IT記者会Report

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東日本大震災・被災地を行く(3)

郡山まで車中で交わされた会話のいくつかを、記憶を頼りに再現してみる。

佃  今日の取材は3件だから、ちょっとタイト。郡山市で八光建設とFSK、仙台市でSRA東北。FSKはいわき市ソフト会社だけど、今日は郡山市で会合があるんだって。
千葉 でも何とかアポイントが取れてよかったですよね。物見遊山というわけには行きませんから。
佃  現地の企業は予定を立てることができない、という状況みたいですよ。何が起こるか分からないから、着いてから電話をくれ、という会社もあった。まだ大きな余震があるし。
中村 今回は津波の被災地には行かないんですか?
佃  時間次第ですね。仙台かいわきで立ち寄るのが精一杯かな。帰りがけに一般道を通って小名浜を通るという手もある。もう一泊すればね。
中村 それだったら三陸まで足を伸ばせますけどね。
佃  でも、ほかの仕事も入ってるでしょう? 今回は都市部で基礎的な情報を集めるのが目的だから。
中村 新聞やテレビでは都市部の情報がなかなか伝わってきませんよね。
千葉 津波で根こそぎやられちゃった町のほうが絵になるし、取材すればいくらでも記事になるから。
中村 阪神・淡路のときね、神戸のビルが倒れたり火災があったところばっかりニュースになって、仮設住宅が建ち始めたころ、ちょっと離れた豊岡で最後の遺体が発見されていたんですよ。そういうエアポケットみたいなところが出てしまう。
佃  山間部はどうなんですかね?
千葉 以前ね、『月刊LASDEC』(地方自治情報センター発刊の自治体IT職員向け月刊誌)の取材で棚倉町に行ったことがあるんですよ。白河市から太平洋側に向かって行ったところ。矢祭町の近く。そこに電話して、取材を申し込んだんですよ。そうしたら、情報システムには全く被害がなかったんですって。震災当日から電気がこなかったんで、それは仕方がないけど、問題なく動いていますよ、と言ってましたね。
佃  また聞きだけど、岩手県の遠野町、座敷わらしとか河童の伝説がある町ね。太平洋側の市町村を支援する拠点的な役割を果たしたそうですよ。自治体の間でそういう協定を結んでいたんだそうです。
中村 データセンターはどうだったんですか? バックアップセンターとして機能したのかな。
佃  ネットで調べただけなんだけど、郡山のセンターは無事だったみたい。1社だけ、ホームページに「復旧に全力を尽くしています」というコメントがあったけれど、システムそのものに問題はなかったようですね。
中村 やっぱり津波の被害ですよね。地震だけなら、今のコンピュータやネットワークは簡単にはダウンしませんもん。電気が回復すればちゃんと再稼動するっていうことじゃないですか?
千葉 いや、クラッシュしてデータが破壊されたことはあるかもしれない。
佃  それでも都市部や山間部はヘドロに埋まったり海水に浸ったわけじゃないから。
中村 そうなると、津波に襲われた自治体はシステムの復旧がたいへんですよね。支援金とか保障金を渡すとき、個人を特定できないことになるんでしょうか。
佃  生活保護とか介護保険とかもね。データがないことには何もできない。根こそぎ海に持っていかれたから、それ以前の問題でしょう。

 車内での会話の続き。
中村 わたしはね、阪神・淡路のとき、被災地に入ったのは3か月ぐらい後だったんですよ。それまで家があったところが更地になっていて、な〜んにもなくなっていて、「えっ?」っていう印象だった。だから今回はどうしても行きたかったんです。現場を見るだけでもいい、って。
千葉 被災直後はとにかく水だ、食べ物だ、ということだったでしょう。だけど、あれからもう45日。それでやっと仮設住宅の話が動き始めたっていうのは、ちょっと遅すぎますね。
中村 阪神・淡路のときは震災から2週間ぐらいで仮設住宅が建ち始めたんじゃなかったかな?
千葉 今回は都市部から離れているし、高台の平坦地が少ない。建設重機も不足している。それに今回は原発事故という問題がある。長期化は避けられない。
佃  柏崎の地震のとき、重機がなかったんで救助が遅れた。あのときも原発が火事を起こしたよね。
中村 原発の中で働いている人たちもいるんですよね。建設関係者も多いんでしょう?
佃  そのあたりの状況は八光建設さんや明日行く福島建設業協会で分かるでしょう。
中村 地域のIT企業はどうしてるんでしょう。
千葉 自分たちも被災していますからね。停電だったらサーバーもパソコンも動かなかったわけでしょう? 仕事にならなかったでしょう。
佃  まずは3月末納期の対価が支払われるかどうか。大河原クンは3月56日という逃げ道もある、って言ってたけど。次に雇用の維持だよね。給料を払っても仕事がなかったら、資金がすぐに行き詰る。仕事があっても支払いが3か月後だ、半年後だというんじゃ、経営が続かない。東北のITが持たない。
千葉 建設業は復旧・復興の公共事業があるでしょうけど、ソフト会社はどうですかね。
中村 そのあたりも聞いてみましょう。
千葉 取材に対応してくれた会社はまだマシなところじゃないんですか? 3次請け、4次請けのソフト会社がやっていけるか、ですよね。
佃  仙台のソフト会社に取材を申し込んだんだけど、ユーザー対応でそれどころじゃない、という返事でした。その会社はパッケージ製品が主力だから。SRA東北も一度は断られたんだけど、最高顧問の岸田さんから電話を入れてもらったらOKになった。
千葉 そりゃ最高顧問だもの。
佃  FSKも冲中さんの紹介ですよ。NSDの会長の。そういうルートがないとフリーランスは取材が難しいかもね。
千葉 実はREJA(不動産ジャーナリスト会議)でも視察団を出そう、という話があったんですよ。でも足代や宿代を出してくれるスポンサーがいないと、結局、「難しいね」ということになってしまう。
佃  今回は記者会で出すことにしました。事務所代がこれまでの半分になったから、それを皆さんの取材費に充てることにしたんですよ。その代わり、記者会Reportに記事を書いてもらう。千葉さん、中村さんも原稿料はほかの媒体からもらってください(笑)。

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