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「明るい癒着」と「新しい公」を提唱する自治体コンシェルジュ協議会

 「自治体コンシェルジュ協議会」発足の記者会見が行われたのは7月4日午後1時45分から、会場は東京・代々木のジャパンシステム(代表取締役社長:井上修氏、JASDAQ上場)本社。「プレスリリース」には、《地域の課題を「何でも」解決する全国初「自治体コンシェルジュ協議会」を発足します!》、副題は《「民」の力を集結し「学」と連携を図ることで、「公」の「何でも御用聞き」となり「最高のおもてなし」で課題解決に取り組む「明るい癒着」プロジェクトがスタート》とある。


「新しい公」という興味を惹くテーマだった割に、あまり質問は出なかった


まずはプレスリリースから
 ■ なぜ今、「自治体コンシェルジュ協議会」の設立なのか
 自治体では、各地域がそれぞれの地域の特徴を活かした「地方創生」の取組みをおこなう一方、 人口構造の変化に伴う社会保障関連経費の増加や、公共施設の老朽化問題等への対応に直面し、「持続可能な自治体」への抜本的な行財政改革の取組みが求められています。しかし行政には、そのための「知恵やノウハウ」を持ち合わせていないケースも多く、今後は幅広い分野での専門的知見へのニーズが高まることが予測されます。
 また民間事業者の立場では、「公共」に資するための多様な「知恵やノウハウ」や「独自技術」を 持ち合わせているにも関わらず、行政側が「企業選択の透明性や説明責任」を強く求められるために、スムーズに公民連携・協働が進められず、民間事業者にとっても行政にとっても相互に連携を図り、課題解決をおこなうことへの「参入の壁」がある状況です。
 このような背景を踏まえて、公民連携を推進していくために、企業間の垣根を超えて民の活力 を集結するとともに、大学等の研究機関が持つ学術研究の成果や、有識者等の専門的知識を活用し、各政策分野での連携を図ることで、行政の課題解決力を高め、民間事業者にとっても「社会性と事業性」が双方に両立するような社会課題解決の取り組みを可能にするために、自治体や地域と共に解決を図ることができる「新しい公」の実現を目指し、「自治体コンシェルジュ協議会」を発足します。
 ■自治体コンシェルジュ協議会について
 自治体コンシェルジュ協議会では、昨年度、トライアルケースとして、山中光茂・前松阪市長、ジャパンシステム株式会社が「笠間市淑徳大学共同研究「学びと就労が連動する仕組みづくり」(代表者:淑徳大学コミュニティ政策学部准教授矢尾板俊平)に参画し、共同研究を実施いたしました。
 この協議会の運営には、各分野の有識者や大学等研究機関をはじめ、前松阪市長の山中光 茂氏(ジャパンシステム株式会社顧問)などの首長及び自治体職務経験者が参画し、取り組みを進めていきます。

「未定」づくめじゃ記事にならない
 会見はジャパンシステム担当者の進行で、
 13:50〜14:00 趣旨説明 山中光茂氏(協議会代表、前松坂市市長)
 14:00〜14:10 事例発表 矢尾板俊平氏(協議会代表、淑徳大学地 域連携センター長)
 14:10〜14:30 加入団体・企業紹介
  (一社)地方創生戦略機構
  (株)エスネットワークス
  (株)NTT東日本 南関東・千葉事業部コラボレーション推進部
  (株)JTBコーポレートセールス 霞が関第四事業部営業第三課
  (株)みんなの健康
  (公財)みんなの夢をかなえる会
  ディップ(株) 地域創生事業開発室
  淑徳大学 地域連携センター
  (株)ジャパンシステム 公共事業本部
 と、ほぼ予定通り。
 最初の趣旨説明は「ニュースリリース」の焼き直し、「事例発表」は発表者本人が「実は事例じゃないんですが……」と前置きする概念論のレベル、続いて参加企業・団体が入れ替わり立ち代わりでそれぞれの取り組みを説明する。いま一つ全体像が見えてこない。
 総じて協議会の主旨は、「自治体(市町村の意味)が担って来た役割の一定部分に、産・学の知見と技術、サービスを活用していくに際して、民間1社では対応できない場合、協業していく。そのベースを作るのが目的」とのこと。ITのジャパンシステムを事務局に、会計コンサルティングエスネットワークス、光ファイバーNTT東日本、体験型旅行を提唱しているJTBコーポレートセールス、医療サービスのみんなの健康、人材紹介と職業マッチングのディップと、異業種企業が集まったのは、「協業」の言葉と矛盾しない。
 CSV(Creative Share Value)、共生・協働・共創、Open Innovationといった「標語」が並んだのは、大学の先生ならではだし、それを「明るい癒着」と表現しているのはお愛嬌だ。ところが質疑応答の段になって、会員募集の規定や会費(徴収するかどうかを含めて)は未定、当面の具体的な活動も市町村との連携方法も未定、何から始めるのかも未定と未定づくめ。
 11月までに詳細を詰める、とのことだが、全体として「生煮え」の感は否めなかった。記者席で「これじゃ記事にならないな」「発足を発表した、というファクトだけですね」と小声の会話が交わされる。「理事会のあと、決まったことだけ発表してくれればよかった」の指摘はもっともだ。

発表者はどっちを向いているのか
 協議会結成のきっかけは、ジャパンシステムの金田氏によると、同社開発のソフト製品「Fast財務会計」のユーザーである自治体から、IT以外の相談を持ちかけられたことだという。JTBコーポレートセールスの千田氏も、これから何をやるにしてもITは不可欠になるので、異業種連携は重要、という。
 しかしニュースリリースでも明らかなように、協議会代表の山中光茂氏はジャパンシステム顧問、同代表の矢尾板俊平氏が所属する淑徳大学の地域連携センターは、2016年度に茨城県笠間市で実施されたCCRC(Continuing Care Retirement Community:高齢退職者を中心にしたスマートコミュニティ)共同研究の主体で、そこにジャパンシステムが参加している。協議会の事務局はジャパンシステムである。記者会見を設定したのもジャパンシステム。
 となると、その他の民間企業はジャパンシステムの取引先、山中氏や矢尾板氏の関係先ではないかと疑ってしまう。政府主導で推進されている地域創生プロジェクトの補助金に着目した新しいビジネスの枠組みを、協議会の公益性でカモフラージュしているのではないか。
 そのように考えると、説明はそこから始めるべきだったという結論が導かれる。中心にいるのはジャパンシステムであって、協議会は異業種連携のための仕掛け、と明言して構わなかった。公共性を訴えれば訴えるほど、実態との乖離が見えてしまう。
 ならば、説明はそこから始めるべきだった。CCRC実現のための「明るい癒着」「新しい公」が少子高齢→人口減→税収減時代のビジネス創出の仕組みと解説すれば、より理解が得られたのではなかったか。補助金の「ワイズスペンディング」(矢尾板氏は「あまり使いたくない言葉」と言っていたが)を提案するのだ、と明快に説明するべきだった。
 さらにダメ出しをすれば、60分という限られた時間にあれもこれも詰め込んだのが第一の失敗。参加者全員の顔を立てることを優先したのだろう。第二は会見運営の練度が低い。例えば記者席にテーブルがない。そのためにメモが取りにくく、ICレコーダーやカメラが置けない。発表資料が配布されず、飲み物が用意されていたのは発表者だけと言った具合だ。会見主催者の目線はどちらに向いていたのか。会見の仕方をアドバイスしてやろうか、と言いたくなる。


「事例紹介」と題した矢尾板氏のレクが「新しい公」の概念説明に終始したのは残念だった