IT記者会Report

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「派遣法改正」が生む、IT産業への歪んだ作用(3)

 ITの公共調達における安全・信頼性、セキュリティ基準+標準価額のセットが、民間におけるIT発注の目安になる。それを実現するには、契約と業法の整備が必要。ITの業務を単純な労務提供に位置付けてはいけない(エンジニアリング的アプローチと研究開発投資、技能検定じゃない公的資格認証などが必須)。 

 他産業に例をとると、大きく分けて建設業と土木業の役割分担、さらに設計、測量、地質調査、構造解析etcといった具合に技術特化が進んで業務が専門化・細分化し、それぞれが責任を持って役割を担うことで安全と安心が担保されます。そのために公共工事の資材発注単価が決まっています。それが民間工事の積算標準として援用されていると聞きます。

 なぜITはそうなっていないのか。

 自動車のソフトウェアが誤動作を起こしたり、金融機関のシステムがハッキングされて預貯金が消えてしまう、というような事態は空想の話でなくなっています。ITがわたしたちの生命・財産に直接かかわるようになりました、

 それに伴って、IT/ソフトウェア求められる品質や安心・安全のレベルは高まる一方。なのに、受注価額は下がり続けています。そこでピーク時対応策(便利な雇用統制弁)と利益確保の手段として、IT派遣技能者(使い勝手がいいプログラム作成機能、システム・オペレーション機能)が活用され、派遣法に基づくIT派遣会社がいないと困るということになっているわけです。

 一方、受注価額の低下と利益率の維持・確保という矛盾が、ITサービス業界に多重受発注構造を生み出しました。多重受発注ということは、事実上、多重派遣=派遣法違反になるので、様々な言い換え、言い逃れ、目くらましが行われてきた実情もあります。派遣法の改正は、業界にとって悩ましいテーマなのでしょう。情報サービス産業協会など業界団体が、真正面から課題解決に取り組んでくれることを期待しています。