IT記者会Report

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ソフトウェア・シンポジウム2012現地レポート(1)

 6月12日から14日までの3日間、「ソフトウェア・シンポジウム2012」(SS2012)が福井市福井市地域交流プラザ(AOSSA)で開かれた。主催したソフトウェア技術者協会(SEA)によると参加者は140人を突破、前回のSS2011長崎を超えた。「地元の大学やIT企業からの参加が予想以上に多かった」という。参加者は6つのテーマ別分科会(ワーキンググループ:WG)で意見を交換したほか、法政大学教授・玉井哲雄氏による基調講演「文化としてのソフトウェア」 、曹洞宗大本山永平寺布教部部長・西田正法師による招待講演「永平寺の七道伽藍と修行」、東京工業大学教授・牧野淳一郎氏によるクロージングキーノート「『京』からエクサスケールへ」などが行われた。

「転換期のソフトウェア」に照準

 ソフトウェア・シンポジウムは1980年12月、当時のソフトウェア産業振興協会(ソフト協、現在の情報サービス産業協会の前身)が東京・麹町の全国都市センターで開催したのが最初。ソフトウェア技術にかかわる技術者や研究者、教育者、学生などが全国から集まり、発表や議論を通じ、立場の違いを超えてお互いの経験や成果を共有することを目的としている。以後、1981年を除き、1990年の第10回を京都市に移して以来、地方都市で毎年開催されている。ちなみに福井市での開催は初めてとなる。
 32回目に当る今回は「時代の転換期におけるソフトウェア」「これからの世界におけるソフトウェア」がテーマ。このようなイベントでは初日冒頭に基調講演があり、そのあと個別WGに入るのが一般的だが、SS2012では参加者の都合や論文発表のスケジュール等を考慮して12日午後1時半からWGが先行してスタート、基調講演は翌13日午後1時半からという変則的なプログラムとなった。「前回の長崎では、WGと講演、論文発表が並行で行われたため、参加者はどちらかを選択しなければならなかった。今回はWGでじっくり意見交換でき、講演も聴くことがでるようにした」とプログラム委員長の伊藤昌夫氏(ニルソフトウェア)は言う。
 事前公募で設定されたテーマ別分科会(WG)は次の6つだった。人名はリーダー、カッコ内は所属企業・団体。
  WG1「アジャイルテスティング(Agile Testing)」永田敦氏(ソニー
  WG2「オープンソースクラウドの諸問題」中野秀男氏(大阪市立大学)/鈴木裕信氏(鈴木裕信事務所)
  WG3「形式手法の最新技術と産業界での適用」中津川泰正氏(フェリカネットワークス)/酒匂寛氏(デザイナーズデン)/佐原伸氏(SCSK)
  WG4「 ソフトウェア開発の持続可能性(Sustainability)を考える」伊藤昌夫氏(ニルソフトウェア)/岸田孝一氏(SRA)
  WG5「システム開発文書品質」坂本佳史氏(日本 IBM)/山本修一郎氏(名古屋大学)/清水吉男氏(システムクリエイツ)
    ※3氏ともシステム開発文書品質研究会メンバー。  
  WG6「要求工学」中谷多哉子氏(筑波大学)/中来田秀樹氏(ネクスファウンデーション
 SS2010(横浜市)、SS2011(長崎市)から継続して、要求工学やドキュメント品質、テストプロセスなど、ITの安全性・信頼性およびソフトウェア開発の生産性につながるテーマが大半を占めた。なかでもテストプロセスへの認識が高まっているようだった。

これでもかの手作り感〜企画準備会に参加して〜

 なるほど、これがソフトウェア・シンポジウム(SS)ひいてはソフトウェア技術者協会(SEA)の面白さであり良さなのか――。
 何もかもが参加者の合議を経て、「これでもか!」の手作り感満載で進められていく。 
 SS2012本番(6月12~14日)に先立つ4月6日、JR福井駅前にある福井市地域交流センター(AOSSA)6階の会議室でSS2012プログラム委員会(PC)が開かれた。大学の教授や研究員、大企業の管理職、企業経営者……が陸続と集まってくる。地元福井市や近県はもちろん、東京、神奈川、埼玉といった首都圏から、名古屋、大阪、福岡から。実行委員長の中野秀夫氏(大阪市立大学)は毎月開かれる幹事会、SS2012実行委員会に大阪から必ず上京し、荒木啓一氏は博多山笠の準備をぬって福岡から参加するという具合だ。いい歳をした、社会的にそれなりの地位にあるオッチャンたちが、しかも自費で、である(オッチャンという意味では筆者も同じだが)。
 経緯はともあれ――SEAとの接触はSEAが発足した1985年から付かず離れず25年を超えるにしても――、気がついたとき筆者は【アドバイザ】の注釈付きでSS2012実行委員になっていた。ソフトウェア工学の知見もない、コンピュータ・プログラムは1行も書けない。IT業界を長く見てきた業界スズメであるに過ぎない。こういうヤツを一人入れておくと〈掻き回し役兼記録係〉としていいかもしれない、との深謀遠慮が、誰からともなく醸し出されたのに違いない。
 もとより面白がり屋である。何をすればいいのか、実行委員会の機能が何なのか分からないまま、会合に顔を出しては何か発言し、全くの下戸ながら飲み会にお付き合いする。それが当面の“役割”と心得ることにした。