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JIET北関東本部商談会 若手は”脱派遣”を模索するが

 日本情報技術取引所(JIET、会員約700社)というと、「IT業界大手の案件を地方の中小IT企業に紹介する」を建前に、要員の仲介を組織的に行っているのが実態ではないか――というのが筆者の印象。しかし昨年の総会で理事長が代ったのを機に、コンピュータソフトウェア協会(JPSA)との連携など、「偽装請負の温床」(2チャンネル)からの転換に舵を切ったかに見える。7月9日、さいたま市大宮で開かれた北関東本部主催の営業商談会(例会)に出席する機会を得た。“脱派遣”を模索する動きが垣間見えた。

■ちょっとだけ見直した、かも

 北関東本部の商談会が開かれたのは7月9日午後2時から、会場はJR大宮駅西口から徒歩3分のソニックシティ。戦国時代、敵の目から隠すため、この地に宝の鐘が埋められた。その精「鐘姫」の物語が残る鐘塚公園の敷地内にある。会場にやってきたのはざっと40人といったところ。
 講演のタイトルは「受託型ITサービス業の破壊的創造」で、前半は電子計算機の利用が始まってからのプログラミングやシステム構築の話、中盤は多重構造と派遣法改正案、後半は最近の流行り言葉「CPS」(Cyber-Phisical Systems)/「IoX」(Internet of X)時代の受託型ITサービス業の方向性について、あれやこれや雑談、余談を交えて90分、ともあれ話し終わった。
 15分の休憩ののち、「ではこれから商談会に入ります」の声で紹介された案件は後にも先にもたった1件。気抜け感が襲ってくる。参加者が淡々としていたのは意外だった。毎月のことなので「こんなときもあるよ」なのか、当初から分かっていたことなのか。
 ちょっとだけ見直したのは、17時半過ぎから10数人で行われた懇親会の場。そこで2人の30代男性(1人は中堅企業の渉外担当、1人は起業3年目の経営者)が、「現在は要員派遣が中心だが、どうすれば自立できるかを模索している」と語りかけてきたこと。「異業種の中小事業者とコンタクトしてみようかと考えている」「クラウドでアプリ・サービスを計画している」という。
 続いて筆者と同年代、やや年長の経営者が入れ替わりでやってくる。語るのは技術教育や進捗管理技能、積算手法あるいはアジャイル開発について等々、やはり「脱派遣」「脱人月」に結びつくテーマだ。思うところを語り合うのが全体の3割程度としても、さて、他の同業団体とて同じようなものではあるまいか。そういう経営者がいるということは、それはそれで体質転換のベースになる。

■ 真偽不明だが2チャンネル

 JIETが「日本情報技術提携振興会」の名で発足したのは1996年4月(98年1月現名称、2006年1月特定非営利活動法人)。来年は発足20周年だ。発足以来18年間にわたって理事長を務めてきた二上秀昭氏が名誉顧問に退き、酒井雅美氏に席を譲ったのは、それを見越した体制刷新だったのだろうか。
 それというのは、受託ソフトウェア開発業務を中心とする「多重取引問題の解消」を命題に掲げつつ、「商談会」という名で業界大手・中堅企業と地域中小企業の間でのIT技術者派遣と多重取引を増幅させている、と批判されているからだ。
 実際、スレッド型掲示板「2チャンネル」では名指しで「偽装請負の温床」と指摘され、エンジニア(仮にX氏とする)の体験談が載っている。むろん真偽は定かでないし、ごく一部の事例かもしれない。
 X氏は自社の営業担当者とS駅に集合。そこで取引先B社に担当が代わり、以下同様にB社からC社、C社からD社、D社からE社とバトンが渡されていく。喫茶店でX氏はE社の営業担当者が創作した経歴書を確認し、面接をいかに切り抜けるか指示を受ける。F社の面接は1時間ほどで終わり、X氏は翌週から「E社の社員」として就業することが決まる。『自社の名前は絶対に出さないでください』はお決まりのセリフ。
 これが事実ならX氏の業務契約はB社、C社、D社、E社を経てF社だから4重、もし作業現場のF社が3次請けならX氏が所属するA社は8次請け、F社が元請けでもA社は5次請けということになる。そのような取引が業界でまかり通っているのだろうか。

■ 素直に喜べない取引実績

 受託型ITサービス会社は程度の差こそあれ似たようなものであるに違いなく、つまりJIET会員企業だけのことではない。考えようによっては、相互監視の目が届く団体に加入しているだけマシかもしれない。仕事はあるが要員が足りない業界大手・中堅と、要員はいるが仕事がない中小・零細が面談して、案件に応じた技能・経験を持つエンジニアが見つかれば双方にメリットがある。多重取引の何層かはスキップできる――は「なるほど」ではある。
 だが平成27年度総会後のパーティ(6月23日、東京・新宿)でJIET理事から耳にしたのは、「昨年度、会員間で行われた取引の総額は150億円だった」という自慢げな言葉。「中堅どころのSIerの売上高に相当する」というのだが、ソフト製品の販売や共同受注というのならともかく、その中身がもし要員の手配や口利き、同業者間でのたらい回しというのでは、経産省や業界他団体は両手をあげて喜べない。
 一方、酒井理事長はこれまでと違う方向を志向している。ソフト製品の開発やサービスモデルを追究、7月6日に東京都内でCSAJと共同で「ビジネスマッチング研究会」を開催したのはその表れだ。1部上場のCIJで副社長を務めていた野木秀子氏を監事に迎えたのも、北関東本部が筆者のようなうるさ型の業界雀に講演を依頼し、商談会へのオブザーバー参加を認めたのもその流れなのに違いない。これまでがこれまで、とすれば、何をやっても「改革」にはなる。さて、どう変わっていくのだろうか。