IT記者会Report

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日本のソフトウェア 変わらなくっちゃ。守らなくっちゃ。セミナーに行ってみた

 6月22日、東京・日本橋浜町の東実年金会館で開かれた「変わらなくっちゃ。守らなくっちゃ。日本のソフトウェア開発と品質」という長ったらしく、かつ風変わりなタイトルのセミナーに行ってきた。かれこれ2週間前だから速報性を競うメディアから見れば、いまさら記事にもならない「旧聞」かもしれない。ところがドッコイ、かねてから繰り返しているように、当Reportは筆者の勝手気儘編集。筆者にとって面白ければ、読者に有意義な(と筆者が考える)内容であれば、多少の時間差は一向に構わない。


SESSAMEとQuaSTom

 このセミナーを主催を主催したのは組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(SESSAME)と高品質ソフトウェア技術交流会(QuaSTom)の2団体。ともにボランティアで運営されるソフトウェア技術者のコミュニティで、SESSAMEは組込みシステム分野の人材育成を目的として2000年に発足、QuaSTomはソフトウェア全般の品質に焦点を当て1991年から活動している。
 簡単に両団体を紹介しておくと―といって筆者の情報はそれぞれのホームページと会場でもらった資料に記載されている概要だが、ソフトウェア管理者・技術者育成研究会の代表者は飯塚悦功氏(東京大学)、会費は無料で約300人が参加、事務局を一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)内に置いている。英文略称「SESSAME」は〔Society of Embedded Software Skill Acquisition for Managers and Engineers〕の頭文字を取ったもので、なるほど日本語名と英文名が同期しているが、英語版『アラジンと40人の盗賊』に出てくる「開けゴマ!」(Open Sesame)に引っ掛けていることは疑いを得ない。
 一方の高品質ソフトウェア技術交流会は、会長は藤井彩乃氏(インテック)、年会費は8,400円で約80人が参加しているという。英文略称「QuaSTom」はクオリティ(Quority)とソフトウェア(Software)の造語に「友」(Tomo)をくっつけて、「カスタム」の意味を持たせているそうだ。SESSAMEにもQuaSTomにも、発起人たちの遊び心とこだわりが感じられる。

根拠なき自信と根拠なき閉塞感
 で、なぜこの2団体がセミナーを共催したかというと、「異なるコミュニティが交流することで、相互に刺激と気づきを与えることができる」ということと、「グローバル化だの終身雇用制の崩壊だのクラウドだのといった言葉が喧伝され、ソフトウェア技術者ひいてはソフトウェア産業全体に横溢している根拠のない自信と根拠のない閉塞感を打破したい」という考え方が一致したものらしい。筆者をこのセミナーに招いてくれた渡辺登氏(SESSAME理事、前職は情報処理推進機構ソフトウェアエンジニアリングセンター組込み系プロジェクト研究員)によると、「自分たちのいいところは“守らなくちゃ”、ダメなところは“変わらなくっちゃ”」というわけだ。
 当日配布された説明資料「参加者が持ち帰るもの」に記されている〔開発の方法〕〔管理の方法〕〔人に関する取り組み〕の3項目だけが〔いい開発環境を作るネタ〕ではないし、根拠のない自信と根拠のない閉塞感を打破する方策でもない。むろんこのセミナーを企画した人たちはそれを承知のうえで、あえてこのように表記したのに違いない。筆者のうがった見方だが、キモはタイトルに盛り込まれた「守らなくちゃ/変わらなくっちゃ」が一人称であることだ。どこかの誰かがやってくれる他力本願的でなく、参加者=当事者としての「あなた」が守らなくっちゃ/変わらなくっちゃ、という意味を込めているのだろう。
 イントロダクションのあと始まった講演の最初はSESSAME側から高田広章氏(名古屋大学大学院情報科学研究科教授/附属組込みシステム研究センター長/TOPPERSプロジェクト会長)による「日本のものづくりの強みと弱み」、次はQuaSTom側から飯泉紀子氏(日立ハイテクノロジーズ研究開発部主任技師)による「日本企業および日本のコミュニティで育ったソフトウェアエンジニアの目を通して」の2題(各1時間)。16:00からパネルディスカッションが17:45まで、というプログラムだったが、所用があって会場に着いたときすでに高田氏の講演は始まっていた。さらに17:00から開かれる首都圏佐渡学生ボランティア協議会発足会のため東京・代々木に向かわなければならなかった。ということでパネルディスカッションは聞けずじまいだったのが残念だった。