IT記者会Report

IT/ICTのこと、アレヤコレヤ

6.18 JISA正副会長会見 記者との質疑応答

河野 え〜、これからですね、30分ほど、質疑応答といいますか、皆さんからの質問にお答えする形をとりたいと思います。質問がある方は挙手をお願いいたします。(日経コンピュータ・木村記者が挙手)どうぞ。

こっちはこっちで放っておいて

木村日経コンピュータ) 2点ありまして、改めてですけれども、横塚さんは東京海上日動システムズの方で、間違いなくお客さん側の方で、東京海上日動システムズさんは外販をやってらっしゃらない。そういう理解でいいかと思いますが、そのうえで横塚さんがこの業界の会長になられたその位置付け、その意味をですね、お聞かせいただきたいのが一つ。さらにですね、その関連なんですけど、たしかに皆さん、「ヤバイよ」と思ってんだけど、ただ今ものんびりされている方は横塚さんがいらっしゃった金融機関の皆さんで、非常に莫大な資産を抱えて、その保守で年間何十億円もばら撒いていらっしゃって、ここが動かないとですね、JISAの会員のかなりの方、まぁ行政(のシステム)もあるかと思いますが、皆さんのんびりされてるんじゃなかろうかと思うんですが、そのあたりですね、そういうユーザー側と……、この前、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)さんと一緒に共同のイベントをやりましたけれど、もう少しお客さん側と何とかしていこうよ、この状況を変えていこうよ、というようなことはお考えじゃないのか、と。以上2点をお願いします。
横塚 ありがとうございます。
まず1点目の私がユーザー側として会長になった意味というのは、私がなりたいと思ってなったわけじゃないので、よく分かりません。ただ別の風が吹くことが必要なのかな、という思いがあったのかな、と。協会の皆さんが新しい風を期待されているのかなと、どなたかに聞いたのではなくて、そう推測しております。
 2つ目の金融(業界のIT資産)の問題ですけれども、ご指摘の通りですが、銀行、証券、あるいは保険のビジネス側の役員の方々にいろいろヒアリングして回っておりますけれども、相当、危機感は高まってきております。銀行、証券ですとIoM(Internet of Money)といって、マネーそのものがデジタル化されて、バンキングは必要だがバンクは要らないという時代が来る。そういう危機感が強まっています。あるいは保険もこれから……、保険というのはビッグデータが保険会社側にあるということで成り立っているビジネスです。健康診断の結果で「あなたはガンのリスクがどうのこうの」というのがはっきりしてしまいますと、「万人が1人のために」が効かなくなりますので、保険のビジネスが今後どうなるか。あるいは自動車が自動的に動くようになったとき自動車保険はどうなるか、皆さんすべてデジタル化によって本業に相当大きなインパクトを受けるわけです。
 なので、仰る通り、勘定系といいますか業務処理系が、もう、そのぉ……、かなりCOBOLで占められていて、それでまだホスト系になっていて、あれどうすんのよ、なのですが、一方では世界がまた別の世界に乗り出している。ということでございますので、たぶん、こっちはそのまま放っておきながら、世界の競争の中でデジタル化に向けてどう取り組んでいくのか。あるいは保険業そのものが保険をサービスするというところから新たな何か本来的な新サービスを生み出していくのか。そういうことをお考えになられていくのではないか。これはこれ、こっちはこっちで新たな世界をサポートする、そういうことが必要になってくる。こっち(旧来のIT資産)をどうするかは、なかなか難問なんですけど、だからといってこっちばっかりにとらわれていたのでは、世界が他に移っていくときに、そのお手伝いもしていかないといけないと。
石にかじりついてでも

浅川(日経コンピュータ) 2点うかがいたいんですけど、1点はマイナンバーのことですが、昨年の段階でマイナンバー関連システムの開発がかなり遅れていて、スケジュールが逼迫しているということで、対策を打つべきという提言を出されたわけですが、現状はどんな感じなんでしょうか。

