IT記者会Report

IT/ICTのこと、アレヤコレヤ

派生開発カンファレンス2018(横浜開港記念会館)に行ってきた

f:id:itkisyakai:20180520145455j:plain

派生開発については文末のURLから参照してください。

いつ「エンタープライズ」がテーマになるか

5月18日(金)、横浜開港記念会館(横浜市中区本町)で、派生開発カンファレンス2018(主催:派生開発推進協議会)が開かれた。2010年6月の初開催から数えて今回が9回目となる。募集定員は250人ということだったが、一昨年(昨年は大阪国際交流センター)と比べやや空席が目に付いたので、ざっくり200人といったところか。

このカンファレンスは、派生開発というものについて何も知らず・知らされず、ソフトウェア工学の関係者(田中一夫氏:故人)に誘われて出向いたのがきっかけだった。というより、2010年は6月9〜11日に同じ横浜開港記念会館でソフトウェア・シンポジウム2010(SS)が開かれ、その1週間後に派生開発カンファレンスと、筆者においてソフトウェア工学的手法との関係が急速に密になった時期だった。

組み込み系(エンベデッド系)ソフトウェアの開発手法という位置づけだった(現在もそのように認識している人が少なくあるまい)が、筆者はかねてから、エンタープライズ系(ないし業務処理系)アプリケーションの保守開発にも適用すべきだと考えていた。それでいつ「エンタープライズ」「ビジネス・アプリケーション」がテーマにあがるか、毎回、様子をうかがっているーーというのが筆者の立ち位置だ。

カンファレンスのたび、受付のあたりで必ず全体の動きを見渡している清水吉男氏を見つけては、「エンベデッドからビジネス・アプリケーションまで一貫するシステム開発・運用・保守の手法」としてXDDPがもっと広く認知されていい、という話をした。清水氏がクロージングの挨拶ではっきり「システム工学」を口にしたのは、2015年のカンファレンスだったと理解している。

※清水吉男氏:派生開発手法「XDDP(eXtreme Derivative Development Process)」の提唱者・実践者、派生開発推進協議会代表、2017年11月22日逝去。

【関連記事】

www.itkisyakai.comwww.itkisyakai.com 

働き方改革OSSERPアジャイルと多彩

f:id:itkisyakai:20180520145503p:plain

上のタイムテーブルに見るように、今回の論文発表では「働き方改革」「オープンソースOpen Source SoftwareOSS)」「ERP(Enterprise Resource Management)」「「スクラム」(アジャイル)など、これまでと一味違うタイトルが並んでいる。従来は「XDDPをどのように使いこなすか」「USDM(Universal Specification Describing Manner)の効果的な使い方」など、実践をもとにしたノウハウが語られる事が多かった。今回も実践的アプローチという点では同じだが、

 XDDPによって時間的余裕を生み出す(私が始めた”働き方改革”:デンソー:最優秀プレゼンテーション賞)

 オープンソースで提供されているERPパッケージのカスタマイズに援用する(ハマゴムエイコム)

 経験値や製品知識があまりないエンジニアが要求分析・仕様・概要設計のサイクルを短縮して繰り返すことで効率よく正確なソフトウェアを開発する(スクラムXの提案:T6研究会:プログラム委員長賞)

ーーなど、エンジニアの視点が大きく広がった。

なかでもスクラムXの取り組みは、派生開発の手法ないしXDDPが、エンジニアが自ら「何をやったらいいか」を理解し、チームで共有するのに役立つことが示された。エンジニアを育成し、取り組むプロジェクトのミッションを明確にする、という副次効果があるということだ。来年のカンファレンスでも、同様の実践論文が提示されることが期待される。

f:id:itkisyakai:20180518140952j:plain

f:id:itkisyakai:20180518144835j:plain

清水氏を偲ぶ追悼パネルに熱い思い

f:id:itkisyakai:20180520145740j:plain

今回のカンファレンスは、清水吉男氏亡き後の派生開発推進協議会、ひいては派生開発手法推進のあり方が密やかななテーマだった。昨年11月22日に清水氏が逝去してすでに半年、協議会代表は空席のままだ。後任は副代表の渡辺博之氏(株式会社エクスモーション代表)というのが順当なところだが、最大にして唯一のエバンジェリスト(清水氏)の穴を埋めるには、派生開発ないしXDDPの普及に前向きなエンジニアが思いを新たに連携して「運動」を「渦動」に高めて行く必要があるだろう。

それを確認する意味で、エンディングに用意された「基調対談:清水代表を偲ぶ」は興味深かった。冒頭、梶本和博氏(エクスモーション)の「清水さんとの歩み」とともに、清水氏が病床で構想していた「ペアXDDP」という考え方が紹介され、渡辺博之氏、芝本秀徳氏(プロセスデザインエージェント)、古畑慶次氏(デンソー技研センター)が、文字にしきれない清水氏の熱い思いをそれぞれの言葉で語った。

基調対談の詳細は本稿では扱わないが、会場にいた全員が改めて清水氏の冥福を祈るとともに、文字通り「派生開発の推進」を決意したものと推察する。

【参考】派生開発もしくはXDDPについて ➡️  XDDPとは