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オープンソースカフェに行ってみた 一般社団法人オープンビジネスソフトウェア協会会長河村奨氏インタビュー

 当日(3月7日)、司会役を務めた橋本明彦氏によると、「OSSAJ(日本オープンソース・ソフトウェア協会)は年に3回か4回、ミニセミナーを開いているんですね」という。いつもは東京・曙橋の市ヶ谷健康保険会館会議室を使っているのだが、今回はその現場に出向いてレクチャーを受けるという趣向。これは面白そうだ、というので東京・下北沢まで行ってみた。


橋本 ここにきて流行っているコワーキング・スペース、これが意外とOSSと縁があるみたいなんですね。それで一度、取り上げてみようと思っていたら、オープンビジネスソフトウェア協会の河村さんが下北沢にコワーキング・スペース「オープンソース・カフェ」を開いておられるんで、それならいっそのこと「オープンソース・カフェ」に行って、河村さんのお話をうかがおうじゃないか、ということになりました。河村さんについてはお配りした資料にあるように、オープンビジネスソフトウェア協会の会長でありSugerForum.jpの主宰で、経済産業省の「アイデアボックス」というWebサイトをSugerCRMをベースに開発されたりしています。で、本当はここ(オープンソース・カフェ)を利用するには、飲み物込みで1人1,000円だったかな? が必要なんですけど、今日はOSSAJが全額を負担します(「おお〜ッ」の声)。というのは、皆さん、これっきりっていうことはないでしょうし、あとで河村さんからお話があると思いますけれど、めでたく部活のメンバーになるかもしれないんで(笑)。ということで、それじゃ河村さん、お願いします(拍手)。

コワーキングがフィットした

河村 え、っと。チャッチャと話を始めたほうがいいのかもしれませんが、皆さん、喉も渇きますしお腹も空くと思うんで、飲み物とサンドイッチ、言っていただければ。ピザもありますんで……。
 ※ガヤガヤ、カチャカチャの音。
河村 皆さん、あれこれやりながら聞いていただければいいんですが、こうしてコーヒーを淹れたりしてると、ご存知ない方は、私を「カフェのマスター」だと信じて疑わないみたいなんですね。でも本業はプログラマーです(笑)。あと、デザイナーでもあります。いまネットで配信する準備をしているんですが、なかなかサーバーのレスポンスがこなくて……。
――どこのサービスを使っているんですか?
河村 ライブストリームですね。これって有料なんですけど、ニュース番組が使っていたりして、画質・音質が両方ともいいんですね。月4,000円か5,000円になるんですけど、品質がいいんで使ってます。ここから先は放送されますんで、まずいことは口にしないようにしてください(笑)。それと私が一方的に話すんじゃなくて、途中で質問があったらその都度はさんでいただいて、チャチャも入れていただけると盛り上がると思います(笑)。
 じゃあ、そろそろ始めますと、今日のタイトルにある「今はやりの」と言われると、ちょっと恥ずかしいんですが……、「コワーキングとオープンソース」ということでお話しようと考えています。「オープンソース」っていう言葉は皆さんよくご存知でしょうけど、「コワーキング」という言葉、これまでに聞いたことがある方、どれくらいいらっしゃいますか? ……、だいたい7割ぐらい、ですかね。
 で、先ほどご紹介いただいたように、私もオープンソースには何かと関わることが多くて、その中でコワーキングに出会って、ここにオープンソース・カフェを開くに至ったわけです。その過程をお話しすることになるんですが、私は現在、下北沢オープンソース・カフェのマスターをしています。それと最近ですと、「リブライズ」という図書を共有しましょう、という運動をやっています。この隣の部屋が図書館なんですけど、オープンソース系の本ばっかり揃えてるんですが、一般のオフィスの書棚だとか個人の蔵書だとか、そういうのをネットで共有しましょう、というわけです。
 3つ目は「コワーキング協同組合」ですが、これはあとで詳しくお話します。4つ目がオープンビジネスソフトウェア協会です。もともとはSugerCRMからスタートして、経済産業省のアイデアボックスのサイトを作ったりしています。私個人としてはプログラマーであり、デザイナーであり、学校で授業を持っていますので教師でもあるという具合に、いろんなことをやっていますけれど、どこかの会社に所属していません。そういう人間にとって、コワーキングがフィットした、ということです。