横塚 マイナンバーにつきましては、自治体の取り組み、政府の取り組みとは別に、民間企業としてすべての人事システム、給与システム、厚生システムなど、当局に提出する資料にマイナンバーを付す修正が必要になってくるんですけれども、自治体あるいは企業の取り組みは、相当遅れていると思います。その原因はいくつかあるんですが、最大の要因は、政府がマイナンバーによってどういう帳票を、どういうふうに番号を振ってどういうふうに政府の仕事、民間の仕事を効率化するのかということを、比較検討する……、結果、財務省なり国税庁なり厚生労働省なりがその詳細を省令として出すということになっているんですが、それが非常に遅れた。私の認識では、厚労省はまだ出してない。そういう中でシステムを作れというのは、これはもう無理な話で、もう少しその……、政府自体がシステムを作ることを前提に要件を決めていかないと、省令が出た瞬間にサービス・インというわけにはいかない。
 しかしメディアの論調は、なんかエンジニアが足りないからシステム開発が遅れているように書きかたもされるんで、それは非常に不愉快。もともとが遅れているわけだから。それに対してわれわれも、遅れが出るのは困るよ、困るよと申し上げてきたんですけど、結果としてこうなってしまっているんで、われわれの努力が足りなかったと言われればそれまでなんですけど、まぁ一事が万事こんな感じになっているので、たぶん東京オリンピックのシステムも、私、あまり詳しく存じあげませんけれど、似たような感じで遅れて行きますと、屋根のない国立競技場のようなことがシステムの中でも起こるんじゃないか、非常に心配です。
 デジタルビジネスも全く同じで、ビジネス側がこうしたい、何をやりたいということをきっちり決める能力を持たないと、すべてが始まらない。ですから、マイナンバーをトリガーにして、こういった制度、仕組みをどういうふうにするか、ビジネス側のスタートがないと、ITに任せればいい、というんじゃなくて、ビジエス側のデザインがないとどうしようもないわけです。そのあたりのことを改めて発信していかなければならないのかな、とは思うんですが、ただ、いずれにせよマイナンバーは差し迫ってますんで、われわれは何が何でも石にかじりついてでもシステムを作らないといけない。そのためにはわれわれの産業が必死に頑張るしかない。残念ながら、きっとまた、徹夜に継ぐ徹夜がどこかで行われるんだろうと思います。しわ寄せがわれわれのところに来るのは気に入らないんですけど、でもわれわれが作るしかないので……という状況かと思ってます。
セキュリティの砦を築く

浅川 もう1点。日本年金機構のいわゆる標的型攻撃に関連してですが、年金機構は氷山の一角で、実際はかなりの数の企業が攻撃されているという話もあります。一義的にはユーザー企業の責任であるとして、ITサービスの産業的な責任っていうのは……。

横塚 非常にあのぉ、情報が漏れるっていうのは悩ましいことですし、これからさらにIoTということでデジタルビジネスの中でハッキングが起こると……、それこそね、自動的にクルマが動いているところをハッキングされるととんでもないことになるわけで、サイバーアタックに対する護りみたいなものをどうするかというのは全世界的に大きな課題ですよね。そういう点で日本はかなり安全神話で、みんな遅れているという感じで、改めてキャッチアップしなけりゃならないんですが、これもITのエンジニアが頑張れ、という話じゃなくて、それぞれの企業がどのようにして情報を守っていくかということなんで……。メールが来たら開けちゃうに決まってるんで、そのあとどうすればいいかっていうのをやっていかないといけないわけです。
 ただ大企業ですと、そういうことを考えるIT部門があるんでいいんですが、準大手から中堅以下の企業では、あまりIT部門が整っていないんで、ITの専門家であるわれわれがきちっと企業に対してアドバイスをしていく、そういう体制を整えていかなければならないと思いますし、もっと言えば日本政府として、企業のセキュリティについて政府としてできることを考えるフェーズに来ているのではないかと思います。1社1社が一所懸命勉強して守れる時代じゃないんです。ですから例えば、日本政府として、中小企業がこの砦の中に入ってその中でやり取りをしていれば、とりあえず守られるというようなサービスを提供するとか、ですね。1社1社で全体としてセキュリティに精通したエンジニアを持つなんて、もう無理なんで、その体制が、われわれ情報サービス産業がセキュリティ人材を相当増やさなければならないし、いろんな課題があると思いますので、われわれとしてもどんな体制を取っていくのか、協会で議論していこうと思っています。
杉田(ITLeaders) 先ほど会長が仰ったようにIoTとかAI、ロボットといったビッグウェーブが来つつあるな、とすごく肌で感じるんですが、室井さんが仰った「山が動き始めている」ということですけれど、インダストリー4.0について感想を企業のトップに聞くと、「そんなのは我が社ではとっくにやってるよ」「恐れるに足りないよ」と、そう言う経営者が多いんですけど、室井さんの感想はいかがですか。
マイナンバー 遅れの要因

