IT記者会Report

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6.18 JISA正副会長会見で私が声を荒げたわけ

 情報サービス産業協会(JISA)は6月18日、午後4時から東京・八重洲の事務局会議室で正副会長会見を行った。その席で筆者は思わず声を荒げてJISAを批判したのだが、このままだと「キレやすい」の風評が独り歩きしかねない。当日のやり取りは会見再録「JISAは何を目指すのか」を読んでいただくとして、なぜ私は声を荒げたのか。

どこにフォーカスするのか

 録音によると、筆者が発言したのは予定の終了時刻2分半前。黙ってICレコーザーのスイッチを切ったり配布資料をバッグにしまったりしていれば大過なく終了したのだが、ここで言っておかなけりゃいつ言うんだ、という思いがあった。というのは横塚裕志氏にとってJISA会長として初の公式会見だからだ。甘々の馴れ合いで終わるわけにはいかない。
 筆者が指摘したのは次の6点。
 (1)JISA会員約600社のどこに焦点を当てて運営していくのか。
 (2)JISA会員約600社はどのような位置にあるのかを把握すべき。
 (3)そのうえで会員約600社の課題は何なのかを明確にすべき。
 (4)かつ受託型ITサービス業全体の課題の解決にも取り組むべき。
 (5)正副会長のコメントを聞いているとすべてが他人事のように思えてくる。
 (6)より実態に即した指針を示すことはできないのか。
 特段に乱暴で破壊的な内容ではない、というか建設的な意見だと思うのだが、これがなかなか受け入れてもらえない。ポンポンとたたみかけてくるモノ言いがきつい、怒られているような感じがする云々は、ぼんやりしたコメントに終始していた会見者側の責任回避に過ぎない。はじめから業界の業況を数字で示し、JISAの立ち位置を明らかにし、経済環境や技術環境の現状認識を踏まえて方向性を語っていれば、もっとまともな会見になっていた。それだけの話である。しっかり釘を刺しておいたので、かつて何度かあったように筆者を会見から排除することはあるまいけれど。

JISA会員の収益力は?

 筆者が把握している受託系ITサービス業の2015年3月末決算企業128社の業績は、売上高が前年同期比+4.6%の6兆5620億98百万円(就業者1人当りは+3.8%)、営業利益は+11.3%の4508億24百万円(同+10.5%)、純利益は+6.7%の2499億68百万円(同+5.9%)。営業利益立は6.87%、純利益率は3.81%で、業界各社が「当面の目標」としていた水準を達成している。
 ちなみに正規雇用数は+0.8%、非正規雇用数は-3.8%、全就業数は-0.2%だが、正規雇用者比率は78.9%に回復しており、雇用の健全化は進んでいる。筆者が「3Kだのと自虐的なことでなく、雇用吸収力がある産業だとなぜ言わないのか」と指摘したのはそれ故だ。
 むろんこの数字はごく一部のものだし、経済産業省の特定サービス産業実態調査、同動態統計は営業利益率や純利益率が出てこない。そうであればこそ、「わが国情報サービス産業の売上高の7割を占める」と胸を張るJISA会員約600社の業績分析が重要になってくる。600社であれば就業者規模別、売上高規模別、業態別、都市型・地方型別、取引ポジション別、資本系列別といった分析が可能になる。JISAはそのようなデータを提供すべきだろう。
 あとで聞いた話では、JISA会員企業の平均営業利益率は5.8%前後という。筆者が把握している数値を1ポイントほど下回っている。それは規模によるのか取引ポジションによるのか、地域性によるのか、資本系列によるのか、業態によるのか等、分析する価値はある。それが「目指すべき方向」の裏付けとなるだろう。

IoT時代に徹夜の連続とは

 正副会長のコメントで可笑しかった(内心密かに笑っちゃった)のは、冒頭で「IoT(Internet of Things)、IoM(Internet of Money)、CPS(Cyber-Physical Systems)の時代が目前に迫っている」としながら、マイナンバー対応のシステム改造や金融機関のシステム統合で「現場では徹夜の連続ということになるんでしょうなぁ」と苦笑混じり、自嘲混じりの言葉が出たことだった。筆者が指摘したいのは、どちらに軸足を置くのか定まっていない、ということではなく、新しい時代を切り開くのはJISAに所属している企業ではない、ということだ。
 徹夜の連続でも、派遣先の現場では技術者が息を詰めて頑張っている。その技術者たちを徹夜の連続から救い出す。それほどに頑張っている技術者に、苦労に見合う報酬と休養を与える。次の仕事に備えて新しい技術や能力を習得する時間を作る。笑顔が満ちる業界にする。それがJISAの仕事ではないか。そのために建築業の安全基準と積算単価方式のようなものを提唱していきたい、というのなら、「分かってるじゃないか」と評価できる。
 ウォーターフォール型のアプリケーションは、新規開発がなくなって9割が運用保守+改造=派生開発にシフトする。ドキュメントが整っていないスパゲティ・プログラムを保守・改造するには、エンジニアリング技法が欠かせない。一方、新規開発は超高速手法とアジャイル型が主流になる。ただし要求定義プロセスは形式手法ないしVDMが必須だろう――というようなことを、正副会長5人のうちの誰かが語っていたら、やはり「分かってるじゃないか」ということになる。筆者が言いたかったのはそのようなことだ。