端緒はラーニング・コモンズ

河村 コワーキングっていうのは、この手の運動はだいたい米国から始まっているんですが、ざっくりここ10年ぐらいの流れをさかのぼると、2000年代のはじめ、大学で「ラーニングコモンズ」っていうのが流行ったことがありました。これが端緒になって、大学の図書館って、最近は1階がフリースペースになっていることが多いですよね。そこでは喋ってもいいし、カフェがあってもいいし、もちろん勉強の拠点にしてもいい。そうすると、そこが学生たちの自発的なコミュニティ空間になるんですね。「ラーニングコモンズ」っていうのは、そのハシリの考え方でした。
それがいきなりコワーキングにつながるわけじゃないんですが、その流れの中で、そういう自由な空間を共有しようという人が、たぶん大勢いたんですね。2006年ごろ、もちろん米国でですが、アパートの一室を仕事場にしようというという動きがありました。職業が違う人たち、もちろん同じでも構わないんですが、知り合いのアパートに集まってそれぞれが仕事をしているうちに、新しい仕事を生み出すというようなことが起きてきました。そのうち、2週間に1度とか、何かをやることを目的に定期的に集まるのを「ジェリー(Jelly)」と呼んだことがありました。みんなで集まってオープンソース・プロダクトの日本語化をやる、とかですね。
――ジェリーを日本で最初にやったのは河村さん?
河村 え〜とね、日本で最初に「ジェリー」という単語を使ったのは、下北沢から小田急線でちょっと先の経堂というところにあるパックス・コワーキング(http://pax.coworking.jp/)です。そこが月に一回集まって「ジェリー」を開催していました。2010年だったかな。私もそこに参加したことがあって……。
――それって、ギークハウスとよく似てるじゃないですか。コワーキング・スペースとどう違うのか同じなのか、違いがよく分からないんですが。
河村 あ、ギークハウス。たしかにコンセプトはよく似ていますね。
――違いはあるんですか。
河村 どうなんでしょうかねぇ。あまり違わないんじゃないでしょうか。コワーキング・スペースっていうのも誰かの自宅だったりマンションの一室だったり色々な形があるんで。シェアオフィスっていうのもありますし……。境い目はあいまいですが、生活や仕事の空間をシェアしているだけだと会話がないじゃないですか。たとえばスターバックスとか……、スタバは店員がよく話しかけてくるけど(笑)、そう、ドトールドトールに入っていって、いきなり他のお客さんに話しかけたら“ちょっと変”な人ですよね(笑)。

東日本大震災が転機に

河村 でも、カフェっていうのは、もともとはオープンなスペースで、そこにいろんな人が集まってきて、お喋るする場所だと思うんですよ。でも日本だと、カフェっていうとちょっと構えて、静かにしてなきゃいけないような、他の人と喋っちゃいけないような空間になっていて、シェア・オフィスっていうのはそういうイメージが強いんですね。
――日本人って、仕事をするときはお喋りするもんじゃやない、っていう文化じゃないですか。黙々と仕事をするのがいいんだ、ていう。お喋りしながら仕事をしてたら、アンタ、おかしいんじゃない? ってなっちゃう(笑)
河村 そういうシェア・オフィスが多いのがもったいないと思いますよね。もうちょっと緩くしたら面白いことが起こる。そのあたりからそういう働き方、仕事の仕方を「コワーキング」と呼ぶようになってきまして、バハートという人が、それなら商業的にやっていけるかもしれない、と考えて「コワーキング・スペース」を作ったんですね。アメリカで爆発的に今では世界に何千という施設ができてますし、日本でも2010年の5月、神戸に誕生した「カフーツ(Cahootz)」が最初で、今では200か所以上ですね。私もカフーツに行ったことがあるんですが、主宰の伊藤さんという方は、とにかくよく喋るんですね。とめどなく喋る(笑)。
 神戸のあと東京、京都、大坂の十三(じゅうそう)とか4つか5つ、コワーキング・スペースができて、下北沢のここはそのあと、2011年の3月。そんな感じで増えていきました。でも最初のころはコンセプトがなかなか理解されなくて、どこでも運営がうまくいっていたわけではなかったんです。
 ここをオープンした2011年の3月、その11日に震災がありました。東日本大震災です。震災が起こって1か月ぐらいの間に、こういう会社の外にある仕事の場への認識が変わりました。

オープンビジネスソフトウェア協会

 設立:2010年1月。Japan Open Software Business Association、略称JOBSA(ジョブサ)。事務局:東京都世田谷区代田6−11−14。SugerCRM日本語ドキュメントプロジェクトを母体とし、OSSのビジネス・行政分野への普及推進とともに、OSS開発者とユーザー向けの勉強会などを行っている。経済産業省の実験的なWebサイト「アイディアボックス」を開発したことでも知られる。