室井 あの、いろんな方が確かにおられるのは事実で、そもそも非常に多いのは、必ずしもITに興味がなくて、周りがあれこれ言ってもあまり反応なさらない方もおられます。ですが一方、製造業の経営者に多いのですが、米欧にしょっちゅうおいでになって傘下の会社が何をやっているのか、あれこれご覧になってこりゃ大変だ、と。東京に帰ってきて担当役員に聞くとあまり具体的な答えが返ってこない。こりゃ困った、何とかしないと、という方が少なくない。
 事実として、IT企画ディビジョンとITコンサルティング・ディビジョンの、システムの革新的なプロジェクトをやろう、というテーマが最近たいへん増えている。やはりまだ先端的なことをやろうという企業が中心であることは事実ですけれど。

(しばらく記者の挙手なし)

河野 他にございませんか。

日本経済新聞 先ほどのマイナンバーのシステム開発についてですが、開発が遅れて困っている、というような声は会員企業からあがってませんか。(※氏名の発音不明瞭のため不記載)

横塚 JISA(の事務局)に直接は……、あまり聞いてないですけどね。

日本経済新聞 もう1つ、あの……、年金の問題に関連して、マイナンバー自体を見直したほうがいいんじゃないか、というような声も一部に出てきているようなんですが。そういうような意見に対して、横塚さんはどのような感想をお持ちでしょうか。

横塚 マイナンバーと年金の個人情報漏洩は全く別の話なんで……。マイナンバーは日本国の行政、民間企業の仕事をいかに効率化するか、デジタル化するか、そのインフラなんで、その整備はきっちり進めていく必要があります。番号もないのにデジタル化なんて、とても無理なんで。それは絶対にやるべきだ。ただ一方で、情報が漏れるということが問題なのは確かなので、これを契機に個人情報を扱う自治体、政府、あるいは民間企業がしっかりやっていく、ということだと思うんですね。

日本経済新聞 いろんな政治家とか、そういう反対の声が上がってくると、見直しというような話になりかねない。JISAとして何か情報発信されるとか、そういう計画とかはあるんですか。

横塚 ないですね。情報サービス産業から何か言うと、火に油を注ぐというか、やや国民の皆さんが感情的になっている感じがするので、少し沈静化するのを待っている、というところ。

日本経済新聞 現状、マイナンバーを導入しなければ安全かというとそうではなくて、バラバラに管理されている番号がマイナンバーできちっと体系的に管理されるようになるから安全になるんだ、という考え方もあるわけですね。そういう意見に対してはどうですか。

横塚 ええ、そういうことを、マイナンバーを導入するとこういうメリットがあるんだ、番号管理がキチッとするんだ、ということを、もっともっと政府機関がPRしていくことが絶対必要だと思うんです。最近、電車に乗るとマイナンバーのPRが出ていたりするようになってきましたけど、マイナンバーと情報漏洩は別の話なんだということをもっとPRしたらいいと私は思いますけども。

(しばらく記者の挙手なし)
スターを作る意味

日高(週刊BCN) これは原副会長にうかがったほうがよろしいんでしょうか、先ほどのスターを作ろうという話、確かにIT企業がいわゆるブラックというか3Kというか、協会の話じゃないのかもしれませんが、そういう中でスターを生み出していくというのが、例えば若手であの……、すごくイノベーティブなスタートアップ企業を見出してくるのか、組織の中で埋もれているけれどすごい優秀な人材を見つけてくるのか、一方でなかなかライバル企業に自社の中の優秀な人材は明かしたくないということもあるんじゃないか、と。どういうイメージでやられようと考えているのか、なんですが。

