを得ない。報道を鵜呑みするとPEZY社が詐取したのはNEDOが2014年3月に支払った4億3100万円全額となるのだが、注意しなければならないのは、正しくは虚偽申請で4億3100万円を受領したということだ。

 容疑者とされた2人の認否は明らかにされていないし、詐取した金額(ないし適正な請求額)も分からない。助成金が私服されたのか、関連する技術開発に援用されたのか、「現時点では」の条件付きだが、大相撲の日馬富士問題と同じように、真相は”藪の中“と言っていい。

 

設立直後からNEDO助成事業に採択

 PEZY社は2010年1月に設立されたベンチャー企業。社名は数字の単位を示すPeta(10の15乗/千兆)、Exa(10の18乗/百京:けい)、Zetta(10の21乗/十垓:がい)、Yotta(10の24乗/一𥝱:じょ)の頭文字にちなんでいる。

 同社は設立直後の2010年7月、早くもNEDOの「イノベーション実用化事業」に採択された。邪推だが、NEDOのハードルを越えるに当たって、NEDOに影響力を持つ誰かの導きがあったのかもしれない。助成テーマは「512コアプロセッサの開発」で、その成果として2012年4月に「PEZY-1」プロセッサが発表された。以後、NEDOはPEZY社に計5回・総額35億2400万円の助成金を交付している。NEDOはよほどPAZY社の技術、将来性を買っていたものと見える。

 その名を高めたのは2015年7月、独自の液体冷却技術を採用したスパコン「Suiren(睡蓮)」(高エネルギー加速器研究機構に設置)と「Shoubu(菖蒲)」(理化学研究所に設置)が、コンピュータの性能効率を示すGreen500のトップ3を独占したことだった。次いで今年10月、海洋研究開発機構横浜研究所に設置した液浸型スパコン「Gyoukou(暁光)」が、処理性能で国内1位、性能効率で世界1位になったと発表した。

 

【ご参考に】

gendai.ismedia.jp

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