IT記者会Report

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ITコーディネーターは 基盤整備を終え普及期へ

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 9月15日午後4時から、東京・虎ノ門の記者会オフィスで特定非営利活動法人NPO)ITコーディネーター協会の下田邦典専務理事=写真 =を囲む勉強会が開かれた(コーディネーターはコンピュータ・エージ社の廣瀬正美氏)。制度発足から5 年目を迎え、「これからが普及期」という。

 ITコーディネーターは中堅・中小 企業のIT活用促進を目的に、企業 経営者の相談に乗るだけでなく、I T活用の実務を引き受ける。大手企業はIT担当の専門部門を持ち、資金的な余裕もある。しかし日本の産業は「中堅・中小企業が支えている」と言われる。

「経営環境や市場が激しく変化している。また情報化の技術も日々変化しているとき、多くの経営者が戸惑っているのではないか」

 情報システムやインターネットの活用を云々する前段階として、経営戦略の策定や組織の見直し、業務手続きの改善といった「取引コスト削減策」が要求される。情報サービス会社は、「こういうシステムを作ってほしい」と言われれば受託するが、経営戦略の策定まで手助けすることは滅多にない。

 「その隙間を埋めるのがITコーディネーターです。情報システムの専門家もいれば公認会計士中小企業診断士、税理士もいます。それぞれが専門分野の知識やノウハウを活かし、ITの活用方策を提案したり、情報システムを構築する際の窓口になったりする」

 現在、全国にいるITコーディネーターは約6,200人。130の地方組織が商工会議所などと連携して普及啓蒙活動に取組み、中小企業基盤整備機構が実施している「IT推進アドバイザー派遣事業」制度で助成 措置を講じている。

「地域ごとにITコーディネーターがコミュニティを作っているケースもあります。中央官庁直轄の社団法人や財団法人でなく、NPOによる運営ということもあって、自由度が高い。どちらかというと、草の根的な展開」

 という。

  《気づき》の運動を展開

 草の根的な活動がベースであるため、現在の状況や今後の方向性が見え難い。協会では基本モデルとして、

 ①経営戦略の策定→② 戦略情報化の企画立案→③情報化 資源の調達→④システム開発→⑤ 運用・デリバリー

 という5 つのフェ ズを設定しているが、投資対効果の評価や情報活用人材の育成、さらには市場調査まで協力しているケースもある。

「21 世紀のビジネスはIT抜きでは生き残れない」(松島克守・東京大学教授)のは事実だが、企業経営者の中には「これまで通りでいい」と考えている向きも少なくない。あるいは「ITの活用が必要と分かっていても、きっかけがない」ということもある。

「私たちは《気づき》と呼んでいる。 ITなんて必要ないと考えている経営者に必要性を気づかせる。きっかけがないというのは逃げ口上で、どうすれば 経営が上向くかを理解すれば、ITの活用が選択肢の一つになってくる」

 行政機関でも成功事例そこで、

 「今後は様々な分野での成功事例を紹介し、ノンIT系メディア(特定産業や地方のメディア)を通じてITコーディネーター制度の周知を図る」

 という。ITコーディネーター資格者が6,000 人を超え、100 以上の成功事例が出たことで、「基盤整備は終わった」という認識に立 っている。

 ――ITコーディネーターを活用して成功した事例は。

 という記者の質問に、下田専務理事の口から「長野県庁、福山市湯沢町温泉旅館商業協同組合……」 など、行政機関や共同事業体の名 が飛び出した。むろん中小企業は山ほどある。

 「電子自治体システムで悩んでいる町村がITコーディネーターを活用してくれると、一気に普及するのですが」という提言は、なるほどもっともではある。