原 両方ですよね。とんがった人材で起業するような人、そういう方がこの業界から出るのはたいへん結構なことだと思うんですよね。ただ、やっぱり事業というのはそんなにやさしくないんで、成功するとは限りませんけど、野心にあふれる若者がこの業界から出て欲しいと思ってます。40年若ければ私がやっているんですけど。
 あと、企業の中にもそういう社員がいます。我が社にはほんとにいますしね。技術者っていうのは謙虚なんですね。謙虚すぎる。もっと図々しくなっていいと思いますが、だからそのへんは経営側のスタンスだと思うんですけど、そういう人材がフォーカスされて脚光を浴びて、ライバル会社に引き抜かれるのを恐れるような経営者であれば、なかなか難しいかもしれませんけど、やはり全体のことを考えればですね、そういうお客様のお役に立っている……。サービスとは何なのか、ですよ。
 やはりわれわれITサービス業はサービス業なんだと私は思ってまして、情報サービス産業協会ですから。そういうサービスマインドがまだまだ弱いのかな、と。技術だとかが脚光を浴びちゃいますけれど、人が主役の産業です。やっぱり人がワクワクして、お客様から評価されて……。何よりもマーケットから評価されることが大きいと思うんですね。プライスも上がっていかなきゃいけませんし、そのためには価値を上げる努力を企業も個人もしないといけない。そういうのがいまでもたぶん潜在的にあるとは思うんですけど、なかなか埋もれてるんで、そこに光を当てて。日本の先輩産業なんか見ますと、日本の技術はほんとに素晴らしいし、食品なんか世界遺産になるくらいですから、システムでもソフトウェアでも実現できるはずだと。そのためにはブランド。なかなか難しいんですが、産業のブランド、企業のブランド、個人のブランド。それに挑戦したいな、と考えています。

横塚 今回、JISAアワードで2つのシステムを表彰したんですね。総会の時に表彰式をやりました。1つはNEC……。

河野 NECソリューションイノベータ。

横塚 という会社さんの顔認証システム(「性別・年齢層自動推定システム「FieldAnalyst」)、これは世界に冠たるもので、年齢から性別から認識できる。マーケティングにも使えるし、もちろん犯罪防止にも使える。もう1つは東芝ソリューションの電車のダイヤグラム・システム(輸送計画 ICT ソリューション「SaaSTrueLine」)。これはもう、日本独特のダイヤグラムで、選考委員の夏野さん(夏野剛氏:慶応大学大学院政策・メディア研究科 特別招聘教授)なんか、「これに100億円ぐらい注ぎ込めば世界を制覇できる」なんて大絶賛してまして。その割にはそれぞれの会社がそれぞれの部門でやっているので、それ以上にはいかない。持ってるものは素晴らしいんです。

原 マーケティングとセールスが、この業界、まだまだ弱いですよね。そっちを経営者が本気になってやっていかないと。

北川(日経コンピュータ) この業界はお客様が要求仕様を作ってくれれば、その通りのシステムをきちっと作る。そういう建前なんですけど、それだけだと将来はないんでね。このまえ、アクセンチュアファーストリテイリングが一緒にビジネスを作っていこうという発表をしてますよね。業界の会社とお客さんが共同で、っていうのは、すごく重要な仕組みだと思うんですね。あれは大企業だからできるのかもしれないけれど、中堅・中小にも、そういう意思を持っている経営者がたくさんいると思うんだよね。それをJISA会員企業が見つけてね、そりゃ相応のリスクを負わなきゃいけないんですけどね、そのリスクを分けあってビジネスを作っていくという取り組みをJISAがやらないと、ただの下請け集団で終わってしまいますよね。その辺は会長、どうなんですか。

