IT記者会Report

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日本でBIMが普及しないのはなぜか オートデスク記者会見で意見交換セッション

 4月8日にオートデスクが行った記者会見が興味深い内容でした。
 世界的に建設・土木分野では3次元設計のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が急速に普及しているなかで、日本ではなかなか普及が進んでいません。オートデスクの日本法人にも現状に対する焦りがあるのでしょう。記者会見のあとに、なぜ日本ではBIMが普及しないのかという問題について記者に意見を求めるセッションがありました。長年記者をしていますが、公式の場でこのような意見交換を行うのはかなり珍しいでしょう。
 日本では、従来の手書きの紙の図面から、その延長線上にある二次元CADへの移行はスムーズに進みましたが、建築・土木のものづくり文化を大きく変革するBIMはなかなか受け入れようとしない。過去の成功体験から抜け出せずに、最近は歴史や伝統・文化に固執する傾向がますます強まっているように思えます。

 4月10日に三井不動産が開発を進めている柏の葉キャンパスシティで、ベンチャー企業を育てるための拠点を開設する記者会見があり、ベンチャー育成に取り組む元IBM、元コンパック社長の村井勝さんに15年振りぐらいに会いました。2011年に出版した著書『会社の「強み」が企業を壊すとき』をいただきました。この本のタイトルを見た時に、会社、企業の部分を「日本」に置き換えられるのではないかと思ったのですが、いかがでしょう。
 ゼネコンの体質は受け身なので、発注者がBIMの利活用を求めれば、普及するだろうと思います。ただ、発注者の多くは基本的にゼネコンに丸投げなのでBIMにはほとんど関心はないでしょう。ゼネコンもBIMに投資して建設コストを下げて競争力を高めるよりも、従来のやり方で下請け叩きをした方が手っ取り早いので、BIMに投資するインセンティブが働かないのだろうと思います。

 私が以前から親しくしている前田建設の子会社のJMでは、中小ゼネコン・工務店向けにBIMを使った計画・設計支援サービスを始めます。設計データを活用してメンテナンスサービスにも対応。建築の計画・設計、メンテナンスもアウトソーシングできる環境が生まれます。
 大手ハウスメーカーが登場した時、いずれ中小工務店は駆逐されると思われていましたが、80年代にCADを活用したプレカットサービスが登場。材料加工をアウトソーシングしてコストを下げたハウスビルダーが生まれ、大手ハウスメーカーが低コスト住宅からの撤退を余儀なくされました。

 果たしてJMが提供するサービスが、建築業界に普及していくのかどうかは判りません。計画・設計、さらにメンテまで外注化したら、ゼネコン・工務店は単なる組み立て屋さんになってしまいそうですし…。
 ちなみにセブン・イレブンは今年度1600店舗の新規出店を計画していますが、うち1200店舗をJMに設計させることにしています。JMを育ててきたのは、セブン・イレブンの鈴木会長。そうした先進的な発注者がいれば、ITの利活用も一気に進みますね。