IT記者会Report

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スタートしたABC協会 ベテラン実践者が結集 右脳人材でイノベーション

 IT利活用の目的はビジネスモデルの変革。それを企業内IS(Information System)部門や外部のITベンダーに任せておいていいのか——。元アサヒ飲料社長の本山和夫氏を会長に、ITにかかわる有識者や実践経験者らが結集して「アドバンスト・ビジネス創造協会」(Advanced Business Creation:ABC協会、事務局は東京・五反田)が発足した。企業経営者やスタッフ部門、現業部門を対象に、教育研修や調査研究、コンサルティングを通じて創意工夫や発想の転換を促していくという。

ビジネスの変革に照準

 配布されたプレスレリースのタイトルは「ITによるビジネス変革を加速/右脳型人材と投資戦略で新協 会」。本文から要点を引用すると次のようになる。

 《基本的な考え方》
 ITを利活用するには、旧来の価値観を転換する発想や工夫、クリティカルシンキングやデザインシンキングといった右脳型の思考が必要。
 ユーザーサイドの業務部門やスタッフ部門、経営者に照準を当てて、ビジネス変革やITの利活用を支援する活動が手薄。
 ABC協会は、ビジネスモデル変革、イノベーショングローバル化、及び新規サービス、新規ビジネスの創出、並びにプロジェクトの推進支援を通して、組織の競争力強化し、これにより我が国の経済・産業の発展に寄与する。
 《事業の概要》
 企業のビジネス部門(業務部門、スタッフ部門)を対象に、右脳型人材の研修、イノベーション・新規ビジネス・新規サービスの創出支援、ホワイトカラーの生産性向上、企業間におけるセカンドキャリアプログラム(人材の交流)、IT投資戦略・IT投資効果実現の支援、ITプロジェクトの支援(失敗プロジェクト根絶の支援)など
 《常設機能》
  「ビジネスコンサルティングセンター」「システムエンジニアリングセンター」「人材教育センター」および、時宜に応じたテーマでフォーラム、部会、セミナーなど
 ということになる。
まずは法人会員100社

 形通り記事風に書くと、会長は元アサヒ飲料社長で東京理科大学理事の本山和夫氏、副会長には元日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)副会長/エグゼクティブフェローの細川泰秀氏、専務理事には元住友電工情報システム社長の岩佐洋司氏、常務理事には元JUAS事務局長三木徹氏が就任した。理事には小田滋(DICプラスチック副社長)、菊川裕幸(JFEシステムズ相談役)、北上真一(JTBビジネスイノベーターズ常務)、幸重孝典(全日本空輸取締役)、監事には片倉正美(新日本有限責任監査法人シニアパートナー)の各氏が名を連ねている。
 会長の本山氏自ら経営者向けフォーラムを主宰するなど、役員全員が個々にテーマを持ってセミナーや研修会、調査研究を実施する。このほかセミナーの講師として、中谷英雄(PMアラインメント)、西健(Graduate School Japan)、諏訪良武(ワクコンサルティング)、福田修(テクノロジー・オブ・アジア)、後藤将夫(元新日鉄)、玉置彰宏(元東京情報大学)、河尻直己(元日本ユニシス)といった諸氏の名が挙がっている。
 具体的なテーマは次のようだ。
 ◇問題感知力、発想法を磨いて企業競争力を高める方法〜右脳型思考を中心とした各種発想法:中谷英雄氏
 ◇クリティカルシンキングによる「問題解決法:西健氏
 ◇タテの質問、ヨコの質問による問題解決の方法:すわ良武氏
 ◇要求定義の勘どころ:福田修氏
 ◇要求定義の進め方、正しい作り方:後藤将夫氏、玉置彰宏氏、川尻直己氏
 協会の活動は、初年度(来年3月末まで)は参加費無償とし、2016年度からは年会費とイベント参加費で運営する。当面の目標は100社で、年会費は正会員=ユーザー企業8万円、賛助会員=ITベンダー16万円となっている。ただ、ユーザー系情報子会社については「企業内IS部門と見るか、微妙」なため、来年3月末までに結論を出す。また中堅・中小企業、地方公共団体や教育機関などの扱い、「ITベンダー」の要件などは「走りながら考える」かたちとなる。

要求定義のガイドブック

 記者説明会で明らかになったことが2つある。
 1つはセミナーでも重きを置いている要求定義について、ABC協会として「実務経験に基づくガイドブック」の作成を進めているということ。これを教材に、事例や演習問題を交えて要求定義・要件定義セミナーを実施することになる。
 もう1つはシステム・エンジニアリングについて、情報処理推進機構IPA)と連携する可能性が出ていることだ。IPAのソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)はここにきて、調査研究の軸足をソフトウェア/システム単体の信頼性・安全性を踏まえ、複数のシステムが接続・連携する場合の信頼性・安全性および脆弱性の排除に移している。結果としての信頼性・安全性確保も重要だが、信頼性・安全性をどう設計するかが焦点だ。
 そのとき必要なのが実践経験に裏打ちされたノウハウ。着眼点、留意点、勘どころ、暗黙知ヒヤリハットなどと言われるものだ。ABC協会に結集するベテラン実践経験者の知恵が生きるに違いない。