横塚 そうですね。すごくいいお話だと思うんです。いまデジタルビジネス革命というものが始まって、この状況は仰る通りソフトウェアで新しいビジネスをどう作っていくか、やりやすい環境が整っている。どんなスキームでどんな盛り付けでユーザー側とマッチングして、新しいビジネス、新しい雇用をわれわれとして作っていくというのは、1つの使命だと思います。その発想はぜひいただいて検討したいと思います。
潤っているのは業界の一部

高橋(経済産業新報) 横塚さんが仰ってたマイナンバーで徹夜の連続が、という話。先日、ある会合でソフト会社の経営者が、「いま人集めでたいへんだ、すごく忙しい」と。人集めに走り回るけれど、教育という話が出てこない。原さんが仰ってたブランド化の観点から、教育投資とか研究投資とか、ランク付けして発表しちゃったらいいんじゃないですか。そういうことをやって、この会社はちゃんと人を育ててるんだ、ということが分かる。そういう発想があってもいいんじゃないでしょうか。

原 潤っているのはこの業界のごく一部、上のほうの会社だけです。全国にね、参考までに(ITサービス事業者は)2万5千社ぐらいありますけれど、ほとんどが独立系の中小企業です。そういうところがいわゆる下請け依存体質で甘んじてたら、少しも変わらない。自分でお客さんを創造する、といいますかね、自分の力で立つ、のが企業というものだろうと。JISAとして、というより個々の企業として、なんですけど、そういう仕掛けを強烈にやっていく、啓蒙していくことは必要で、やっぱり金を使う(投資をする、の意)。安部総理が経団連の会合で「投資」という言葉を5回も使ってたんですけど、儲ける前に金を使うのは次に向けての準備ですから。


横塚 その意味では利益率を上げないとね、ということでグルグル回っちゃうんですけどね。せっかく仕事がある今がチャンスなんですね。仕事を選びながら利益率をどうやって上げていくか、議論が始まってるんですが……。

日経コンピュータ・木村記者が挙手)

木村 あの……。

河野 どうぞ。

木村 今の話の関連で、端的にお尋ねしますけれど、なぜですね、利益率が下がり続けるんですか。業界が潤うとき、単価……、人月という言い方はダメなんですよね。いけないんですが、あえて使わせていただくと、なぜ戻らなくて延々下がり続けるのか、その原因は何なのか。

原 やっぱり仕事が欲しいんで……。

木村 でも仕事は潤ってるんですよね。

原 量が増えているだけじゃないですか。全体が潤っているわけじゃないですよね。地方のIT企業なんか、苦戦しているところは少なくないし。そこは企業の経営者のマインドだと思うんですよね。やっぱり安売りしてでも仕事は欲しいという……。安売りはしないで、自分でユーザーを開拓する。本来の企業というのはそうだと思いますけどね。

木村 地方の人月単価を見ると、半年ぐらい前だと安い場合、40万円台なんていうケースもある。それでいうと技術者の給料は20万円ぐらいじゃないか。これで魅力ある産業って言ったって、もうチャンチャラおかしいという話になると思うんですけど。業界全体というか、JISAの皆さんで一致団結して単価下げちゃうような……。それをなんとかしようということにならないんですか。個々のブランドといってもですね、そのあたりで何かないのかって、いつも思うんですけど。

原 そんな特効薬があったら教えていただきたいくらいでね。結局、地道な経営努力でね。そのためには他の会社にない優位性というか、特殊性で差別化を……。JISA全体で単価を下げているというのはないと、私は思いますけどね。そういうふうに思われているとすれば……。

木村 いや、あれだけ競争してね、低い価格をどんどん出していくようじゃぁ。実際、いちばん付加価値が高いはずのソリューション提案のところはタダ同然ですよね。ただ単にご提案してお金もいただかないで、人月で安いいところでですね、しかも値段を叩き合っているんじゃぁ先がないんで、その辺どうするんだ、って。

河野 それは個々の企業でやらないと。協会で何か値段を決める、っちゅうのは全然ダメですから。JISAが何かやるとなったら、そのとたんにおかしなことになってしまうんで。

