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シンクラでUSBの利活用可能に

シンクラでUSBの利活用可能に


 キーウェアソリューションズ(三田昌弘社長、東京都世田谷区、東証2部)は2日、米ヒューレット・パッカード(HP)社のシンクライアントを採用したシステムでUSBインタフェースを備えたメモリーや周辺機器を利用できるようにする仮想デバイスコントロールシステム「HTVUCS」(HTバックス)を開発、日本HPと共同で販売を始めると発表した。官公庁や教育機関、医療機関などパブリックセクターや、情報サービス業、通信サービス業、金融・証券業など幅広い分を対象に、パートナー4社と合わせ初年度1万本、金額にして2億円相当の販売を見込んでいる。
 シンクライアントは機器本体に記憶装置を装備していない。このため、情報漏洩をはじめとする情報セキュリティ対策の観点から、特に個人情報の保護や情報の秘匿が求められる公共機関や金融機関での採用が進んでいる。また端末の価格が安価なことから、パソコンをのリプレース時にSBC(Server Based Computing)やVDI(Virtual Desctop Infrastructure)に移行するケースもある。ところが通常のSBC/VDIシステムではUSB端末の接続利用を許可しないケースが多いため、利用者にとって使い勝手が悪くなったり生産性が落ちるといった弊害が指摘されている。
 HTバックスをサーバーとシンクライアントにインストールしたうえで、システムに接続するシンクライアントシンクライアントを利用するユーザー、システムへの接続を許可するUSB端末のそれぞれを登録する。それによりシンクライアントを採用したSBC/VDIでのUSB端末の利用が可能になる。サーバーの性能によるが、接続可能な端末台数は最大約1,000台。
 同社によると、公的関係のシステムでは、2年後に本格導入されるマイナンバー制度に対応するため、既存システムのセキュリティならびにガバナンスの強化が求められることが想定される。またマイナンバーを含む特定個人情報を取り扱う民間企業及び団体にも波及すると見られ、潜在的なマーケットは大きいという。
 クライアント版、サーバー版ともオープン価格だが、「システムコンサルティングから設計・構築および運用・保守まで受託する場合の標準的な目安は、1案件当たり1,500万円から2,000万円、初年度は2億円程度の売り上げが見込まれる」(サービス企画販売本部長の神戸俊樹氏)という。
 併せて発表された販売パートナーは、大崎コンピュータエンヂニアリング、CTCエスピー、ジャパンシステム、TISの4社。キーウェアによると、技術者向け教育プログラムを用意することで、地域のITベンダーとパートナー・ネットワークを構築していく方針。

【会見メモ】シンクライアントは記憶装置を装備しないので、情報セキュリティが確保され、外部からのウイルス混入も防止できるのがメリット。USBメモリーやポータブルHDDは使えなくなるので社内エンドユーザーにとっては、パソコンより使い勝手が悪くなる。企業全体のセキュリティと内部統制を優先するか、業務部門の生産性を取るかという課題は、1960年代から続く集中処理か分散処理かの議論の延長といっていい。
 一方でタブレットPCスマートフォンなど、従業員が外出先で利用できるIT機器が普及し、クラウド上に置かれた仮想記憶装置を複数のメンバーが共有できる環境が出現している。情報セキュリティの課題は、むしろここにあるのではなかろうか。シンクラやX端末で外部USB装置を使えるようにするのは、どうも日本人特有の釤玉虫色”の解決策に見えるのだが、とはいえ確実に需要はあるのだろう。