横塚 たしか佃さんに教えていただいたんですけども、建築業界を見ると、最低価格のガイドラインがあって、政府調達の目安になっていて、それ以下には下がらないと。これは勉強してもいいのかなと思いますけれど。

河野 建築業法という法律がありましてですね、家を建てるとき安全性を確保せないけないんで、法律で最低価格が決まっている。

木村 システムも同じでしょう。信頼性やセキュリティが求められているんだから。

河野 セキュリティの観点からそういうこともあるとは、最近思うんですけれど、一般のね、SIerの仕事にそれを適用するのは無理。

千葉(フリーランス/日本不動産ジャーナリスト会議) 建築業法だけじゃなくて、標準設計単価というのが決まっているんですね。

島田 価格についてはわれわれの努力も不足しているんですけど、長期的な取引が続いていると、変な話ですが、市況が悪くなると値下げ圧力が働いて泣かされるんですが、市況が良くなったからといってグッと上げられるかというとそうはいかない。ベンダー側がお客様にそこまで踏み込めなかったのは事実です。ずぅっと長く20年来、30年来、同一の企業の同じアプリケーションを、コンペはあるものの事実上随意契約でやってきて、他社が入り込む余地はないんだけれど、そこに随意契約がダメになって、随契型コンペみたいになって、値段が上げにくくなったのは事実なんです。もう一つ、多段階構造が大きな要因になっていて、多段階構造をぶっ壊せばいくつかの問題は解決する。
 

どこにフォーカスするのか

(IT記者会) 今ね、新しい環境にシフトしつつある。ソフト開発の方法も、ウォーターフォールからアジャイルとか、派生開発もありますよね。そういう中でこれまでのやり方や制度、例えばこれまでのISMSでいいのかという議論もあるし、情報処理促進法の見直しということも産構審の答申にしっかり書かれているわけですね。あるいは丸投げ下請け禁止のガイドラインというのも出てくるわけですね。こういう業界全体の話と、もう1つJISAとして、例えば500社だか600社だか知らんけど、会員のどこにフォーカスしていくのか、ですよ。実際、JISA会員のトップは従業員7万人、一方には100人という会社もいる。そのどのあたりにフォーカスしていくのか、それによって政策変わるでしょう。ところがJISAはそれが見えんのですよ。
 で、いつもね、「やってるやってる」て言うのよ。もうさっきのNECなんちゃらとか東芝なんちゃらはね、そりゃぁやれますよ。放っといたってやりますよ。そういう企業は放っときゃいいんだよ。そういうことができない企業をどうするか、っていう話なんだけど、会長、副会長の話聞いてて、どこにフォーカスしているのか全然伝わってこない。われわれはできます、って言ってるのかもしれないけれど、できないっていう企業が仮にいるんなら、それに対してJISAは何をするの?
 できない会社はできないんだから、置いてきぼりにするっていうんなら、それでいい。先行できる会社だけ残りましょう、SIer協会になりましょう、っていうんなら、それはそれでいい。でもそうじゃないんだったら、じゃぁどうするんだ、ってことを言わないと。それと同時に、業界全体の多重下請け構造の問題とかはやはりJISAが言わないとね。その問題が整理できてないんじゃないか。だからね、こういうの(事業計画書)を見るとね、きれいなこと書いてあるんだけど、絵空事に見えちゃうんだな。
 でね、3Kだなんだかんだというけれど、統計を取ってみれば従業員数は増えている。給与も増えている。ま、平均年齢が上がっているんで、相対的に下がっているかもしれないけれど。でも従業員は増えてるし、給与も上がっている。なんでそれを言わないの。なんで3Kなんて自虐的なこと言っちゃうの。嫌だったら来ないよ、人。でも来てるんだよ。ただしいい仕事をしているかどうかは、分からないよ。
それから利益率を上げなきゃいけないという話だけど、(受託系ITサービス業の2014年度)利益率は上がってます。平均で7%切るところまで来ている。平均の営業利益率は6.8%ぐらいです(厳密には6.87%)。なおかつ売上高が100億円から500億円ぐらいは、営業利益率が8%を上回ってます。そういうリアルな数字をちゃんとつかんでますか? JISA会員の平均営業利益率はナンボですか。それは業界平均に対して高いんですか低いんですか。そこからスタートですよ。今日の話の中で、そういう数字に基づく現状認識もない。それでこんな漠然とした話をしてどうすんの? 
 時代の大きな転機なんでしょう? そのときに現状認識がその程度のことで何ができるの。これは質問というよりクレームだけどさ。これで次回、わたしを記者会見から追い出したら、それはそれでいいよ(笑)。これまでも何回かあったんだから(笑)。だけど、これがJISAかよ、って話だよ。声を大にして言うよ。これじゃ記者だって突っ込めないよ。何に突っ込んでいいか、分からないもん。JISAに魅力を取り戻すには、ちゃんとフォーカスを定めて、「ああ、オレたちのためにやってくれているんだ」という共感があれば、参加してくる企業もあると思うんですよ。
 いや、その通りで、業界の底上げが……。
 そうじゃないでしょう。「底上げ」なんて、上から目線の言葉を使っちゃダメですよ。自身の問題なんだから。
 ですからね、JISAの中にもいろいろいいものがあるんだけれど、十分に発信されていないわけですよ。それをオープンな形で利用しやすくして、ですね。現にWeb会員も増えてますし。
佃 この(事業計画書)の中にね、月間ページビュー10万件を目指す、みたいなことが書いてあるけれど、うち(IT記者会)のホームページだって、私ひとりで運営しているけれど、それでも1か月12万件あるんですよ。JISAは会員が約600社だって言うんなら、月間10万件なんてもんじゃないでしょう。面白い情報が出てないからですよ。そう思いません? といってIT記者会のコンテンツに魅力があるかどうかは分からないよ。少なくともJISAより多いってことだよ。
横塚 いまオープンな協会にするための検討が始まったところなんです。ちょっと待ってください。
 いつまで待てばいいんですか?
横塚 半年ぐらい待ってください。
 半年、ね。じゃ、秋にもう一回、記者会見やりましょう。
横塚 そう怒らないでください。
 怒っているわけじゃないですよ。ただいつもこんな感じで、モヤモヤッとしていて、心に突き刺さるものがないんですよ。
原 次回はそんなことありませんよ。スタートしたばっかりなんですから。
 JISAはスタートしたばっかりじゃないですよ。
荒木(情報産業新聞) 話が本題から外れそうなんですが、佃さんの指摘はJISAの組織の話にかかわると思うんですね。先日のパーティーのときも、他団体との連携も、というようなことを会長が仰ってたんで、そういう連携関係をですね、CSAJ(コンピュータソフトウェア協会)が中心になってITの経団連みたいなものを目指す動きもあるようなんですが、その点はどうなんでしょうか。
横塚 あの〜、私は最初に連携ありき、ではないと思うんですね。ITにかかわる団体としてやりたいことがあって、連携したほうがいい場合は組めばいいと思ってるんですね。先ほど木村さんが話題にされたJUASとの連携プロジェクト、5月に立ち上げたんですけど、ビジネスアナリシスという仕事をちゃんと整理して、エンジニアがその能力を持つということが大事、ということでJUASと合意できたんで始めたんですね。そういうことでは、例えばJASA(組込みシステム技術協会)とわれわれが一緒になって、IoTで共同プロジェクトを組む、なんてことはあり得るでしょうね。業界団体がいっぱいあるから連合しよう、一つになろう、というのはどうかと思います。 
北川 それに関連するんですけどね、会社の規模に大・中・小があって、何年か前に規模で分けよう、っていう話があったと聞いてるんだけど、あれはもう消えたの?
河野 え〜、確かに北川さんのいうような話はありました。でも今はもう消えてます。あの話は結局、まとまらなかった。
横塚 まぁあんまり小さなところにフォーカスを当てて、フォーカスしまくって小さな団体がいっぱいできても、小さな野党と同じで何もできないということになりますんでね。
河野 他にございませんか。時間も過ぎていますんでそろそろ終わりたいと思います。ありがとうございました。